59話 新たな仲間
「ルキ・トラペゾルドは、その悪い噂の絶えない組織トラペゾの社長の息子だ」
「!?」
フィオの発言にカイとマモルは驚く。
「では、向こうがフェアリーゴーレムを幾つも用意出来たのは、トラペゾの社長の息子だから……」
「いや、それは関係ない」
マモルの推測をフィオはすぐさま否定する。
「彼は既に家元から離れています」
「そうなのですか?」
「はい。むしろ彼は、トラペゾを……悪事に手を染める家族を心の底から嫌っていましたから」
声の調子を落としてそう呟くヴィオを、マモルは静かに見つめる。
「……ヴィオさん、ルキを知っているんですか?」
「過去に何度かお会いしました」
カイの質問にヴィオは丁寧に答える。
「長男である彼は、トラペゾを継ぐ為に教育を受けていましたが……賢い彼は、幼い頃からずっと家を、家族を拒絶していました」
「……」
「……私は、そんな彼を救おうと動いていました。しかし突如、トラペゾルドの分家にあたる一族の長男がトラペゾを継ぐと宣言したそうです」
「分家……?」
「親戚的なもんだ。ルキの親戚がルキの家の会社の後を継ぐと言った感じだな」
困惑するカイに、フィオはざっくりとした説明を挟む。
「彼は聡明な方で、トラペゾのありとあらゆる習わしに肯定的でした。家族はそんな彼を大喜びで彼を受け入れ……」
「後継者にしたわけだ」
「トラペゾは古来から賢い人を後継者に選びますから……こういったことは珍しくないそうです」
ヴィオは一通り説明を終え、改めて口を開く。
「つまり今のルキさんは、トラペゾとは何の繋がりもないんです。恐らくゴーレムは、別の手で入手したものでしょう」
「ルキはもうトラペゾとは関係ないんだな? でも、そんないい奴そうなのに何でリトをそそのかしたり、オレ達と敵対するような真似を……?」
「向こうにも考えがあるんだろうな」
「考え……つまり、それをしないといけない事情があるってことだよな? なら、もしかしたらオレ達が力になれるかも……!」
「向こうが素直なら、最初から敵対するような真似はしないだろ」
カイの希望的な憶測をフィオはばっさり切り捨てる。
「奴らはかなりひねくれてるからな、素直に口を割らんぞ」
「そんな……」
「カイ。今は無駄なことを考えず、とにかく強くなることを最優先にしろ」
フィオは落ち込むカイを宥め、再び手元のノートに目を移した。
「ルキの情報に戻るぞ。奴の力は「植物操作」」
「植物を操るやつだな?」
「そして異常強化、この2つだ」
「何?」
「能力が2つもあるのか!?」
「植物を操る力は妖精のものらしい。つまりコイツも一部は妖精だ」
「また妖精……!」
フィオの情報にマモルとカイは更に驚く。
「ルキは植物に強化を施して戦わせる。人型にして操ることもできて、接近すれば異常強化された腕力で殴られるぞ」
「とんでもないな……」
「それと、奴は家から離れたとはいえ元金持ち。実家からある程度金は受け取ってるだろうし、どんな魔法道具を持ってるか分からんぞ」
ルキの情報を聞いたマモルはため息混じりに呟く。
「もしかすると、ルキとも戦うことになるかもな。だが安心しろ、そんなお前達に新たな仲間が加わるぞ」
「仲間?」
「ホントですか!?」
フィオの発言にカイは真っ先に食いついた。
「いつ襲われるか分からん状況で、少しでも戦える奴は欲しいだろ。で、その肝心の仲間はそろそろ来るそうだが……おっ、来たな」
フィオが何かに気付き玄関に目を向けると、タイミング良く玄関の呼び鈴が鳴り出した。
「フッ、呼び鈴より先に反応してしまった」
「すごいですフィオさん!」
「流石は姉御……」
「お前達素直すぎるだろ」
フィオは素直に褒める2人に愚痴を言いながら玄関に向かい、大男を連れてカイ達のいるリビングに戻ってきた。
「連れてきたぞ」
「カイ、さっきぶりだな」
フィオに連れられ現れたのほオオガシラ番長だった。長ランに身を包んだ彼は無表情のまま2人を見下ろす。
「オオガシラ番長……!」
「オオガシラ!」
突然現れた番長にカイは真っ先に駆け寄る。
「オオガシラ、オレ達の仲間になってくれるんだな!」
「一時的にな。俺は個人的な目的の為に参加したに過ぎない」
(そうだった、確かリーシュがオオガシラ兄弟のことを……)
オオガシラ番長の話に、カイは昼間に起こった出来事を思い出す。
「……分かった、オオガシラにも目的があるわけだな! 何はともあれ仲間が増えるのはありがたいな! これからよろしく!」
「……よろしく頼む」
何も言わず仲間として迎え入れてくれたカイに、オオガシラ番長は素直に応じる。
「オオガシラ番長、よろしく」
「おう」
マモルに対しては雑に返事をして挨拶を終わらせた。
「挨拶は済んだな。これからはオオガシラにもこの屋敷に住んでもらう。カイ、マモル、オオガシラに屋敷の中を案内してこい」
「分かりました! オオガシラ、行こうぜ!」
「こら! 強引に引っ張るな!」
「カイはかなり強めに引っ張るが、オオガシラ番長はびくともしないな」
カイとマモルに連れられ、オオガシラ番長は渋々と2人の後を追い始めた。
「さて、私もオオガシラの部屋の仕上げにでも行くとするか。徹底的に片付けて新築も同然にしてやる」
「フィオさん、待ってください」
フィオはホウキを手にリビングから退散しようと動いたところをヴィオに止められる。
「……ヴィオ、何か分かったことがあるのか」
「ルキさんが所持していた、能力を向上させる薬の正体が判明しました」
「ついにか」
「そして今回、異界で出会ったあの大群……総合して考えた結果、何となくですが、彼等が何をするつもりなのか分かったような気がします」
フィオは真面目な顔をヴィオに向ける。
「もし私の考えが正しければ……ルキさんは……彼らは、窮地に立たされている可能性があります」




