43話 新たな戦闘スタイル【挿絵あり】
異空間と化した公園の中にて。
若い男性率いるフェアリーゴーレムの群れに支配された空間の中で、若い男性はカイに向かって楽しそうに語りかける。
「ダチ助けたかったらまず、この場にいるゴーレム達をぜーんぶ倒してみなよ? ってわけで……野朗共、行っちゃいな!」
若者の元気な掛け声により、周りで佇んでいたフェアリーゴーレムが稼働。カイを目掛けて襲いかかってきた。
「うわっ!」
カイは囲まれる前に足に力を込め、足元から巨大な氷の結晶を生み出した。
「それっ!」
地面から勢いよく伸びた結晶の勢いを利用し、カイは空中に飛び上がってゴーレムの包囲網を抜ける。
「それっ!」
宙に飛び上がったカイは真下に集まるゴーレムを目掛け、輝く結晶を幾つも放った。
輝く結晶はゴーレムに次々と命中。バキンバキンと派手な音を立ててゴーレムに結晶がぶつかり、一部のゴーレムは頭部や胴体を失い、その場で消滅した。
(まだ力は完全に纏まり切ってない感じがする……でも、全力でなくても倒せるようになってる……!)
ゴーレムを倒しきれず残してしまったが、残ったゴーレムの一部はヒビ割れていたりと完全な状態ではなかった。
(これなら倒し切れるかもしれない……よし、前々から試していた新しい技をここで使ってみるか!)
カイは両手に一際力を込めながら、やがて地面に着地した。
「おっ、戻ってきた!」
遠くで観戦していた若者は、地面に着地したカイに目を向ける。
「あれは……丸い盾?」
カイは能力により、氷のバックラーのようなものを両手から生み出していた。
バックラーを両手に装備したカイは、目の前に立つゴーレムに対して両手を構えながら駆け出した。
「それーっ!」
カイは右手のバックラーに力を込めながら振りかぶり、目の前のゴーレムを目掛けてバックラーによる全力の打撃を放った。
「!?」
白銀色に輝くバックラーに殴打されたゴーレムの頭部は即座に砕け、力を失い地面へと倒れ込んだ。
「うおっ!?」
破片が後方に飛び散り、遠くで観戦していた若者は驚き目を見開く。
「よし!」
(能力で作り上げた武器には力を込めやすい! これならゴーレムを倒し切れる!)
手応えを感じたカイは、周りにいるゴーレムを目掛けて次々と殴りかかった。
拳を振り上げてゴーレムの顎を殴りつけ、すかさず隣のゴーレムに振り上げた拳を裏拳のごとく振り下ろして殴り込む。
「おっと!」
別のゴーレムに殴り掛かられるも左手のバックラーで受け流し、無防備になった相手の胴体にバックラーの打撃をお見舞いした。
「まだまだぁ!」
カイの猛攻により、フェアリーゴーレムは次々と殴られ消えていく。凄まじい速度だ。
「ギヒヒ……!」
そんなカイを後方から見ていた若い男性は、仲間のゴーレムがやられているにも関わらず、どういうわけかハイテンションになっていた。
「こんな強そうな相手と遊べるなんて……! 最っ高! ギャハハハハ!」
一方、茶髪の入った黒髪の若者「カゲマル」を前にしたマモルも、異空間の道路でゴーレムの群れと戦っていた。
「容赦はしないからな……! はあっ!」
マモルは両手と両足に炎を纏うと、両手を振り翳してゴーレムを何度も殴りつけた。
ゴーレムを殴った箇所は次第に欠けていき、やがてゴーレムは力を失ない地面に倒れて消滅した。
「ふん!」
マモルはゴーレムの拳を避けつつ殴り込み、回転蹴りでゴーレムの頭部を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたゴーレムの頭は地面に触れる前に崩壊して消滅した。
「へー、能力を体内に込めながら戦うことにしたんだ」
そんなマモルの攻防を、カゲマルは少し離れた場所でじっくり観察する。
「炎を飛ばすよりは力が安定するかもしれないけど、攻撃できる範囲は狭まるよね〜」
ゴーレムはマモルの攻撃により着実に数を減らしていく。だが、カゲマルはどこか不満げだった。
「ゴーレムを倒しきれるかもだけど……なんか違うなぁ」
カゲマルは不満そうにしながらも、
「ま、いいや。とりあえずこのゴーレムを倒し切ってくれれば……」
なんて独り言を呟いたカゲマルだったが、対するマモルはゴーレムに少し押され気味になっていた。
少し広いとはいえ、この場は両側に壁のある道路だ。
逃げづらい上に1人を囲いやすい環境であるため、群れをなすゴーレムにとっては非常に相性が良かったようだ。
「ぐっ……!」
ゴーレムの群れに押されていき、やがてマモルはゴーレムに完全に囲まれてしまった。
「えっ! 嘘でしょ!?」
ゴーレムの群れに囲まれてマモルの姿が見えなくなり、カゲマルは途端に慌てだす。
「ちょっと待ってよ、流石にそれは……!」
慌てたカゲマルがその場から動き出そうとしたその途端。
「うわっ!?」
ゴーレムが群がる中心部が突如として大爆発を起こした。
「これは……!」
派手な爆発と共に凄まじい火柱が上がり、カゲマルは驚きつつも手際よく魔法防壁を展開。
爆発に巻き込まれたゴーレムは身体中に亀裂が入り込み、バラバラに崩れて四方八方に吹き飛んだ。
ゴーレムの破片は別のゴーレムに激しく激突して破壊され、やがてこの場にいたゴーレムは殆ど全て消え去ってしまった。
「よし……」
ゴーレムの中心部から、髪をオールバックにして眼鏡を外したマモルが現れ、辺りを注意深く見回す。
「どうやらゴーレムは全て片付いたようだな。後はお前だけだ」
そう言うとマモルは、カゲマルに視線を向けながらその場で身構えた。
「あはは」
対するカゲマルは不敵な笑みを浮かべ、一言呟いた。
「いいね、そう来なくっちゃ」
カゲマルもその場で構えの体制を取る。静寂に包まれる中、お互いはただひたすら相手を睨み続ける。
「はあっ!」
真っ先に動いたのはマモルだった。マモルはカゲマルに向かって勢いよく炎を飛ばした。
対するカゲマルは目にも留まらぬ速さで動き、なんとマモルの視界から姿を消した。
「消えた……!?」
マモルは慌てて周囲を見回す。気配どころか足音すら全く聞こえず、相手の動向を一切掴めない。
「こっちだよ」
「!?」
そんなマモルの後方から声が聞こえ、マモルは急いで振り返った。
「そらっ!」
「うっ!?」
カゲマルは右手をマモル目掛けて振り下ろした。マモルは咄嗟に両手で防ぐも、両腕から布が引き裂かれるような音がした。
「頑丈な学生服が……!」
マモルが着ていた学生服の袖は、何か鋭いもので切り裂かれたような痕跡が残っていた。
「僕の爪の前じゃ、どんな魔法服もただの布だよ」
そんなマモルの目の前には再びカゲマルの姿が。しかし、彼の姿は先ほどとは少し変わっていた。
「その姿は……」
「僕の力、ちょっとだけワイルドでしょ」
髪は茶色に染まり、瞳孔は大きく開かれ、両手から鋭い爪が生えていた。いつの間に靴を脱いだのか裸足になっている。
柔軟そうな体制で佇むカゲマルは、マモルの目の前に立ちはだかりながら一言告げる。
「マモルくん、簡単にくたばらないでよね」




