48話 反省点
謎の若者に襲われたシロヤマ・カイはヴィオに助けられ、無事に異空間から脱失した。
カイはひとまず避難するために、ヴィオと共にヴィオの所有する屋敷へと向かったのだった。
「すごい屋敷……」
目の前に聳え立つ大きな屋敷はシンプルながらも見事な造りで、カイは見事に圧倒されていた。
「本来なら別の形でご招待したかったのですが……今は緊急事態です。さあシロヤマさん、どうぞお入りください」
「お邪魔しまーす……」
玄関の大きな扉を開けて促され、カイは恐る恐る屋敷に入った。
「おぉ……」
一般家庭では見られない広いエントランス。素朴ながらも洒落た飾りつけがされた館内に、カイは思わず言葉を失う。
「すごい……」
「シロヤマさん、履き物をどうぞ」
天井から吊り下がる高価そうなシャンデリアに圧倒されているカイに、ヴィオはスリッパを差し出す。
「あ、ありがとうございま……随分と可愛らしいスリッパですね」
「フィオさんの趣味なんですよ」
何とも言えない緩い顔が沢山ついたスリッパに履き替えた2人は、広いエントランスを歩いてリビングへと移動した。
「マモル!」
広いリビングには既にフィオとマモルの姿があった。
「2人ともお疲れさん」
「カイ、無事だったか」
リビングに入室してきた2人をフィオが出迎え、マモルはこれまた高価そうなソファーに座りながらカイに声を掛けた。
マモルはどういうわけかアップリケまみれになっていた。
「マモル大丈夫か!?」
「俺は平気だ。カイこそ大丈夫か?」
「オレの心配してる場合か!? 眼鏡にまでアップリケついてるぞ!」
カイは慌ててマモルの元へと駆け寄る。
「マモル! 一体何されたんだ!? アップリケでどんな攻撃受けたんだ!?」
「落ち着け」
驚き動揺するカイをマモルはいつもの調子で宥める。
そんなマモルのそばにフィオが姿を現す。
「安心しろ、マモルは無事だ。だが大事な制服を切り刻まれたんでな、私が修復したんだ」
「これフィオさんの仕業だったんですか!?」
「フィオさん、全くもって修復できてません」
「何を言うヴィオ、こんな完璧に修復したんだぞ」
冷静に指摘するヴィオにフィオは淡々と反論を並べ、改めてマモルの方を向く。
「マモル、もう平気だな?」
「普段より視界が狭い気がします」
「だろうな」
「分かってたならせめて眼鏡のアップリケは外してあげてください!」
マモルの一言にフィオは頷き、カイは大声で叫んだ。
「いや、そんなことより……」
カイは緩んだ空気を仕切り直すように、改めて話を切り出す。
「やっぱりマモルも襲われたんだな……」
「その様子を見るに、カイも同様に襲われたようだな。実は……」
カイとマモルは向かい合い、お互いに起こった出来事を伝えた。
「あの時、能力使いの本を取り合った奴とマモルは戦ったのか……」
「カイの元にはチャラい男か……俺と対面した奴の仲間だろうな」
情報を共有した2人は、お互いが戦った相手に言及する。
「……オレ、ゴーレムの連撃を受け流すのに手一杯で、アイツにまともに反撃できなかった……」
「……俺もだ。相手には手も足も出ず、一方的に追い込まれた。その上、人工魔力を生み出す装置を破壊された」
「えっ!? マモル大丈夫なのか!?」
「姉御が直してくれたから大丈夫だ」
「フィオさんそんなこともできるんだ……」
「しかし、常に装置に頼りっぱなしでは、いざという時に装置を破壊されたら困るな……」
マモルは制服の内ポケットから装置を取り出して見つめる。
「いずれは人工魔力無しで戦えるようにと思っていたが……」
「まだ無理そうか……?」
「時間が掛かりそうだ。あと、不意打ちを受けたのは痛かったな……」
「あ! それ俺も思った! オレあの時、重い一撃受けただけでまともに戦えなくなって……」
「俺に関しては制服を引き裂かれた。奴らと戦うなら、もっと相手の動きを予測して動けるようにならないとな……」
「防具も強化すべきですね」
マモルの話にヴィオは口を挟む。
「恐らく、相手も道具を使用していたのでしょう。彼らを相手取るなら、生半可な防具では太刀打ちできません」
「ヴィオの言う通りだ。幾ら真面目に修行をしてるお前達でも、相手の攻撃を全て避け切るのはほぼ不可能だ。何かしら身を守る道具は持っとけ」
「魔獣駆除で使われているような本格的な防具が必要ですね」
「それは……幾らなんでも本格的すぎるのでは? それに価格も学生の手に届くものでは……」
「私が出します」
「しかし……」
「背に腹は代えられません。実害が出た以上は、身を守る手段は絶対に必要です」
マモルの発言にヴィオは真面目に言葉を返す。
「それに今回の戦いで防具が整っていれば、シロヤマさんは重い一撃も多少は耐えられました。ハルヤマさんは相手のしつこい引っ掻きに気を取られることも……」
「防具も大事だが、私はカイとマモルの相手も気になったな」
ヴィオに続いてフィオも話に加わる。
「話を聞いた感じだと、2人が戦った相手との相性が悪かったのも敗因にありそうだと思った」
「相性?」
「そうだ。確かカイは群れる奴と、マモルは身軽で素早い奴と戦ったんだよな」
フィオはソファーに深く腰を下ろしたまま、カイとマモルの相手について言及する。
「もしカイがマモルの相手と戦ったら、奴のヒョロい攻撃から身を守り、寒さで相手の動きを鈍くして少しは優位に立てただろうな」
次に、フィオはカイからマモルに視線を移す。
「マモルがカイの相手と戦ったら、マモルは相手の連携の取れた攻撃も、力で諸共吹き飛ばせたかもしれん」
「姉御……」
「あとマモルの頭があれば、あの戦闘狂を言葉で乗せて上手く誘導することもできただろうな。話を聞く限り、そいつは口車に乗りそうな奴だろうしな」
「……つまり、俺達はお互いに相性の悪い相手と対面したわけですね、姉御」
「そういうことだ」
フィオはマモルの言葉に頷く。
「多分だが、相手はそれを読んだ上でカイとマモルにあの2人を送り込んだんだろうな」
「じゃあ、次もまたアイツと戦うことになるんですね……」
「恐らくな。そして、奴らは再びお前達の前に姿を現すだろう。次に会った時に返り討ちにできるよう、弱点の克服も視野に入れて修行するぞ」
「分かりました!」「頑張ります」
フィオのまとめの言葉に、カイとマモルは素直に返事をした。
「では、話がまとまったところで……もしお2人がよろしければ、気晴らしの兼ねて外にお出掛けしましょう!」
「今からですか!?」
「分かりました、行きましょう」
ヴィオの提案にカイは戸惑うが、マモルは大人しく従うつもりのようだ。
「カイ、下手に帰宅するよりはヴィオさんと一緒にいた方が安全だ。いつ相手に襲われるか分からないしな」
「それもそっか……」
「だが、私達もお前達とずっと一緒にいられるわけじゃないぞ」
「それについて、わたくしから提案がございます」
ヴィオはその場から立ち上がり、カイとマモルを見つめる。
「彼らの行動が落ち着くまで、わたくしの屋敷に宿泊しませんか?」
「宿泊……!?」
「それはつまり、ヴィオさんのお屋敷に寝泊まりするという……」
「その通りです! 可愛く言えばお泊まり会、カッコよく言うなら合宿です」




