12.神のご加護がありますように
天使の私は、発展した国でお役目を任されることが多かった。けれど、今いるのは道が舗装されておらず、電気も少ない場所だった。
「良かったね、市場があるようだ。こんな辺境でも手に入りそうだよ」
「意外と人が多いのです」
「迷子にならないように、手をつなごうね」
「もう子どもじゃないのですー!」
そう言いつつも、賑わいを見ているとシュトリさまの手を掴んでいた。
大きいと思っていた手は、今でもまだ大きかった。
「まずは顔を隠せるものを買おうか。人間に擬態しても、僕らの容姿は少々目立ちすぎるから」
「シュトリさまは黒くなっても美しいのです」
「ふふ。悪魔に対して無邪気な子だね」
買い物をするにはお金が必要だ。
シュトリさまは「まずはあそこかな」と言って、身につけていた指輪を店主に渡した。
「この土地の者じゃない。お金がないんだ。これを換金できるかい?」
「できるよ。これはまた……高価なものだね」
店主のおじさんの目が泳いだ。
少し戸惑っている?
「うちにある紙幣じゃ、足りないくらいかもしれない」
「いいよ、あるだけで。困っているんだ」
「じゃあ、妻がこの先で服を売っているから……そこで良ければ好きなのを何枚か持っていくといい」
シュトリさまが私に耳打ちをした。
「良かったね。服も手に入ったよ」
すごい! シュトリさまは簡単に手に入れてしまった。
「おじさん、ありがとうなのです! 何か困っていることはありませんか? 親切にしてもらったらお礼をするのです!」
「いや……。それくらいしないと対価にならないだけなんだよ」
「いいえ、誠実なお人柄で素敵なのです!」
前のめりになっておじさんに近づいていると、シュトリさまの手が私の口を塞いだ。
「ツムギ。長居はしない約束でしょう? 忘れたの?」
「……」
「もう君は天使じゃないんだよ?」
……そうでした。
私が関わることで、おじさんに迷惑をかけてしまうかもしれない。
「おじさん、ありがとうございます。……あなたに神のご加護がありますように」
それくらいは願っても許されるのかな。
神様に怒られるのかな。




