13.やっと見つけた
市場から離れて、しばらく森を歩くと湖を見つけた。
「今夜はこの辺りで野宿かな」
シュトリさまは辺りの様子を確認して、火を起こす準備を始めた。道具も手に入れていたようで、その手際の良さに感心した。
焚き火のゆらぎと薪が爆ぜる音に、だんだんとまぶたが重くなってきた。
「大人になったのに、すごく眠いのですー」
「昨日はあまり眠れなかったみたいだからね。頭を僕の胸に預けるといい」
「はい……」
シュトリさまの体温に包まれて、欠伸が出るのを誤魔化せなかった。
「早く二人で住む家を見つけたいね。ふかふかのベッドを用意しようね」
外だと害虫や野生の動物も心配だ。
ゆっくり眠ることもできない。
「悪魔でもお家に住めるのですか?」
「そこを気にするんだね」
くすりと笑う気配がした。
「僕がちゃんと整えてあげる。ツムギは何も心配しなくていいからね」
どうしてそこまでしてくれるんだろう。
いつか教えてくれますか?
「……シュトリさま……」
「おやすみ、ツムギ」
シュトリさまの気持ちをもっと知りたい。
守られているだけでは、大人になった意味がないと思った。
* * *
朝日が眩しい。きっと、もうお昼になっている。
「眠いのですー」
身体が悪魔になってから、なかなか起きられなくなった。
それはシュトリさまも同じなのか、まだ目を閉じたままだ。
周囲の危険から守るように、シュトリさまは黒い羽根で身体を覆ってしまう。目が覚めるとその腕の中にいて、起こすのも申し訳なくなる。
目の前にシュトリさまの唇があるけれど、やっぱり触れ合うのは……想像しただけで、むず痒くなった。
そうして、じっと息を殺していた時のことだ。
「……!」
突然、私の身体が跳ねた。
体の奥からゾワゾワとしたものが溢れてくる。
こんなの知らない。
「……誰か、近づいて来てるね」
シュトリさまが眉を寄せた。
身体を寄せて、私は呟いた。
「怖いです」
眩しかったはずの空が、灰色の雲に覆われた。
空気が震え、鳥たちが逃げるように飛び立っていく。
「やっと見つけた」
知らない声に顔を上げると、シュトリさまの翼の間から黒いものが見えた。
大きな羽根だとすぐに気付いた。鳥のような天使の羽根と違い、コウモリみたいだと思った。
「新しく堕天した奴が二人いるって聞いたのに、なんでこんなところにいるんだァ?」
地を這うような低い声だった。
相手は少し喋っただけなのに、私は本能的に『この悪魔には敵わない』と思った。
「シュトリさま……」
怖い。殺されるかも。
理由は分からないけれど、相手から感じるピリピリとした波動は嫌だと思った。




