49話 一方その頃……
夜、ヴィオの屋敷内にある広いリビングにて。
「彼らの行動が落ち着くまで、わたくしの屋敷に宿泊しませんか?」
「宿泊……!?」
「ヴィオさんのこのお屋敷に……!?」
ヴィオの提案に、マモルとカイは戸惑う。
「それはつまり、ヴィオさんのお屋敷に寝泊まりするという……」
「その通りです! 可愛く言えばお泊まり会、カッコよく言うなら合宿です」
「おっ、それいいな」
マモルの発言にヴィオは楽しそうに答え、フィオもいい案と言わんばかりに何度も頷く。
「マモルとカイが1日中この屋敷にいるのなら、もっと長く修行ができるな。朝練もできるしいいこと尽くめだ」
「やります!」「宿泊します」
フィオの発言を聞いたカイとマモルはすぐさま力強い返事を出した。
「おぉ、修行にここまで意欲的だとはな。普通は嫌がるものだぞ」
「正直言うと、今の修行も大変ですが……先程の戦いで俺は、相手にいいようにもて遊ばれたように感じました」
マモルはフィオに顔を向け、悔しそうに話を続ける。
「せめて相手と渡り合えるよう、少しでも強くなりたいんです」
「オレもマモルと同じです! それに、このまま相手を野放しにしてたら、今度は何をするか……!」
「……そうだな。なら、私達も頑張って指導しないといけないな。なあヴィオ」
「そうですね! お2人とも、覚悟してくださいね!」
「ありがとうございます!」「よろしくお願いします」
フィオとヴィオの心強い言葉に、カイとマモルは感謝の言葉で返す。
「お2人はお泊まり決定ということで……早速、寝泊まりに必要な生活用品を購入しにデパートに向かいましょう!」
「分かりました! ……あっ、その前に宿泊のことを両親に伝えないと……」
「俺も両親に伝えてきます」
カイ達が日用品を買いに外に出たその頃。
そこそこ大きなアパートの一室。先端が橙色の黄髪を持つ若者ルキは、リビングに敷かれているカーペットに寝転がり、バラエティ番組放送するテレビをじっと眺めていた。
「ただいまー!」
「おかえりー」
扉を豪快に開けて入って来たのは、先程カイと戦っていたチャラい若者。
「弁当屋で晩飯買ってきたよー」
「おーサンキュー」
大きなビニール袋を手にリビングに移動した彼は、袋から弁当を取り出してはリビングのテーブルに並べていく。
「見事に肉ばっかだな」
「いいっしょ。どーせみんな肉系選ぶだろうし」
ルキはゆっくりと起き上がり、並べられた弁当に目を通す。
「ふんふーん」
「……ヴォルフ、上機嫌だな。楽しかったか?」
「そりゃもう!」
ルキにヴォルフと呼ばれた若者は楽しそうに答える。
「ルキの言う通り、あの白アタマのやつは連携攻撃がてんで苦手みたいでさ! でもちょっと煽るとすげぇ粘ろうとすんだよ!」
「遊びすぎるなよ……あとヴォルフ、少しは手加減したんだろうな」
「えーと…………へへ……」
ルキの問いにヴォルフは途端に勢いを失い、愛想笑いを浮かべながら目を泳がせる。
「ヴォルフ……」
「ごめん、楽しくてつい……あっでも! 途中でヴィオリシアさんが来てさ! もー最高だった!」
「ヴィオさんと戦ったのかお前。おいヴォルフ、やるべきことは分かってんだろうな」
「分かってるって! そんな睨むなよ〜!」
「ただいま〜」
ルキとヴォルフが話し合う中、毛先が茶色の黒髪をした若者カゲマルが挨拶と共に部屋に入る。
「リーシュに送ってもらった〜」
「へぇ、アイツにねぇ。カゲ、弁当どれにする?」
「あっ、唐揚げ弁当あるじゃん。俺これもーらい」
「カゲならそれ選ぶと思ったー! ほら持ってけ!」
「ヴォルくんありがとー」
「カゲマルおかえり。マモルはどうだった」
「んーとね……」
カゲマルはヴォルフから受け取った唐揚げ弁当を手に、カーペットの上に座る。
「マモルくんはね、ゴーレムは倒せたけど……まだ本調子じゃなかったかなぁ〜」
「おかしいなぁ……アイツが1番火力が出る筈なのに」
「なんか妙だよね。なんか力出せない理由とかあんのかなー」
さながら日常会話並みの緩さで、カイとマモルを襲撃した時のやり取りをする。
「失礼します」
そんな3人の元に新たな訪問者が現れた。
「リーシュ」
開け放たれたベランダから風と共に舞い降りたリーシュは、そのままリビングへと入室する。
「何? なんか連絡事項でもある感じ?」
「新しい能力使い見つけてきたとか!?」
「リーシュ、連絡の前にまず靴脱げ」
「いえ、本日は皆様に差し入れを届けに参りました」
「差し入れ〜?」
「何々!?」
「おい靴脱げって言ってんだろ」
弁当の蓋を開けていた3人に、リーシュはひとつの箱を差し出した。
「こちら、最高級の地球和牛です」
「マジ!? 地球産!? すっげー高いやつじゃん!?」
「すごっ」
リーシュの差し出した高級和牛にヴォルフとカゲマルは即座に飛びつく。
「……」
そんな光景を無言で眺めていたルキは、神妙な表情をリーシュに向ける。
「これ、本当にいいの?」
「勿論です、せめてこれくらいのことはさせてください。元はと言えば……」
「その話はもう済んだでしょ。それよりリーシュ、お前も何か食べる?」
「いえ、私はもう食べてきたので……」
「そっか」
リーシュとルキがそんなやり取りをする中、ヴォルフは和牛を手に大はしゃぎしながらダイニングへと移動する。
「なあルキ! 早速焼いちゃっていいすか!?」
「味付けはシンプルに塩でいいよね〜?」
「は? 料理の心得ないボンボン共に任せられるか。オレに任せろ」
「流石ルキ様!」
「ルキだってボンボンじゃん」
3人は軽口を叩き合いながら清潔な台所へと向かう。
リーシュはその様子を暫く眺めていたが、やがて何も言わずにベランダへと歩き始めた。
「リーシュ」
無言で部屋から出て行こうとするリーシュを、ルキは一切振り向かずたった一言で呼び止める。
「あの話、どうにかならないか?」
「……残念ながら、これ以上は予定を早められないそうです」
「そうか」
リーシュの返事に、ルキは表情を曇らせながら反応する。
その様子をリーシュは申し訳なさそうに眺め、やがて外に目を向ける。
「では、私はここて失礼……うっ」
「リーシュ?」
リーシュは唐突に足を止め、ルキ達は心配そうに顔を向ける。
「ゴホゴホッ! ゴホッ……!」
「おい、大丈夫か」
咳き込みだしたリーシュにルキが駆け寄る。
「平気です……それより、我々にはもっと気にすべき相手がいるはずです」
「分かってるって……」
リーシュの発言にルキは表情を僅かに歪ませながら返事をする。
「……カゲマル、ヴォルフ」
「何〜」
「どした?」
「次はオレも出るよ。マモルくんとお話してくる」
「えっ!?」
「マジ!?」
ルキの発言に、カゲマルとヴォルフは目を丸くして驚く。
「ルキも出んの!?」
「ルキ、やめときなよ……こーいうのは僕らがやるからさ」
「大丈夫、上手くやるからさ。それに……」
ルキはカゲマルとヴォルフに顔を向ける。
「オレも思い出作りしたいからさ。これくらいの我儘、許してほしいな」




