71話 ルキが向かった先
ルキの助けにより、マモルとカイは崩壊した異空間から無事脱出。
外に出た2人をメイドのフィオが拾い上げ、瞬間移動により屋敷の治療室へと移動した。
「カイ! マモル!」
到着するや否や、近くにいたオオガシラが慌ててマモル達の元へと駆け寄ってきた。
「まさかお前達も……!」
「その口ぶりだとお前も襲われたようだな……にしては、傷が見当たらないようだが……」
「んなこと言ってる場合か! 治療してやるからこっち来い!」
オオガシラはフィオから半ば強引にカイとマモルを奪い取る。
「オオガシラ、2人を頼んだ。私はルキを探しに異空間に行ってくる」
2人をオオガシラに託したフィオは、瞬間移動により即座にその場から消え去った。
「カイ! マモル! 今助けるからな!」
「声がでかい」
「無駄口叩くなっ!!」
オオガシラは大声で怒鳴りながらも2人を優しく担ぎ、大急ぎで治療室の奥へと飛び込んだのだった。
「何? ルキがお前達を助けただと?」
「そうだ。アイツは……俺達が逃げる時間を稼いで、異空間に……」
治療室の奥に幾つも並べられたベッドのひとつに寝かされたマモルは、ダイコンのマスコットキャラクターのような何かに治療されながら、これまでの経緯を説明していた。
「にしても、異空間に開いた大穴から妙な人型生物か……前にカイと見たやつと同じか……?」
オオガシラはマモルの隣で静かに眠るカイを見つめる。
「オオガシラ、アレを見たことあるのか?」
「前に遊園地で遭遇した。確かカイは、奴らのことを「人工妖精」と呼んでいたな……」
「人工妖精か……確かに、あの異空間で見た生き物はどれも、似通った見た目をしていたな……」
マモルは遠い目を窓の外に向ける。マモルの側にいるダイコンは、丸い手を器用に動かして器具を操作し、マモルの治療に専念する。
「俺はルキと戦った。オオガシラは誰と戦ったんだ」
「リーシュだ。何とか倒したが、アイツの様子がおかしくてな……フィオを呼んで治療してもらったが、アイツはまだ目が覚めん」
オオガシラは角にあるベッドに目を向ける。ベッドにはリーシュが静かに眠っており、隣にはヴォルフの姿もあった。
「2人とも苦しそうに呻き、ヴォルフに至っては口から血を吐き出していた……」
「ルキと同じ反応だ……」
「やはりルキもか……一体、奴らの身に何が起こっているんだ……」
オオガシラは深いため息をつく。そんな様子を見たマモルは、オオガシラから窓の外へと目を向け口を開く。
「……今は一刻も早く、ルキを助けに向かいたい……」
「焦る気持ちは分かる……だが、今は治療に専念しろ!」
『そうですよ。もう少しで終わりますから、それまでじっとしててください』
「ほら! コイツもそう言っているだろ!」
突如として口を挟んできたダイコンにオオガシラは同意する。
「もう少しで終わるなら、ここで切り上げても……」
「中途半端で行ったら足手まといにしかならん!」
「だが、異空間と現実の時間は……」
「時の流れが違うのは分かっている! だが、半端に手を出すより万全で助けに向かった方がいいだろ! 無駄な足掻きはやめて大人しくしろ!」
「……分かった」
マモルは諦めたように力を抜いてベッドにもたれかかり、ふと隣のダイコンを見つめた。
「これは誰だ?」
「コイツは妖精騎士団に所属している、治療担当の植物妖精らしい」
「そうか……それは先に説明してほしかったな。何の脈絡もなくコレが迫ってきて驚いた……」
「その割には自然に受け入れてただろ」
オオガシラが指摘したところで、自然公園の異空間に向かっていたフィオが人を連れて帰還した。
「姉御、ルキは……」
「悪い、ルキは連れて来れなかった。自然公園にはルキの姿どころか、異空間すら無かった」
フィオは頭を振りながら治療室に入室する。
「どうやら異空間に発生した奴らを外に出さないよう、自然公園に展開していた異空間を閉じたらしい」
「そんな……」
「だが、仲間に言伝は伝えられたぞ」
そう言うとフィオは体を少し傾け、背後にいた人物を治療室に入れた。
「カゲマル……」
「フィオさんから大まかな内容は聞いたよ……まさか、こんなことになるなんて……」
フィオの背後からそっと現れたカゲマルは、何もかも観念したかのように静かに語る。
「でも、皆んなを助けるために残るのはルキらしいかな……」
「俺がもっと魔力を調整して戦っていれば……」
「いや、マモルくんに力が残っていようと、ルキなら異空間に開いた穴を何とかするために残ると思う……かな」
「うぅ……」
ここでマモルの隣のベッドから呻き声が漏れ、深く眠っていたカイが目を覚ました。
「あれ……ここ……あれ!? ルキは!?」
カイは完全に目を覚ましたのか勢いよく上半身を起こして辺りを見回す。
「カイ、大丈夫か」
「オレは平気! でも、ルキに何かされて気を失って……!」
「カイが眠った後、俺は異空間でルキと戦ったんだ」
マモルは異空間で起きた出来事をカイに簡潔に説明した。
「そんな……ルキがオレ達を助けて異空間に……! 早く助けに行かないと!」
「カイは元気そうだな。マモルも怪我が治り、魔力も戻ったようだ」
慌ててベッドから脱出したカイを、フィオが片手で止めながらも関心する。
「こんなこともあろうかと、前々から準備は整えていた。戦える奴とも連絡は取れてる、全員が望むならすぐにでも出発するとしよう」
「しかし……自然公園の異空間が閉じた今、どうやってルキを探し出せば……そもそもルキは異空間から何処に……?」
「冥界だよ」
「は……?」
頭を悩ませるマモルに対し、カゲマルはボソリと一言発する。
「ルキは……あの異空間にできた大穴を通って冥界に行ったと思う」
「そんな危険地帯に1人で飛び込んだのか!?」
「人工妖精を食い止めるだけなら、わざわざ冥界にまで行く必要無かったよな!? 何でわざわざ……!?」
マモルとカイが驚く中、カゲマルは淡々と説明を続ける。
「冥界に向かう道中で全部説明するよ。僕らの身に起こったことや、この星で起こってることを……」




