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とあるハイヤー乗務員の運命  作者: 三笠 大和
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2 結婚式

「ねえ起きてよ、新郎が寝坊なんてシャレにならないよぉ、もう8時だよ!」

智花の声で光雄は眠りから覚めた。

新郎?

あ、そうか、今日は智花との結婚式か。えーと、昨日の夜は義男や親しい友達と飲みまくって、それから記憶がなくなってっと。

その時、光雄の右肩と右脚に痺れの様なモノが走った。

光雄は「!」と驚いたが、頭がシャキッとせず、ボーっとしながらも、智花の声に応えてヨロヨロと起き上がった。

「おはよう、旦那さま。」

「なんか照れるな。」

起きがけのキスを交わしつつ、そんな会話を二人は楽しんでいた。

「じゃあ、せっかくだから私は温泉に行ってくるね。どうする?」

「ああ、僕も行くよ。」

付き合い始めて9年、9年?そんなに経ったか?

いや、確かにその9年の記憶はある。色々あった。危機もあった。そして、結婚を決意した事、軽井沢のリゾートホテルで親しい友達と親族だけで挙式する事。

全て記憶があるのだから、間違いないだろう。

しかしなんだろう、ザラザラした感覚が頭をよぎる。あのピキンときた電流は何だったのだろうか?

大浴場までの長い渡り廊下で、光雄は過去にこの様な違和感を感じた記憶を必死になって手繰り寄せようとしていた。

ザラザラした感覚?僕はニュータイプか?ゼータか?ダブルゼータか?いや、余計な事を考えない、考えない。

その時智花が顔を赤らめながら、考えを途切れさせた。

「ねえ、家族風呂があれば良かったのにね…」

「ああ、大切な日だからな。」

9年の日々の中で、智花は光雄の呼び方を「中林さん」「光雄さん」「光雄くん」「ねえ」と変遷していた。

智花は特に気にもしていなかったが、光雄はその変化を楽しんでいたように思えた。

大浴場は朝という事もあり、空いていた。

湯船に浸かりながら、奇妙な感覚が一体何なのかを考えていた。

10年ひと昔というが、智花と付き合い始めたのが昨日の様に感じる。いや、昨日みたいな感覚?なんだ?

時が経つのが早過ぎる。そんなに年は喰っていないつもりだが。

結局のぼせるまで考えまくったが結論は出なかった。


風呂を上がり、教会の隣のリゾート館と呼ばれる建物に行き、光雄は智花としばしの別れとなった。


結婚式は質素ながらも、いわゆるアットホームな雰囲気で参列者さえもほっこりする様な良い式であった。


もう一泊する親族に見送られながら、二人はリゾートホテルを後にした。


「またここに来ようね。」

「そうだね。なんかあっという間だったね。」

大奮発した新幹線のグリーン車で手をつないで眠りについた。


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