4-8 一時
十月もあと少しで終わりを迎える今日。
あと少しで中間テストを迎える学園の空気は、引き締まっており、皆が上位に入ろうと自習をする生徒が普段より多く見られた。
故に、図書室のスペースは空いておらず、シレーヌたちカルテットは教室で勉強をするはずであった。
「シレーヌ、紅茶をお願いしてもいいかしら」
「……かしこまりましたアルテミス様」
「あ、オレは珈琲がいいなぁ」
「すまんが俺も珈琲で」
「あたしも紅茶お願いしてもいいバレット?」
生徒会室の一角で、何故勉強会をする羽目となったのか。時は少し前に遡る。
放課後で自習をしようと話したシレーヌたちは、普段通りの席に座り、教科書を広げていた。
各々が好きな科目に取り組み、分からないところがあれば聞き合うという普段通りの勉強会を行おうと始めて数分。
「みんな、テスト勉強かい?」
ジョリーが一年生の教室に現れたのだ。
そのまま、あれよあれよと誘われたカルテットは、生徒会室で勉強会を行うことになった。
シレーヌは気まずさしかない場所だ。
役員であるアスターとゼロスは生徒会役員だからともかく。シンもジョリーと知り合いなので置いておいて、シレーヌは面識はセドリック以外あれど、完全な部外者だ。
対して仲が良いわけではない先輩がいる空間というのは気が滅入る。
「ケラヴノース先輩と、クロウ先輩は?何にします」
「なんだ、俺たちにも入れてくれるのか」
屈強な図体には少し違和感のある眼鏡をかけたセドリックが、書類から顔を離す。少しだけ考える素振りをしたセドリックは、「珈琲を頼む」と低い声でオーダーした。
「僕は紅茶でお願い。ありがとうね、シレーヌさん」
「ついでだ。気にするな」
シレーヌは生徒会室の扉の向こうに設置されたキッチンへ入る。砂埃ひとつ無い清潔な空間が広がっていた。
しかしコンロと流し台、あとは幅の短い調理台しかない質素な簡易キッチンだ。近くにある棚から茶葉と珈琲豆を適当に選び、いれ始める。
「シレーヌ」
「はい、どうかなさいましたかアルテミス様」
「茶菓子はそこにあるわ。お皿はそこに」
「はい」
棚に手をかけて中を覗いた瞬間、シレーヌは短く悲鳴を上げた。
「どうかしたの?」
「いえ、あまりに高価なものだったので」
宮廷にあるものと同じくらいの高級品が学園の日用品として置かれていることに戦慄したシレーヌに対して、アルテミスはあっけらかんとした様子だ。
「そうね。あの御方の趣味だもの」
あの御方が指す人物は、シレーヌには分からない。それでも初めて見せる空虚な様子に踏み込むべきではないと判断を下す。
「出来たら呼んでちょうだい。ジョリーに運ばせるわ」
「はい」




