78話 力の源
冥界の荒れた大地を覆い尽くすかのように、銀の針山が無数飛び出した。
大地から生えた銀の針により、大量の人工妖精は軒並み串刺しになった。
無限とも思える大量の針山を出したのは、銀色の長い髪をなびかせる、涼しい顔をした美しい1人の令嬢。
「あれってまさか……シロガネさん!?」
カイとマモルは彼女のことを知っていた。前に、能力使い試験で出会った人物。
銀を操る能力使いのお嬢様、シロガネ・レイカだ。
「シロガネさん、針山でサーフィンしてる……」
今現在シロガネは、地面から生やした針山を操り波のように動かし、その上を銀のボードに乗って滑っていた。
「ふふふ……!」
「な、なんだかよく分からないけど……シロガネさん、すごく楽しそうだ……」
「楽しそう、というより……あれはもはや純粋に楽しんでるな……」
「とんでもない女だ……にしても、冥界の魔力のせいか、普段より遠くがはっきりと見えるな……」
カイとマモル、そしてオオガシラの3人は、遥か遠くで妖精討伐に勤しむシロガネを眺める。
カイ達がそんな光景を眺めていると、シロガネは唐突に進行方向を変え、カイ達のいる方角に進み始めた。
「こっちに来たな」
「まずい! オレ達も針山に呑み込まれる!」
「カイ、大丈夫だ。どうやら向こうはこちらに気付いているようだ。こちらに攻撃してくることはないだろう……多分」
「本当に大丈夫か!?」
慌てるカイをマモルが冷静に宥めるも、不安が残る。
そんなことをしてる間にもシロガネは、カイ達と距離を詰めていく。
しかしシロガネが近付くにつれ、針山は勢いを落としていく。やがてシロガネがカイ達の前に立つ頃には針山は姿を消していた。
「針が止まった……助かった……」
カイが一安心する前で、シロガネは銀色のサーフボードを消して地上に降り立った。
「シロガネさん! 冥界に来てたんだな!」
「シロヤマさん久しぶり。ハルカワさんとは遊園地で会って以来ね。そして貴方は……」
「オオガシラだ」
「はじましてオオガシラさん」
シロガネは3人に丁寧に挨拶を述べていく。
「まさか、シロガネさんがリーシュと行動してたのは……」
「お察しの通りよ、前から彼から事情は聞いてたの。だから、この日の為に技を磨いてきたのよ」
シロガネは手から銀を生み出しながら微笑む。
「そうか……それにしてもさっきの針山攻撃、すごい規模だったな……」
「ありがとう。魔力で溢れ返る冥界なら、大規模な技を長時間保てるのよ。貴方達も魔力を上手く利用して妖精を効率よく潰してね」
「頑張ってみるよ! でも……オレ達、こういった環境で戦うのは初めてで……」
「俺もだ」
「大丈夫。魔力で能力を操れる貴方達なら、きっと上手く扱えるわ」
心配事を呟くカイとマモルに対し、シロガネは微笑みながらアドバイスをする。
「能力使いたる所以は、自らの持つ能力を魔力で増幅させて扱うことにあるの。能力に身を委ねれば、魔力の扱いは自ずとわかる筈よ」
「能力に身を委ねる……?」
「そう。此処で能力を使えば、私の言いたいことが分かると思うわ。試しに使ってみなさい」
「わ、分かった……」
シロガネに促されたカイは、試しに両手に力を込める。
隣にいるマモルも、能力を使う為に体内に意識を集中させる。
「型に囚われないで。限界を超えるような感覚を掴むの」
「型に囚われない…………!」
カイはシロガネの言葉に従い、力に意識を集中させていく。
すると、カイの持つバックラーに新たな変化が現れた。
「!」
バックラーは目に見えて大きくなり、カイの両手は氷に覆われていく。やがてバックラーは大きな手へと変化した。
「すごい……!」
カイは巨大な氷の手を見つめながら目を輝かせる。
「ありがとう! 今のでシロガネさんの言ってることが何となく分かった気がする!」
「本当?」
「ホント! 今までは魔力で能力を扱ってた感じだったけど、能力に意識を向けたら……なんか、何かがすごく広がった感じがする!」
「どうやらシロヤマさんはコツは掴めたようね。ハルカワさんも……どうやら分かったみたいね」
「そうだ、マモルはどうなって……」
カイは隣にいるマモルに目を向け、マモルの姿に思わず言葉を失った。
「……!」
マモルの全身は真っ赤に光り輝いていた。
今までは身体の一部にしか能力を乗せられなかったが、異界の膨大な魔力のお陰で全身を能力でくまなく覆えているようだ。
「マモル……!」
「俺も何となくコツを掴めたらしい……はあっ!」
マモルは遥か遠くに見える人工妖精の群れに向けて片手を構えると、真っ赤に光り輝く閃光を放った。
輝く閃光は人工妖精の群れの中央で爆発。凄まじい爆炎は妖精を全て呑み込み、跡形もなく消し飛ばしてしまった。
「すごい威力だ……! すごいよマモル!」
「これなら人工妖精の殲滅を効率よく行えそうだ」
「フフ……」
目に見えてパワーアップしたカイとマモルに、シロガネは満足したのか嬉しそうな笑みを浮かべる。
「よし! 少しでも早くみんなを助けるために、オレ達もすぐに……!」
「待って、最後にひとつ伝えさせて」
その場から意気揚々と駆け出そうとしたカイとマモルをシロガネが呼び止める。
「冥界の魔力は私達を助けてくれるわ。でも、それは向こうも同じ」
「相手は妖精だもんな……魔力で強くなるのは向こうも同じってことだな?」
「それだけに留まらないわ。人工妖精はね、この魔力を吸収して増え続けているの」
「えっ!?」
「どういうことだ……?」
シロガネの説明にその場にいる全員が驚く。
「人工妖精って、人が増やすから人工妖精なんだろ? 人工妖精のみでは増えない筈だよな?」
「本来はその筈なのだけれど……この冥界に現れた人工妖精はとてもしぶとい個体らしいの。彼らは魔力さえあれば単体で増殖できるそうよ」
「そんな……!」
「こうして話している間にも増え続けているということか……」
「なら此処でくっちゃべっている場合じゃないだろ! カイ、マモル! 急いで奴らを……!」
「最後まで話を聞いて」
急いで戦いに赴かんとするオオガシラをシロガネが冷静に呼び止める。
「彼らを倒す方法、それは……とにかく大きな技を放ち、私達には勝てないと思わせるの。とにかく相手を追い込むの」
「相手を追い込む……?」
「暴れに暴れて、妖精達に勝てないと思わせろ、ということか?」
「その通り」
オオガシラのざっくりとした結論にシロガネは頷く。
「場を見て劣勢だと判断した人工妖精は、周りの妖精と組み合わさって強くなろうとするわ」
「あの人工妖精は合体するのか……やたら大きい妖精がいたのはそういうことか」
マモルはルキと戦った異空間で目撃した巨大な人工妖精を思い出す。
「……つまり、妖精がひとつにまとまったところを諸共潰せば、冥界の人工妖精は消滅する……!」
「そういうこと。とにかく派手に暴れて回って、相手を精神的に追い込むのよ」




