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50話 フィオの意外な苦労

 無事に外泊許可が出たカイとマモルは、フィオとヴィオと共にドラッグストアへとやって来た。


「デパート……」


「ヴィオ、お前にはまだ早い。とりあえずフェアリーゴーレムの件が終わるまで、デパートはお預けだ」


 行き先がデパートでないことに落ち込むヴィオを、フィオがそれとなく宥める。


 そんなヴィオにカイはいつもの質問を投げかける。


「ヴィオさん、ドラッグストアは初めてですか?」


「はい、初めてです。ここは薬や生活用品が集まるお店なのですよね?」


「その通りです! 因みに、このドラッグストアには……」


 カイは今回もヴィオの知らない現代知識を教えようとしたようだが、考えなしに発言したからか途中で言葉に詰まる。


「…………マモル、後は頼んだ」


「俺に押し付けようとするな」


「2人とも、ちゃっちゃと用事済ませて家帰るぞ」


 フィオに促され、カイ達はドラッグストアへと入店。

 棚に並ぶ様々な種類の薬を眺め、ヴィオは感嘆の声を上げる。


「おぉ……此処には様々なお薬が集まっているのですね」


「最終的に医者に行くのが1番ですが、些細な症状なら此処にある薬品を使用しますね。薬剤師の方に症状を伝えれば、適切な薬を勧めてもらえます」


「便利ですね〜」


 ドラッグストアの利便性を簡単に説明され、ヴィオは素直に頷く。


「もし何か軽い症状に悩まされることがあったら、このドラッグストアを……おや?」


 話している途中でヴィオは、バスボムの棚の中から何かを見つけ出した。


「このバスボム、何やら楽しげですね」


「あっ! それはすごく楽しいやつですよ!」


 ヴィオが手に取った丸いバスボムを見たカイは意気揚々と喋り出す。


「そのバスボムをお風呂に入れると、中からおもちゃが出てくるやつです!」


「バスボムの中から……? 入浴剤でありながら、オマケでおもちゃまで付いてくると……?」


「その通りです! お菓子バージョンもありますよ! お菓子の中からフィギュアが出てくるんです!」


「それは楽しそうですね。折角ですし、このバスボムを購入してみましょうか」


 ヴィオはおもちゃ入りのバスボムを幾つか手に取り買い物カゴに入れた。


「ヴィオ、カイが言っていたおもちゃ入りの菓子を見つけたぞ」


「おっ! これは中々楽しそうですね! 買いましょう!」


「楽しそうなお菓子もあったぞ。自分で作るんだとさ」


「買いましょう!」


「カゴがお菓子で埋まっていく……」


 こうしてドラッグストアでの楽しい買い物も終えた。会計を済ませて店を後にし、4人並んで夜の街を歩く。



「それにしてもフィオさん」


「カイ、どうした」


「なぜヴィオさんをこれでもかってくらいデパートに近づけさせないんですか?」


「ヴィオはまだ現代に馴染んでないからだ。コイツに常識を叩き込むまではデパートには向かわせられん」


 フィオはヴィオに目を向けながら説明をする。


「そんな大袈裟な……」


「コイツはやばいぞ。あれはこの街に来たばかりの頃……」


「あ、あの……フィオさん……」


「ヴィオのやつ、お目当てのバスに乗ろうとして、道を走行するバスを追いかけたほどの奴だ」


「走るバス追いかけたんですか!?」


「当時はバス停で待つものだと分からず……お恥ずかしい……」


 驚くカイに、ヴィオは頬を染め恥ずかしがる。

 そんなヴィオをフィオは静かに眺め、ため息をつく。


「私が色々教えてはいるが、限界はある。だから、今を生きる2人に現代について色々教えてもらえるのは物凄くありがたい」


「フィオさん……」


「姉御も苦労してるんですね」


「なんだマモル、その言い方だと私が苦労してないみたいじゃないか」


「いつも飄々として、余裕のある大人に見えていたので……苦労なんてしないものかと」


「ふっ、大人にも大人なりの苦労ってものがあるんだ」


 マモルの「余裕のある大人」発言が気に入ったのか、満更でもなさそうな様子で言葉を返す。


「あ、そうそう……この間なんか、ヴィオが寝ぼけて魔法使って屋敷破壊しかけたんだぞ」


「「!?」」


 フィオのヴィオ情報を聞いたカイとマモルは目を丸くして驚く。


「私が瞬間移動でヴィオを移動させ、魔法が暴発する前に何とかできたものの……」


「フィオさん待ってください」


「それって、オレ達も危険なのでは……!?」


「大丈夫だ。ヴィオは常に手加減してるから大怪我にはならん。それに、また前のように寝ぼけて何かしら破壊しないよう、ヴィオを厳重に管理してるから安心しろ」


「ヴィオさん危険物扱いですか」


「仕方ないだろ。下手したら街消し飛ぶかもしれないんだからよ」


「姉御……」


 フィオの苦労を知ったマモルはどことなく悲しげだ。


「事故は起こらないようにしてある。それにヴィオも、カイとマモルが家にいればトラブル起こす頻度も減るだろう」


「申し訳ございません……」


 ヴィオは悲しげな表情を浮かべ、カイとマモルに謝罪をする。


「大丈夫ですよヴィオさん! ヴィオさんのトラブルも修行のひとつとして扱えばどうということはないですから!」


「できる限りトラブルは起こさないようにします……」


 そんなやり取りをしながら、カイ達はヴィオの屋敷へと帰った。




 その後、フィオによる豪勢な晩御飯を済ませ、しばらくしたらヴィオの所有する広い土地に移動して修行を開始。


「おら2人とも、もっと身体に魔力を集めろ〜」


「ぐっ……! これ以上は……!」


「もう無理……!」


「そうか……なら、次はそのまま山を登ってもらおうか。もちろんゴーレムのバチバチくんを引き連れてな」


「「はい!」」


 カイとマモルはとにかく厳しい修行をこなす。


 やがて夜遅くに修行は終了。クタクタになった2人は屋敷で大きな風呂に入り、寝支度を整え、割り振られた部屋で就寝。




 だが、2人の修行はまだ終わらない。


「ううん……」


「ここは……」


 カイとマモルは別々の空間で目を覚ます。


「夢の中か……ん?」


「あっ! お前は……!?」


 私服姿で起き上がったマモルとカイの前には、つい数時間前に戦った相手が立ちはだかっていた。


 カイの前にはチャラい若者ヴォルフ。


 マモルの前には地味な若者カゲマル。


『失礼します』


 驚くカイとマモルの頭上からヴィオの声が聞こえてくる。


『ハルカワさんとシロヤマさんの記憶にあった彼を、私の想像を加えて再現しました』


 ヴィオの声に、カイとマモルは静かに耳を傾ける。


『彼らとの再戦に向けて、この夢の中で徹底的に戦っていただきます。現実の彼らより少し強くしているので、生半可な攻撃は通りません』


 ヴィオの説明が流れる中、カイとマモルの周りにフェアリーゴーレムも出現する。


『お2人とも、朝まで頑張ってください。では……始めっ!』


 ヴィオの始まりの合図が響き渡り、敵は一斉に動き出した。


 ヴォルフは大勢のゴーレムを引き連れてカイに突撃し、カゲマルはゴーレムに隠れてマモルの隙を伺う。


(やばい! 大勢で連携して来られると分からなくなる!)


(速い……ほんの僅かでも気を抜くと徹底的に追い込まれる……!)


 カイとマモルは強化された相手に大苦戦しながらも戦いに身を投じる。


 2人は朝日が昇るまで、夢の中で延々と戦い続けたのだった。

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