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79話 全力以上

 冥界で大量発生した人工妖精を始末する方法。それは、圧倒的な力で暴れて妖精を脅かし、妖精をひとつにまとめること。


 合体してひとつになった妖精を始末することで、妖精退治は達成される。


「勿論、残党も始末するこも忘れないでね」


「分かったよシロガネさん! そうと決まれば……! みんな、行くぞ!」


 カイはやる気全開で大声を上げると、その場から全力で駆け出した。


『!』


 人の魔力を察知したのか、遠くにいた妖精の群れは一斉に動き出した。


『ギャギャギャーッ!』


 口角を釣り上げ、嫌な笑い声を上げながらカイを囲うように移動する。


 対するカイは、全力疾走しながら全身に能力を纏いはじめた。


 身体中から発生した氷は鎧へと形成され、氷の鎧は次第に大きくなっていく。


『ギャギャ……ギャ?』


 目の前で氷を纏い、大きく膨れていくカイを見た妖精達は困惑の色を見せ、次第に速度を落としていく。



 やがてカイは、どの妖精よりも遥かに背の高い、巨大な氷の巨人へと姿を変えた。



「それーっ!」


『ギャーッ!?』


 カイは地面にいる妖精達に向かって全力で足を踏み下ろした。

 

 妖精達は悲鳴を上げながら必死にカイの足元から逃げるも、地面を踏みしめた脚から凄まじい冷気が発生。


 踏まれた妖精は居なかったものの、足元にいた妖精は軒並み凍りついてしまった。


「まだまだいくぞ!」


 氷の巨人と化したカイは何度も地面を踏んづけ、大地を氷で覆い尽くしていく。


 巨大な足が大地を揺らす度に恐ろしい冷気が周囲に放たれ、足元で氷漬けになっていた妖精は呆気なく踏み砕かれていく。


『ギャーッ!? ギャーッ!?』


 氷の巨人による蹂躙に、妖精達は悲鳴を上げながら四方八方へと逃げ惑う。


「逃がさないっ!」


 カイは巨大な片手を上へと振り上げると、全力を込めた拳の一撃を大地へと放った。


『!?』


 重い一撃が大地を揺らし、一帯は極寒の銀景色へと姿を変えた。


 生物が生きていける環境とは程遠い厳しい世界へと変貌し、周辺にいた妖精は全て凍りついてしまった。




 一方。炎を全身に纏ったマモルは、両腕から燃え盛る爆炎を放ちながら魔界の空を飛んでいた。


『ギャーッ!!』


『ギャ……!』


 マモルの放つ炎は周囲の魔力を巻き込んで更に燃え広がり、枯れた大地にのさばる人工妖精を燃やし尽くしていた。


 地上から悲鳴が沸き起こっては消えていき、後には灰すら残らない。


『ギィ……!?』


 巨人が作り上げた極寒の凍土に加え、遥か上空から降り注ぐ燃え盛る爆炎。


 遠くから様子を見ていた妖精達は恐れ慄いている様子だ。




 一方シロガネは、地面から銀の針山を出現させて妖精を始末しつつ、遠くで暴れる2人を眺めていた。


「シロヤマさんもハルカワさんも順調のようね」


 シロガネは次に、少し離れた土地で1人奮闘するオオガシラに目を向ける。


「はあっ!」


 何の能力も持たないオオガシラだが、カイ達に負けず劣らずの活躍ぶりだった。


 魔力を込めた正拳突きによる一撃は凄まじい威力で、技を受けた妖精は腹部に大きな風穴を開けてしまった。


 さらに、腹に風穴を開けた妖精の後方にいた妖精達にも変化が。

 なんと正拳突きの余波により、後方で立っていた妖精達の上半身が跡形もなく吹き飛んだのだ。


 どうやら冥界の魔力により、正拳突きは想定以上に強化されたらしい。


 オオガシラが技を放った後、大地には荒々しく抉れた跡が残った。


「そらあっ!」


 全力で殴り、蹴りつけては目の前の妖精を消し飛ばし、大地に幾つも傷を刻んでいく。



「さて、私も頑張らないと」


 3人の奮闘にシロガネも自身も戦地へと赴く為に、足元から大量の銀を生み出し始めた。


 シロガネの足元に板が生まれ、波打つ大量の銀の上に浮かび上がる。

 大地の上を覆い尽くす銀は水のように揺らめいており、色さえ除けばさながら大海原のようだ。


「ふふふ……」


 シロガネは微笑むと、水のような銀を操作して妖精へと突撃を開始した。


「それっ!」


 シロガネが掛け声を上げると、地面を這っていた銀は大きく持ち上がり、巨大な壁へと変化した。


 銀の壁はとてつもない速度で移動し、妖精の群れへと迫った。


『ギェ!?』


『ヒッ!?』


 銀の壁は妖精の全身に激しくぶつかり、地面に倒れた妖精を満遍なく轢き潰していく。


 悲鳴諸共巻き込まれた妖精は跡形もなく姿を消していく。下手したら妖精の所業より遥かに残酷である。

 

(みんな頑張ってるようね)


 シロガネは遠くで発生している数々の現象を静かに眺める。


 どうやらカイ達の他にも別の能力者が来ているらしい。


 ふと遠くに目をやると、妖精の群れがどういうわけか、別の妖精の群れを襲撃していた。

 別の場所では、妖精が一斉に宙に浮かび上がり、サイクロンのように激しい回転を始めたりと、様々な怪奇現象が発生している。




「みんな頑張ってるんだな……」


 シロガネと同じように遠くの怪奇現象を眺めていた氷の巨人のカイは、しみじみと独り言をこぼす。


「カイ」


 そんな氷の巨人の元に炎を纏ったマモルが飛来する。


「どうしたマモル」


「妖精の様子がおかしい」


「妖精? ……あっ!」


 カイが目の前の妖精に目をやると、マモルの言う通り、妖精達が通常とは異なる動きを見せていた。


「妖精達がまとまりだした!」


 妖精同士で身を寄せ合うと、瞬く間に2体の妖精は合体して大きな妖精へと変化した。


 かと思えば同じ大きさの妖精同士で再び身を寄せ合い、一体化して体を大きくしていく。



 妖精は一箇所に集まっていき、どんどん膨れ上がっていく。やがて……



『ギャアアアアアア!!』



 冥界の中で、ビルより遥かに巨大な妖精が誕生した。


「ここからが本番ってことだな……」


「カイ、気を緩めるなよ」


「うん。マモルも気を付けて」


「分かった」


 カイとマモルは互いに気を引き締め合うと、巨大化した妖精を目掛けて全力で駆け出した。

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