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52話 遊園地ファンタジーランド

 カイとヒョウの兄妹は駅から電車を乗り継ぎ、開園時間前の行列に並び、ついにお目当ての遊園地『ファンタジーランド』へとやって来た。


「ファンタジーランドだー!」


「やったー!」


 入園したカイとヒョウは分かりやすく大はしゃぎする。


(……よし、フィオさん達はさっきよりだいぶまともになってるな)


 カイの護衛として見張りに来たフィオ達は、携帯電話のメールで「目立ち過ぎ!」と注意済み。


 3人はサングラスを外してカイ達からだいぶ距離を取った為、先程よりかは悪目立ちしなくなっていた。


「兄ちゃん! 今日は遅目だけど人が少な目だから、ダッシュでマジックケイブに行けばすぐ乗れるよ!」


「よっしゃ! 行こう!」


 カイとヒョウはすぐさま早歩きで移動を開始。

 2人はスムーズに進み、園内で特に人気のアトラクションであるマジックケイブへと到着した。


「よしっ! 40分で乗れるよ!」


「おぉ! だいぶ早いな!」


「普段は150分以上待つからね〜。マジックケイブはこの1回で満足するとして……」


 ヒョウは鞄からファンタジーランドの冊子を取り出す。


「これに乗ったらフェアリーエリアのフェアリーレストに移動ね。ここでマジックリングとファンシードリンクひとつずつ注文するよ」


「分かった! その後は近くのカフェでいつものスープ頼む感じか?」


「そうそう。それと、今限定で発売されてるクッキーがあるからそれも……」


 カイとヒョウは冊子を眺めながら楽しそうに今日の予定のやり取りをする。




「やれやれ」


 フィオはそんな2人の様子を、いつもの無表情を少し崩しながら眺める。


「アイツら、遊園地にだいぶ慣れてるな」


「これ、少しでも遅れると追尾不可能になりそうですね」


「だな。今回は護衛中心だからアトラクションには乗らず、買い物も必要最低限に留めるとするか」


「買い物はするんですね」


「当然だ。マモル、絶対に遅れるなよ」


「分かりました姉御」


 フィオとマモルは、尾行が想像以上に大変になりそうだと予想して気を引き締める。


「……正直、私とヴィオはこういった護衛はあまり得意じゃない。敵を相手に暴れる方が性に合ってる」


「今日の護衛本当に大丈夫なんですか?」


「マモル、後は任せた」


「俺に丸投げしないでください姉御」


「フィオさん、ハルカワさん」


 フィオとマモルが会話をしていると、ファンタジーランドのパンフレットを手にヴィオが声を掛けてきた。


「ご安心ください。わたくしなら、例えシロヤマさんが遠く離れたとしても、魔力を探知して追いかけられます」


 そう告げるヴィオの手にはドーナツが幾つも握られていた。


「ヴィオさん、あの短時間でどうやって買って来たんですか」


「マモル、ヴィオなら超速で人の間を縫って走り回ることなど造作もないぞ。ヴィオ、私にもドーナツくれ」




 この後、カイとヒョウはマジックケイブのアトラクションを心から堪能した。


 不思議な生物を模したアニマトロニクスが動き周り、宝石が実る植物が群生する洞窟を通り抜ける。


「何度も乗ってるけど、やっぱいいなぁ……」


 輝く宝石フルーツの山を眺めながら、ヒョウはしみじみと呟く。


「だよなぁ……ここ、いつ来ても綺麗だよなぁ……」


 隣に座るカイも心から楽しそうにしていた。




「あー楽しかった!」


「兄ちゃん、次はフェアリーエリア行くよ!」


「おう!」


 マジックケイブを堪能したカイとヒョウは流れるように移動を再開する。


 ファンタジーなカフェで軽食を摂り、少し休憩したら次のアトラクションへと移動。

 アトラクションの待ち時間は次に向かうエリアの話をしながらお喋りをして時間を潰す。


 2人は遊園地に慣れており、もはや作業工程をこなすかのように次から次へとスムーズに進んでいく。


「おい、スムーズが過ぎるだろ」


「まるで課題をこなすかのように綺麗に進んでいきますね……」


「凄い……! スマートに目的をこなしていく様はまさに現代人……!」


 対するフィオ達は、慣れない遊園地に苦戦している様子だった。


「気になる食べ物を注文している余裕もないな。遊園地で遊ぶと言うから、こっちも護衛ついでに遊べるものかと思っていたのに」


 フィオは好きに遊園地を回れず、不服そうにしている。


「姉御、カイを護衛するついでに遊園地を遊び尽くすそうと、ファンタジーランドの雑誌を楽しそうに眺めてましたね」


「では今度、遊園地マスターであるシロヤマさんをお誘いして、一緒に遊園地を遊ぶ計画を立ててみましょう」


「それいいな。アイツならヴィオと遊園地に行くと聞いたら大喜びで飛びつくだろ」


 ヴィオの提案にフィオはすぐさま飛びつく。


「ヴィオ、2人が資格を取得した記念に豪華なディナーでもセッティングしてやれ」


「いいですね! もしシロヤマさんとハルカワさんの都合がついたら、遊園地を1日貸し切りにして遊びましょう!」


「よっしゃ」


「姉御、ヴィオさん、そこまでしていただかなくとも……」

 

 護衛である以上は自由に遊べないものの、3人は和気藹々と楽しそうに談笑する。



 この後、カイとヒョウはファンタジーランドの様々なエリアを巡った。


 様々なカフェに寄ってはカフェ限定の飲み物や食べ物を購入し、テーブル席に座ってのんびり過ごす。


 しばらくすると動き出し、待ち時間の短いアトラクションを発見したら即座に並ぶ。



 そんな感じで2人は遊び歩き……



「ついに来たよ……! ウィザードギルド!」


「ここが例のピンズが貰える所だな!」


 アドベンチャーエリアにある、古めかしい建物が立ち並ぶエリアにやって来た2人。


「確か手前の的当てが目当てのピンズが貰えるところだよな?」


「それで合ってる筈……」


 魔法使いの看板が掲げられた建物から伸びる列を眺めながら2人は話し合う。


「兄ちゃん、的当てで30点以上取るんだよ! それ以下だとキーホルダーやシールになるんだからね!」


「分かってるって! むしろ50点取ってピンズと特別なシール取ってやるからな!」


「調子に乗らない! 変に調子乗ってピンズから遠ざかったら目も当てられないでしょ!」


「分かった分かった」


「でも狙えるならシールもお願い!」


「分かった!」


 そんなやり取りをしながら、カイとヒョウは列に並ぼうと動き出す。



 そんな気合いの入った2人を遠くから眺める少女が1人。



「あれ? あの人って……」


 少女は何かに気付いたのか、すぐさまカイとヒョウに駆け寄った。



「やっぱり! シロヤマ先輩じゃないですか!」


「えっ?」


 セミロングの癖っ毛を結んだ元気いっぱいな少女は、ヒョウを一目見るなり元気よく叫ぶ。


「遊園地で会うなんて奇遇ですね!」


「あっ、トモちゃんじゃん」


 突然声を掛けてきた相手にヒョウはすぐさま気付き反応する。


「今日はトモちゃん1人?」


「お兄ちゃんと来ました! あの、隣にいる人って前に話に出たお兄さんですか?」


「そうそう。魔法が得意なカイ兄ちゃんだよ」


「へぇ〜!」


 元気な少女、トモはヒョウからカイに視線を向ける。


「ヒョウ先輩のお兄さん初めまして! 私、シロヤマ先輩の後輩のトモって言います! よろしくお願いしますっ!」


「後輩……」


「兄ちゃん、この子は部活動の後輩で友達のトモちゃんだよ」


「そうだったのか! 始めまして、俺はシロヤマ・カイ! よろしく!」


「よろしくお願いします!」


 カイの挨拶にトモは元気よく返事をする。


「えーと……なあヒョウ、後輩のあの子は普通に苗字で呼んだ方がいいよな。苗字はなんて言うんだ?」


「あー、名前で大丈夫だと思う。トモちゃんは名前の方で呼ばれたい子だからさ」


「そうなのか?」


「トモちゃん、苗字がゴツくて好きじゃないんだって」


「ゴツい苗字?」


 ヒョウの説明を聞いたカイは、不思議そうにしながらトモに視線を向ける。


「えーと……私の苗字、オオガシラなんです。なんか戦国武将とか山賊のカシラみたいで名乗りづらいっていうか……」


「オオガシラ……?」


 聞き覚えのある苗字を聞いたカイは、目を丸くしながらトモの苗字を復唱する。



「トモ、急に走り出すな!」


 そんなやり取りをしていると、トモの元に大柄な男性が駆け寄ってきた。


「あ、お兄ちゃんごめーん。先輩がいたからつい……」


「だからといって兄を放置して先に行くな! 迷子になったらどうする!」


 そこそこ長い髪をひとつに結んだ厳つい彼は、ソフトクリームを手にトモを注意する。


「すごい大きい人……」


 目の前に現れたトモの兄らしき人物にヒョウは静かに驚く。


「あっ!?」


 一方、カイはトモの兄を一目見て大きく目を見開いた。


(オオガシラ番長!?)


 カイ達の前に現れたのは、かつて敵対していた不良のトップ、オオガシラ番長だった。

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