64話 唐突な横槍
町を歩いていたカイは唐突に異空間に閉じ込められ、一緒に歩いていたオオガシラとは逸れて1人孤立してしまった。
そんなカイの前にやけに不機嫌なチャラい若者ヴォルフが、フェアリーゴーレムの群れを従えて現れた。
「俺と本気の潰し合いしてよ」
ヴォルフは目の前のカイを睨みつけ、怒りの滲んだ低い声で一言言い放った。
(ヴォルフの様子がおかしい……)
相手からただならぬ殺気を感じたカイは、両手に持っていた荷物を地面に置いて即座に身構えた。
「行けっ!!」
ヴォルフの短い号令に、フェアリーゴーレムは一斉に動き出した。
「速っ!?」
カイを目掛けて襲いかかってくるフェアリーゴーレムは普段より竣敏だった。
ゴーレム達はあっという間にカイの元へと到達し、流れるように攻撃を繰り出して来た。
「はあっ!」
しかしカイも負けてられない。カイはゴーレムの力強い拳を避けつつ、相手を目掛けて両手を構え、両手から全力で能力を放った。
カイの両手から凄まじい光線が放たれたかと思うと、光線は目の前に群がるゴーレムの大群を瞬時に凍らせた。
カイの全力に触れたゴーレムは動く気配が微塵もない。どうやら機能そのものも完全に停止したようだ。
「……!」
カイの全力の能力を目の当たりにしたヴォルフは驚き目を見開く。
「さあ来い!」
相手が停止した隙に、カイはバックラーを両手に生み出して構え、後から駆けてきたゴーレムを相手に戦闘を開始した。
基本はゴーレムに囲まれないよう立ち回りつつ、相手の隙を見ては力を込めたバックラーで殴りつけていく。
「それーっ!」
ゴーレムの蹴りをバックラーで防ぎながら背後へと回り込み、無防備になった背中を裏拳で殴りつける。
両手を組んで振り下ろしてきたゴーレムを躱し、下がった頭をすかさず殴りつける。
力を込めたバックラーで殴られたゴーレムは砕け、凍りついて次々と停止していく。
「順調だな……あっ!?」
遠くで停止していたゴーレムが、突如としてカイのいる方角に吹き飛んできた。
どうやらヴォルフが隙を見て蹴り飛ばしてきたらしい。
「っぶな!?」
カイは咄嗟に身を翻してゴーレムを避ける。
「!」
避けたカイの眼前に雷を纏ったヴォルフが現れた。
(いつの間に……!)
彼は雷を込めた全力の蹴りをカイを目掛けて放った。
「させるかっ!」
カイはその場で身を捻り、ヴォルフの脚に能力を込めたバックラーをぶつけた。
お互いの能力がぶつかり合い爆発を起こし、お互いその場から大きく吹き飛んだ。
「いって!?」
ヴォルフは地面に倒れながらも即座に起き上がる。
「くっ……!」
カイはバランスを崩して地面を転がるも、器用に立ち上がる。
(ヴォルフ、本気だ……!)
前より威力のあるヴォルフの攻撃にカイは戦慄する。
(でも、今回は耐えられてる……!)
数日前。屋敷のリビングに集められたカイ達は、ヴィオから強力な防具を受け取っていた。
「こちらの指輪は、所持しているだけでありとあらゆる耐性が上昇する魔法道具です。頑丈になり並大抵の攻撃は効かなくなる他、様々な魔法にも強くなります」
「外に出る時は常に着けとけ。因みにそれひとつで数千万くらいするからな、絶対に無くすなよ」
「き、気をつけます……!」
高価な防具だけに、並大抵の攻撃はカイには効かなくなった。
目の前のヴォルフが放った全力の蹴りは、バックラーで防いだとはいえそこそこの威力があった。
しかしカイは痛手は然程受けておらず、すぐに体勢を立て直せるくらいには余力が残っていた。
(ヴォルフの動きにも追いつけてる! これなら何とかなるかもしれない……!)
カイが単独で戦う一方。カイと逸れたオオガシラも何者かによって異空間に閉じ込められていた。
「来たか……」
オオガシラの前にはフェアリーゴーレムの大群。
そんなフェアリーゴーレムの真上には、風を纏い宙に浮かぶ長髪の男。
「また会ったな、リーシュ……!」
「オオガシラさん、貴方は私の言葉を素直に聞いてヴィオリシア様の下についたようですね」
リーシュはオオガシラを見下ろしながら静かに語りかける。
「見た目とは裏腹に素直な方……いえ、単純と言うべきか……」
「何をゴチャゴチャと……おいリーシュ! 俺はヴィオリシア様の下についたぞ! 約束だ、お前の知っている情報を聞かせてもらうからな!」
「残念ですが、まだ情報は渡せません」
「何だと?」
リーシュはオオガシラに返事をせず、代わりに指を鳴らす。
するとリーシュの周りにいたフェアリーゴーレムが一斉に動き出し、集団でオオガシラに襲いかかり始めた。
「また面倒な真似を……! てやーっ!!」
オオガシラは真っ先にやって来たフェアリーゴーレムの1体を素手で殴り倒した。
ゴーレムはオオガシラの鉄拳を受け、粉々に破壊されて消滅する。
「ふんっ!」
オオガシラは振り下ろした拳をすかさず振り上げ、勢いのまま隣のゴーレム2体を殴り飛ばした。
ゴーレムは呆気なく吹き飛んでいき、他のゴーレムに激突してやがて消滅。
「素晴らしい……! まさか妖精に敵う人間が存在したとは……!」
リーシュは1人で勝手に盛り上がり、それを聞いたオオガシラは目の前に群がるゴーレムをひとまず倒し切ると再びリーシュに目を向けた。
「何だ貴様は! 勝手に攻撃しておいて勝手に感動しやがって!」
怒りが爆発したのか、オオガシラは一際大きな怒声をリーシュに向けて発する。
「貴様……! 絶対に空中から引き摺り下ろしてやるからな……! 覚悟しろ!!」
オオガシラはリーシュに叫び散らすと、ゴーレムを相手に全力でぶつかり始めた。




