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40話 ルキの思惑

 ヴィオの敷地内にて。


「リトさん。とりあえず、薬やゴーレムを渡してきた彼らとの出会いについて簡単に話してもらえますか?」


「わ、分かりました……えっと……あれは昨日、試験が終わった時のことでした……」


 カイによって捕えられたリトは、謎の花束の男と出会った時のことを少しずつ話し始めた。

 

「花束の男から、埋もれた才能を開花させてあげると言われて……僕は大人しく彼について行きました」


「何だその誘い文句は……」


「怪しかったけど、あの時の僕は藁にもすがる思いで……たどり着いた先は見たことない空間で……そこで、花束の男から薬を貰ったんです」


「まさかそんな怪しいやつ飲んだのか!?」


「いや、薬の効果とか説明されたけど、その時は飲まなかった……怪しかったし、知らない人から貰った薬なんて、何があるか分からないし……」


「だよな……」


 驚くカイに対してリトはしっかり補足する。


「僕が躊躇っていると、花束の男は「だよね」とか言って、僕に手渡した薬を飲んで……そしたら……! 彼の持っていた花束が一瞬で大きくなって、化け物に……!」


「植物が化け物に? つまりその花束のヤツは植物を操るやつなのか?」


「そうだと思います……ここで、薬は本当に能力を強化するものだと分かって、僕も飲んで……そしたら全身から力が溢れ出して……」


 リトは再びポケットを探り、錠剤を幾つか取り出した。


「ついに最強になれたって思った僕は、その場でとにかく力を試しました。その間に花束の仲間もやってきて……地味なやつと、怖そうな奴……」


「さっき言ってた花束の仲間か」


「そう……で、ここで花束の男は「試しに気になるアイツと戦ってみたら?」って……カイとマモルの名前と、彼らがよく通る道を教えてくれました……」


「その花束のやつ俺達のこと知ってたのか!?」


「とんでもない話だな……」


 リトの話を一通り聞いたカイは驚き、マモルは眉間に皺を寄せる。


「恐らく俺達は、その花束男とは面識は一切ない。しかし相手には名前はおろか、まさか通学路まで知られていたとは……」


「オレ達になんか恨みでもあるのかな……そもそも花束のやつは、一体何が狙いなんだ……?」


「目的は分からんが、ソイツがリトを駆り立てたのは間違いないな。そして奴らは、あのゴーレムを連れて街に繰り出す計画も立てていると……」


「マズイじゃんか! あのゴーレムにはまともに攻撃が通らないのに! それを大勢引き連れて街に現れたら大変なことになる!」


「普通の攻撃なら通用しませんが、我々の力ならまだ攻撃が通ります」


 驚き慌てるカイにヴィオは冷静に言葉を返す。


「お2人が遭遇したのは、フェアリーゴーレムと呼ばれる高性能のゴーレムです。攻撃はおろか、魔法すらまともに効きません」


 ヴィオはフェアリーゴーレムの素となる宝石を手に話を続ける。


「しかし、高威力の能力をぶつければフェアリーゴーレムは消滅します」


「あのゴーレムは、ベテラン魔法使いの魔法より、能力使いの能力の方が有効なんだ」


 ヴィオの説明をフィオが軽く補足する。


「となると、オレ達がゴーレムと戦う時は常に全力を出し続けないといけないわけですね……」


「大丈夫です。全力でなくとも、技の精度を向上させればゴーレムに攻撃は通ります」


「えっ? 通るんですか?」


「能力による技の魔力密度を上げ、技術を向上させる……無駄なく力を扱えば、ゴーレムは呆気なく消滅するでしょう」


「なるほど……」


 ヴィオの説明を聞いたカイは深く頷く。


「フェアリーゴーレムの奇襲に備えて、今後の修行は技を徹底的に磨く必要があるということだな。よし、今から修行を始めるぞ」


「「はい!」」


 フィオによる唐突な修行宣言に、カイとマモルは否定せず全力で返事をする。


「相変わらず気持ちのいい奴らだ。と、いうわけで……リト、お前もウォーミングアップくらいには付き合ってくれるよな?」


「えっ? 僕……?」


 フィオに唐突に声をかけられたリトは驚き戸惑う。


「ウォーミングアップ、付き合ってくれるよな?」


「いや、僕は……」


「カイとマモルを襲えるくらいには元気だったんなら、付き合ってくれるよな?」


「…………はい」


 無表情ながらもどことなく威圧感溢れるフィオの誘いに、リトは呆気なく折れた。


「よし。カイ、マモル、コイツをウォーミングアップに付き合わせろ」


「分かりました! リト、大変だろうけど頑張ろうな!」


「あっ、あの……」


「大丈夫だ、何かトラブルが起きても俺達が何とかする」


「えと…………お、お手柔らかに…………」


「よし! じゃあまずは向こうで準備運動しよう!」


「はい……」


 逃げられないと悟ったリトは、カイとマモルの後をついてウォーミングアップを開始した。




 遠くで準備運動を開始した3人を横目に、ヴィオとフィオは防音魔法の範囲内で静かに会話を始めた。


「ヴィオ、そのゴーレム……」


「トラペゾ社のゴーレムで間違いありませんね」


「トラペゾか……随分と物騒な所と繋がってやがるな……」


「そしてリトさんの仰った花束の方は恐らく、ルキさんで間違いないでしょう」


「ルキ……あの幼かった坊ちゃんか」


 フィオはどこか懐かしそうにしながら呟く。


「なら、このゴーレムはルキが用意したものか?」


「違う気がします。彼の性格からして、何かあってもあの企業を頼るとは思えません。このゴーレムは別の経緯で入手したものか、もしくはトラペゾ社側の介入か……」


「だとしたらとんでもないな」


 ヴィオとフィオはいつになく真剣な面持ちで対話を続ける。


「そもそも……こんな高価なゴーレムをわざわざ使ってまで、アイツらは何をするつもりなんだ?」


「今はまだ分かりませんが、恐らく……ルキさんはリトさんを通して、これらの情報を流してきた可能性があります」


「あの薬やゴーレムのことを、リトを通して私達に伝えたということか……まあとりあえず、この情報を運んできたリトはシロだろうな」


 フィオは遠くを見つめ、カイとマモルに挟まれながら念入りに準備運動をするリトを見つめる。


「アイツはルキの思惑通りに私達の元まで運ばれ、ベラベラと情報を流しまくった。これでお役御免、といったところだろうな」


「リトさんも被害者でしょうね」


「可哀想にな。にしても、情報を私達に流すということは……私達を何かしらの計画に巻き込むつもりか?」


 相手の動向を予測したフィオは不機嫌そうに吐き捨てる。


「兎にも角にも、このままでは情報が足りませんね……フィオさん、彼らのことを頼みます。わたくしはこの薬を含め、色々と調べ物をしてきます」


「分かった。こっちでも色々と探ってみる」


「ありがとうございます。では……」


 ヴィオはフィオに一言礼を述べると、ホウキに乗ってその場から速やかに立ち去った。


 ヴィオが去った後。フィオはカイとマモルをじっと見つめ、独り言を呟いた。


「私達はともかく、あの2人まで巻き込みやがって……ルキのやつ、見つけたらただじゃおかねーからな」



数分後……



「フィオさん! リトが……!」


「ウォーミングアップでくたばりました」


「…………」


「少し身体を動かしただけでこのザマか」


 虫の息となった哀れなリトが、カイとマモルによってフィオの前に連れて来られた。


「この体たらくでカイとマモルに襲いかかったとは……過ぎた力は実に恐ろしいな」

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