3-1 学園生活の始まり
鮮やかな色彩が空の一部を覆う秋へと季節は移ろう。
羊雲が窓の向こう側で風と共にあるのを見上げる。これから雨が降るであろうと、シレーヌは肩を落とした。
「シレーヌ、おはよう」
「おはようアスター」
顔を洗ってきたアスターが洗面所から戻ってくる。
シレーヌは、ルミナス王立学園に通う生徒へとなっていた。
白を基調とした上下一体のワンピース型の制服。青と黄金のラインと刺繍が上品に施されている。
学園指定の紺色のタイと白のソックス。上品に纏まった女子生徒の制服は、神聖さと高貴さを表現されている。
ボレロに関しての着用は自由だが、寒がりのシレーヌは羽織っていた。
「魔鉱石が発見されたのは、南の地方にあるツヴェルクの鉱山。地脈の書き換えにより、魔鉱石が発生したとされているよ」
のんびりとした穏やかな声にシレーヌは眠気を覚える。欠伸を噛み殺して、黒板を注視する。
王立学園といえど、いきなり実践ではなく座学が主である。一学年はまだ基礎を固める段階で、そう内容が難しい訳ではない。
一期のテストはそう問題ないだろう。
「それじゃあ今日はここまで、明日小テストやるから復習ちゃんとしといてな」
担任であり、国史の担当であるタクトが教科書を閉じる。同時に、壁にかけられた授業終了の鐘が、勝手に動き出す。
黒縁メガネを掛けた地味な相貌が猫背となる。授業を終えて気の抜けたであろう担任は、大きく伸びをしていた。
「先生に聞いてくる」
「ああ」
アスターは席を立ち、教壇でリラックスをするタクトのもとへ駆け寄った。
アスターは、知識欲が割と旺盛だ。
オマケに教えられたことはドンドン吸収していく。
疑問点が湧き上がるのは、ある種才能だ。シレーヌは若干羨ましく思う。
シレーヌはノートを閉じ、ホームルームが始まる前に片付けを始めた。
「明日小テストなんてやだね〜。点とれるかなぁ」
おっとりとした口調で、シレーヌの後ろの席に座る男子生徒が声を掛けてくる。振り返れば、発言の割に笑顔の男がいる。
「貴様、それ皮肉に聞こえるぞ」
「え〜、そんなぁ」
ゆったりとした喋り方をする男子生徒の名は、ゼロス・キディアという。綿毛のような海月のような、兎に角掴み所がない男だが、特待生の入学試験で首席となった博学才穎である。
「アスターちゃんったら真面目だね」
「そうだな」
「それでいえば、シンちゃんもだけど」
「よくやる」
アスターの後ろで待機をする男子生徒に視線を移す。
シン・エレフセリア。
氷の貴公子とか、そんな変な渾名を付けられている可哀想な男だ。しかし冷酷とも見える無表情さや抑揚のない冷めた声に納得はする。
「勉強会する?」
「二人次第だろう」
「シレーヌちゃん余裕だねぇ。まぁ、一年生の範囲だったら全然余裕か」
ゼロスの言う通り、クラス全体にそこまで緊迫感はない。寧ろ何処か浮き足立った様子だ。
入学してから約二週間。
九月も下旬を迎え、学園生活にも慣れてきたシレーヌであったが、他の生徒はそうでもない。
どこか浮かれているといえばいいのか、空気が緩んでいた。




