45話 新たな乱入者
異空間の中。カゲマルの斬撃をもろに受けたマモルの元に、ヴィオのメイドであるフィオが姿を現した。
「お前、舎弟に手を出しやがったな」
屋根の上に立つカゲマルを睨みつけ、怒りの滲む言葉を発したフィオは、カゲマルに向かって手にしたホウキを強く構える。
「えーと……もしかして戦うつもり? こっちはもう戦いたくないんだけ……うわっ!?」
戦意のないカゲマルはフィオに戦う意志はないと伝えようとするも、フィオはそんな言葉に一切構わずカゲマルに急接近してホウキを振った。
「危なっ!?」
カゲマルはフィオの攻撃を避けつつ、慌てて道路に着地する。
そんなカゲマルの前にフィオも瞬間移動で姿を現し、カゲマルは慌てて口を開く。
「ストップ! あのっ! 俺はもう……!」
「お前身勝手でワガママだな。こっちにはお前と戦う理由があるんだ、マモルをあんな風にしておいてタダで済むと思うな」
「俺は君と戦う理由は……」
「問答無用」
御託を並べるカゲマルにフィオは容赦しない。フィオはカゲマルを睨みつけながら、その場から一瞬にして姿を消した。
「ほれ」
フィオはマモルの前に現れ、マモルに傷を癒す魔法道具を手渡すとその場から消える。
そしてフィオは、折れた標識を手に再びカゲマルの目の前に姿を現した。
「歯ぁ食いしばれよ」
フィオはそう言うと、手にした標識をカゲマル目掛けて投げ飛ばした。
「おっと」
投げ飛ばされた標識をカゲマルは難なく避ける。
「これくらい……っ!」
しかし、標識が投げ飛ばされた先にフィオが出現。
飛んできた標識を再び掴むと、フィオは真正面に立つカゲマルの背後を目掛けて全力で標識を振った。
「ぶなっ!?」
とんでもない速度で振られた標識をスレスレで躱すカゲマル。
「ほいほいほいっ」
「おっ!? わっ!? ちょっ!?」
フィオは相手への攻撃を一切手を緩めず、カゲマルに向かって標識を振り回していく。
「お前しつこいな」
「それはこっちのセリフだよ! こっちはもう戦うつもりは……」
「かくなる上は……」
カゲマルの真正面に立ったフィオは、手に持った標識を再び投げ飛ばそうと身構える。
「それくらい…………あっ」
カゲマルは攻撃を避けようと動くも、進んだ方角の先に手負いのマモルを発見。
もしフィオがこのまま標識を投げたらマモルにも命中するだろう。
「おっと。メイドさん、このまま投げるとマモルくんにぶつかるよ〜?」
「構わん」
「えっ」
カゲマルの言葉に手短かに返答をしたフィオは、投擲先に怪我を治療中のマモルがいるにも関わらず、手に持った標識をそのまま投げ飛ばした。
「うおおおおーっ!?!?」
カゲマルは投げ飛ばされた標識を全力で掴みにかかった。
「ふんっ!!」
カゲマルはポールを白羽取りの要領で強引に掴むと、魔力を巡らせた全身をフルに使い、天に向かって標識を投げ飛ばした。
標識はあっという間に闇に吸い込まれ、何処かへと消え去った。
「あっっっっっつぶな!?」
標識の排除に成功したカゲマルは瞳孔を縦に閉じ、顔から汗を吹き出しながら全力で叫んだ。
「ねえちょっとメイドさん!? 今マモルくん諸共潰そうとしてなかった!?」
「必要な犠牲だ」
「無駄な犠牲だよ!! ゴホッゴホッ!」
フィオの言葉にカゲマルは大声で反論、勢い余ったのか咳き込む。
「……」
そんなカゲマルの様子を、フィオはじっと眺める。
「……ここまで取り乱すとはな」
「何……?」
「ゴーレム連れて街に繰り出そうとしていたお前が、マモルをそこまで気にかけるとはな」
「そーいうのじゃないって! これは……!」
「お前、マモルを使って何するつもりだ」
カゲマルの態度を見て何かを察したのか、フィオの表情が更に険しくなる。
「……!」
フィオから放たれる圧にカゲマルは驚き動揺し、思わず目を見開く。
「お前を問いただす必要があるな。お前、覚悟しろ」
「えっ、ちょっ」
ホウキを構え直したフィオはすぐさま瞬間移動でフィオの背後に立ち、相手の背中を目掛けて全力でホウキを振り下ろした。
命中すればカゲマルは大打撃を受ける。
しかしホウキは、カゲマルにぶつかる寸前で真っ二つに切断されてしまった。
「!」
「全く……この程度で取り乱すとは……」
カゲマルとマモルが驚く中、カゲマルの背後に新たな人物が姿を現す。
長い髪に切れ長の目を持つ男性の姿。彼を見たフィオは眉間に皺を寄せた。
「リーシュ、やっぱり関わってやがったか……」
妖精騎士団の団長リーシュ。
妖精の秩序と平和を護る存在である彼はどういうわけか、人同士のいざこざに割り込んできた。
そんな奇妙な乱入者、リーシュはフィオに向かって口を開く。
「フィオさん、彼をいじめるのは控えていただきたいのです」
「何言ってんだ、先に手を出してきたのはそっちだぞ。いじめっ子庇ってんのはお前だ」
フィオは折れたホウキを構えたままリーシュを睨みつける。
「お前、こんなことしておいてタダで済むと思うなよ。それなりの報いを受けるものと思え」
「勿論です。この償いはきっと……」
「あ?」
「失礼します」
どこか含みのある言葉にフィオが反応する中、リーシュはフィオに構わず別れの挨拶を述べる。
するとリーシュの周囲に暴風が吹き荒れ暴風が収まる頃には、リーシュとカゲマルの姿は現場から姿を消していた。
「リーシュの野朗……」
異空間から元の世界に戻り、フィオはリーシュ達が消え去った跡を見つめる。
(ゴーレム作る会社に、妖精まで関わっていたとは……一体、この星に何が起きてんだ……? いや、今はそれより……)
フィオはすぐさまその場から視線を逸らし、瞬間移動でマモルの前に姿を現した。
「マモル」
「フィオさん……」
目の前に現れたフィオにマモルは視線を向ける。
マモルは傷を癒す魔法道具を使用したにも関わらず、傷は完全に塞がっていなかった。
「人工魔力を生み出す装置を壊されていたのか」
マモルの制服の下に付けられていた小さな道具に深い傷が付いている。
マモルの体内に眠る魔力は徐々に復活しているものの、まだ完全に復活しておらず不安定。まだ人工魔力を使用しなくてはならない状態だ。
どうやら体内で魔力を上手く循環できず、魔法道具を使用しても尚、傷の治りが遅れているようだった。
「フィオさん、カイは……」
「それ以上喋るな。カイの方にはヴィオが向かっているから安心しろ。
フィオはマモルの傷に触れないように持ち上げると、瞬間移動でその場から姿を消した。




