58話 新たに分かったこと
ヴィオの助けもあり無事に異空間から脱出したカイとヒョウ、オオガシラ番長。
「トモをこれ以上待たせるわけにはいかん、これにて失礼!」
「ありがとな! オオガシラ!」
遊園地の人気のない行き止まりに出たところで、オオガシラ番長は真っ先にその場から退散し、この場にシロヤマ兄妹とヴィオが残った。
「あの、初めましてっ! いや、まさか遊園地でヴィオリ……ヴィオさんと会うなんて……!」
ヒョウは真っ先にヴィオに挨拶をする。目の前に現れた英雄ヴィオリシアに緊張している様子だ。
「シロヤマ・ヒョウさん、初めまして。本日はお2人を徹底的に護衛するつもりでしたが、わたくしの配慮が至らず、結果的に危険な目に遭わせてしまいました……」
「いえっ! ヴィオリ……さんは大規模な戦いは得意な反面、こういった細々(こまごま)とした計画はあまり得意ではないと知ってますし……!」
「こらヒョウ!」
「あっ! ごめんなさいっ!」
焦った勢いで失礼な発言をしたヒョウをカイが咎め、ヒョウは全力で謝罪をする。
「ふふふ……焦ると慌て出すところがカイさんそっくりですね」
「あ、あはは……」
微笑むヴィオに対してまともな返事が出ないのか、ヒョウは空笑いで誤魔化す。
「いえ、お気になさらず……むしろ謝罪するのはこちらです」
「えっ?」
「シロヤマさん」
ヴィオは改めてカイとヒョウに向き合う。
「完璧に守れず、大切な時間を台無しにしてしまい申し訳ございませんでした」
「えっ!? いえ! そろそろお開きの時間でしたし……それに……ヴィオさんは何も悪くないです!」
「今度、別の形でお詫びさせてください」
「いいですって!」
この後、ヒョウとカイはヴィオに見送られながら遊園地に戻った。
しばらくぶらぶら歩き回り、最後にショップでお土産を購入して遊園地を後にした。
「楽しかったー!」
帰りの電車内。カイは土産が入った袋を両手に楽しそうに言い放った。
「楽しかったけど大変だった……」
異空間に入り込んでしまった上に妖精にも襲われたヒョウは、座席にもたれかかりしんどそうに呟く。
「ヒョウ、大丈夫か? 駅降りたらなんか飲み物とか買いに行こうか?」
「大丈夫」
ヒョウは座席に座り直し、改めてカイを見つめる。
「……まあ、なんやかんやあったけど私も楽しかったよ。それに、兄ちゃんが戦うところ見れたし」
「ヒョウ……」
「兄ちゃん、すごく強くなったね」
ヒョウはどこか感慨深そうにそう呟く。
「……オレも、ずっと立ち止まってられないなってさ」
カイはヒョウから視線を逸らし、真っ直ぐ見据えながらそう口にする。
「兄ちゃん、無茶しないでね」
「うん。危なくなったらちゃんと休むよ、ずっと心配させてごめんな」
「ホントだよ……」
ヒョウは小さな声で呟き、さらに言葉を続ける。
「……兄ちゃんは何も悪くないからね」
「……」
ヒョウの言葉に、カイはただ口を閉ざして黙り込んだ。
やがて2人は家に到着。ヒョウはカイから荷物を受け取り、玄関の扉を上げる。
「今日はすごく楽しかったよ。兄ちゃん、じゃあね」
「オレもすっごく楽しかった! また遊ぼうな!」
「うん。じゃ、おやすみ」
「おやすみ!」
お互いに別れの挨拶をして、ヒョウは玄関を閉める。カイはヒョウを見送ると、踵を返して元来た道を歩き始めた。
「さてと、フィオさんに連絡入れてヴィオさんの屋敷に……」
「よぉ」
「うわっ!?」
携帯電話でメールを送ろうとしたタイミングでメイドのフィオが姿を現した。
「フィオさん!? いつからそこに……!?」
「遊園地出てからずっとだ。あの枯れ木でゲームしながら時間潰してたぞ、やはりステステはいいゲーム機だな」
「それテレビゲームじゃないですか!」
「ほら、無駄話はこのくらいにしてさっさと行くぞ。報告しないといけないことが山ほどあるんだ」
「はいっ!」
カイはフィオの瞬間移動でヴィオの屋敷へと移動。
屋敷で待機していたヴィオとマモルと合流し、4人で昼間起こった事件について報告を開始した。
「えっ!? シロガネさんが妖精騎士団の団長を脅し……えっ? シロガネさんが……リーシュを……あれ? それって逆じゃないのか?」
「合ってる」
とりあえず一通り報告を終えたところでフィオが口を開く。
「リーシュの目論見、そしてヴィオは異空間で人工妖精の大量発生を目撃か……」
「異空間というより、あれはもはや異界でした」
「異界……常識が通用しない、未知の空間ですよね」
ヴィオの言葉にマモルが反応する。
「何故そんなところから人工的に作られた妖精が……?」
「流石にそこまではわからん。だが、何となく分かったことがある」
フィオはマモルの疑問に対して首を横に振りつつ、ひとつの見解を述べる。
「風の能力使いであるリーシュはカイだけでなく、他の能力使いにもちょっかいをかけている。しかも獲物はフェアリーゴーレムや人工妖精などの、妖精に関するものばかりだ」
「彼はもしかすると、我々を妖精と戦わせようとしている可能性がありますね」
「妖精と……? 何で……?」
ヴィオの見解にカイが反応する。
「リーシュは妖精騎士団っていう、妖精を助ける組織の団長なんですよね? リーシュは妖精の味方なんじゃ……」
「奴は妖精の治安を守る警察みたいな存在だ。もしかすると、妖精にとって良くないことが起こったのかもな……」
「妖精の一大事ですか……」
「実際、他の妖精騎士団のメンバーが忙しなく動いているのを確認したんだ。それと……」
フィオは真面目に話を続ける。
「お前達が戦った若者いるだろ。奴らは人間だが、僅かに妖精の力を感じた」
「えっ!? 相手妖精だったんですか!?」
「簡単に調べてきた」
フィオは何処からともなく取り出したノートを広げる。
「マモルが戦った相手の名はクロ・カゲマル。奴にはどういうわけかケット・シーの力を所持している」
「カイが戦ったチャラ男はギル,ヴォルフ。コイツは単純に電気の能力使いだが、僅かに妖精の気配を観測した」
「名前まで判明したんですか……」
「ヴィオのお陰でな。そして、黄髪の若者……リトをそそのかした若者の名は『ルキ・トラペゾルド』」
「トラペゾ……?」
フィオの口から出た単語にマモルは僅かに反応を見せる。
「マモル、何か知ってるのか?」
「……トラペゾという、高性能のゴーレムを製造して世界に輸出している大きな組織があるんだ。貴族が運営する、あまりいい噂を聞かない会社だ」
「あっ、それ知ってる! 裏で人を改造してるとかいうやつ!」
「大雑把だが大体合ってる。で、その会社を運営する貴族の苗字は……トラペゾルドなんだ」
「えっ!?」
マモルの発言にカイは目を丸くして驚く。
「マモルの言う通りだ。ルキ・トラペゾルドは、その悪い噂の絶えない組織トラペゾの社長の息子だ」




