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46話 戦闘狂

 マモルの前にフィオが現れた頃、カイの方では……


「ふんっ!」


 異空間の公園にて。革ジャンを身につけたワイルドな若者は、カイの生み出した巨大な氷から何とか抜け出した。


「カイくーん! あーそぼー!」


 そして若者は仲間のフェアリーゴーレムと共に、カイの周囲に広がる巨大な氷の結晶を破壊し始めた。


「そらっ!」


 ゴーレムと若者の猛攻により、分厚い結晶は粉々に砕けていく。


 フェアリーゴーレムとの連撃により氷ははあっという間に砕け、結晶の中央にいた人物が姿を現した。



「カイくーん! みーっけ……あれ?」



 若者の視界に現れたのはカイではなかった。


「お兄さん、初めまして」


 長い紫の髪をリボンで結び、パーカーを羽織った美しい少年。


 カイの師匠であり友人であるヴィオがそこにいた。


「ヴィオリシアさん!?」


 若者は相手を知っているのか、大声で少年の本名を叫んだ。


「私のことを知っているんですね」


「当然っすよ! ヴィオリシアさんは俺にとって憧れの人なんで!」


 若者は先程戦っていたカイからヴィオにすぐさま興味を移し、大はしゃぎでヴィオと対話をする。


「ヴィオリシアさん! ぜひ俺と勝負してくださいっ!」


「勿論。わたくしもそのつもりでしたから」


「やった!」


 ヴィオの返事に若者は大喜びし、その場で楽しそうに飛び跳ねる。


「じゃあ……遠慮無しで行かせていただきまーすっ!」


 若者はヴィオに向かってすぐさま構えると、場にいる全てのゴーレムを引き連れて突撃を開始した。


 対するヴィオは微笑みながら右手を突き出すと、若者目掛けて小さな宝石を目にも留まらぬ速さで幾つも弾き飛ばした。



 刹那。若者の周りにいたゴーレムは凄まじい音を立てて頭部が砕け散った。



「あ?」


 唐突に起こった出来事に頭が追いつかないのか、若者は呆けた声を上げる。


 そんな若者にヴィオはすぐさま急接近。


 ヴィオは若者の目の前で一回転し、胴体に向かって見事な回転蹴りを放った。


「おげえっ!?」


 若者は独特な叫び声を発しながら吹き飛び、地面に倒れる。


「やば……! 想像以上かも……! がはっ……!」


 若者は苦しそうに咳き込みながらも、ヴィオに視線を向けながら立ち上がる。


「……貴方、まだやるつもりですか?」


「ギヒヒヒ……! 当然じゃないっすか……!」


 いつになく真剣な表情のヴィオを前に、若者は口角を吊り上げ、妙な笑い方をしながら再び構える。


「夢だったんすよ……! 一度でいいから、ヴィオリシアさんと戦ってみたかった……!」


 若者は全身に魔力を漲らせる。若者の身体に電流が駆け巡り、バチバチと音を立てる。


「……私を知っているのなら、勝てる見込みはないと理解している筈では?」


「そんなの分かってますよぉ……!」


 若者は雷を更に溜め込み、目の前のヴィオを睨みつける。


「俺、ヴィオリシアさんと戦えるのなら、ここでくたばったって構いませんから……!」


「貴方は……」


 明らかに様子がおかしい若者にヴィオが何か言いかけるも、若者は気にせず駆け出した。


 電流を纏った若者はとんでもない速度で園内を駆け巡る。

 地面だけでなく木や建物の壁を走り、やがてヴィオの背後を目掛けて飛び掛かる。


「!」


 しかしヴィオはその程度の攻撃を躱すことなど造作もなかった。


 若者の突撃を簡単な動作で軽く躱したヴィオは、すれ違いざまに飛んできた若者の脚を掴み、遠くへと投げ飛ばした。


「うぉわっ!?」


 若者は再び吹き飛ばされるも、地面にぶつかる寸前に身体を捻って脚から地面に着地。


「ギヒヒ……!」


「まだやるおつもりですか?」


「当然!」


 勝ち目はないのは若者も理解しているだろう。それでも若者は止まる気配は一切ない。


 しかし、そんな若者のポケットから軽い電子音が鳴り出した。


「んだよ、こんな時に……」


 目の前にヴィオがいるにも関わらず、若者はズボンのポケットから携帯電話を取り出して画面を確認する。


「……あー、ルキおかんむりだわ」


 何か連絡が入ったのだろう。彼は途端に不機嫌になり、全身に漲らせていた魔力を全て解除した。


「すいませーん。俺、ここでドロンしますわ」


「私から逃げられるとでも?」


 この場から逃走を図る若者に、ヴィオは冷たい声で言い放つ。彼を逃す気は無いようだ。


 しかし、あの大英雄ヴィオリシアを前に若者はヘラヘラと笑う。


「逃げられるんですよねぇ〜これが!」


 若者はそう言い捨てると、左手の指輪に魔力を流し、指輪の効果を瞬時に発動させた。


 若者の身体が一瞬光り輝き、なんと若者はヴィオの前から一瞬で姿を消した。


「!」


 ヴィオは驚き、若者が消え去った跡を静かに見つめる。


(あれは恐らく転移石の効果……あんな高価な魔法道具を所持していたとは……)


 ヴィオが考え事をしている間に世界は変化し、異空間から元の世界へと戻る。


(能力使いを試すような真似をする彼等の目的は一体……とりあえず彼には、色々と役に立ってもらいましょうか)


「あっ! ヴィオさん!」


「シロヤマさん、お待たせしました」


 考え事を終えたヴィオは、現実の公園のベンチで休んでいたカイに歩み寄る。


「ひとまず、わたくしの屋敷に避難しましょう」


「分かりました!」


 ヴィオはカイの側に近寄ると、手に持った転移石の指輪を発動させ、その場から姿を消したのだった。

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