60話 オオガシラの実力
ヴィオの所有する広大な敷地内に移動したカイ達。
「よし。とりあえずオオガシラがどれだけ動けるかテストするか」
「相手をご用意します」
オオガシラの今の実力を確かめるべく、ヴィオは自身の能力でゴーレムを複数体生み出した。
「オオガシラ、こっち来い」
「分かった」
オオガシラがフィールドの中央に移動したところでついにテストが始まった。
「うおおぉぉぉ!!」
オオガシラは雄叫びを上げながら、目の前のゴーレムを次々と薙ぎ倒していく。
「おらっ!」
ゴーレムのキックを躱し、すれ違いざまにゴーレム脚を掴む。そのまま胴体を思い切り蹴り飛ばし、ゴーレムの脚を強引に引き千切った。
オオガシラは脚を振り回して別のゴーレムの頭を強打。
頭にヒビの入ったゴーレムに向かって掴んでいた脚を振り回し、脳天にトドメの一撃をぶちかました。
ゴーレムはガシャンと音を立てて砕け、その場から姿を消した。
「ゴーレムが……」
「あっという間に消えていく……」
カイとマモルはオオガシラの荒々しい戦いを呆然としながら見つめる。
「アイツ、人外との戦い方も慣れてやがる。カイやマモルと違って容赦がないな」
フィオが頷きながら納得する中、オオガシラは流れるような体術で次から次へとゴーレムを破壊。
「終わったぞ」
やがてオオガシラは、大勢いたゴーレムをあっという間に片付けてしまった。
「すごい……! オオガシラ、やっぱり強いな!」
「当然だ。日々鍛錬を積んでるからな」
カイは大喜びでオオガシラに駆け寄り、オオガシラはさも当然のように言い切る。
「魔力の使い方も上手いが、戦い方もだいぶ上手いな」
「魔力を限界まで集め、自身に凄まじい身体強化を施した上で予備動作無しの技を連発……大抵の相手は技を避けきれず、大打撃を受けることでしょう」
「なんというか……必要最低限の魔法の基礎を叩き込んだ後は、実践を積むくらいしかやること無いんじゃないか?」
「魔力を体内に溜め込む技術は完璧です。むしろ、どうやってあそこまで強くなれたのでしょうか……」
ヴィオとフィオからの評価はとても高いものだった。
「……何はともあれ、修行を始めるとするか」
新たにオオガシラを加え、3人での修行が始まった。
いつものように厳しい修行の数々。オオガシラもカイとマモルと同じトレーニング内容で、ただひたすら猛特訓を重ねた。
数時間後……
「よし、今日はこれくらいにするか」
「「あ、ありがとうございました……!」」
「ありがとうございました」
「なんで俺より前から修行してたお前達の方がしんどそうなんだ」
肩で息をするカイとマモルを、オオガシラは平然としながら見つめる。
「オオガシラ、入って間もないのに随分と余裕あるな」
「当然だ。前に妖精と一戦交えた後、更に厳しい修行を重ねたからな」
フィオに対してオオガシラは当然のようにそう言い放つ。
「妙な妖精の手により異空間に連れてかれたあの日。魔法道具に身を包んだ妖精を前に俺は手も足も出なかった……」
「いや、割と善戦してたと思うけど……」
「むしろケジメによる怪我がなかったら倒せただろ」
オオガシラの発言にカイとマモルはすぐさま訂正を入れる。
しかしオオガシラは2人の発言に一切触れずに話を続ける。
「俺もまだ未熟だと痛感したあの日から、更に厳しい鍛錬を積み重ねてきた。カイ、マモル、お前達も随分と腕を上げたようだが、俺も負けるつもりはない」
「頼もしいな!」
「……カイ、お前は相変わらず能天気だな。少しは対抗しろというのに……」
「おーいお前達ー、無駄話してないでクールダウンしとけー」
「はい!」
フィオに注意された3人は、素直にクールダウンの為の軽い運動を始めようとした。
「あ、待った」
しかし、すぐさまフィオに止められた。
「マモル、オオガシラと模擬戦しろ」
「模擬戦ですか」
「唐突だな」
フィオの提言にマモルとオオガシラは冷静に反応する。
「カイは随分と上達した。大勢の敵に囲まれてもある程度は冷静に対応できるようにはなった」
「ありがとうございます!」
「カイ、この調子でもっと強くなれ。というわけでカイ、先に上がってお前1人でクールダウンしてこい」
「はいっ!」
カイは素直に返事をしてその場から離れる。
「だが、マモルは……確かに成長はしてるが、能力に関しては今一歩というのが私の見解だ」
「そうですか……」
フィオの見解に、マモルは僅かに視線を落として返事をする。
「とりあえず、だ。マモル、オオガシラを相手に全力で戦え」
「全力……」
「コイツはマモルとほぼ同年代で、それでいて頑丈だ。全力でぶつかっても傷ひとつつかないかもな」
「……分かりました」
「よし。オオガシラ、マモル、向こうの広いとこで戦ってこい」
「随分とざっくりとした指示ですね」
「それ以外に言うことないからな。あ、クールダウンしとけよ。で、良くない怪我したら電話で私に言え。じゃあな」
フィオは投げやりな指示を出すと、その場から瞬間移動で退散した。
フィオの移動先は屋敷の屋根の上。フィオ高所から夜空を眺めながら、数時間前に話したヴィオの憶測を思い返していた。
『彼らは、窮地に立たされている可能性があります』
「窮地どころか、それ以上に大事になってやがった……」
ルキの立てた計画の全貌を大まかに理解したフィオは、夜空を見据えながら眉間に皺を寄せる。
「……素直に助けを求められない馬鹿共が」
フィオは夜空に向かって一言吐き捨てると、再び瞬間移動をして屋根の上から退散したのだった。




