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36話 カイの友人と

 能力使い試験を受けた次の日。


 放課後。今日カイは、マモルの他に別の同学年の友人を引き連れて帰路を歩いていた。


「いや〜! 久しぶりにこのメンツが揃ったな!」


 今日は部活動が無い日なので、普段は見かけないカイの友人2名が帰路のお供に加わっていた。


「いつもは部活動があるから、帰りはバラバラになりがちだからね」


 全体的に丸みを帯びた髪型で丸眼鏡をかけた、どことなく鳥類を彷彿とさせるこの学生の名はジェイ・ストレイト。

 見た目通り真面目で、少し頑固な側面を持つ。


「なあなあ! 久しぶりに顔馴染みが揃ったんだからよぉ、折角だしどっか遊びに行こうぜ! 眼鏡の新入りも入ったわけだしな!」


 ガタイがよく、頭部にツノが生えた元気な学生はオオキ・ダイキ。

 楽観的な思考を持つ彼は、カイと同様に勉強が苦手である。


「何言ってんのダイキくん……テスト前の大事な勉強期間だよ、この期間中はしっかり勉強しないと」


「勉強だぁ〜!? 学生なら遊んでナンボだろ! ジェイ、俺達と青春しようぜ!」


「休みの日なら青春してあげるよ。でも今は勉強が最優先!」


 ダイキの遊びの誘いをジェイは頑として受け入れず、逆に勉強するよう促す。


「そうだ。これから4人で図書館に行かない? 一緒に勉強しようよ」


 ジェイは眼鏡を持ち上げ、その場にいる全員を勉強に誘った。


「わざわざ外に出かけて勉強だぁ〜!? 俺は今日だけは外に遊びに行くって決めてんだよ! なぁマモル、お前も遊びたいよな!?」


 対するダイキは勉強に猛反発。マモルを巻き込んで遊びに持ち込もうとする。

 ジェイはその様子に対して呆れ、ひとつため息を溢した。


「よりによって真面目なマモルくんに同意を求めるなんて……」


「その通りだ。俺は真面目だから、確実に真面目な方に傾くぞ」


 ジェイの言葉に、マモルは眼鏡の端を持ち上げながら同意する。


「だよね。じゃあ今から全員で図書館に……」


「……しかし、遊びに行きたい気持ちもよく分かる」


「えっ」


「おおっ!」


 マモルの発言にジェイは呆気に取られる。対するダイキは大喜びし、満面の笑顔でマモルの前に躍り出た。


「メガネ、俺達の気持ち分かってくれるか!」


「ああ。なので、ここは折衷案で行こう」


 マモルはその場にいる全員に視線を向け、ひとつの提案を口に出した。


「ここは間を取って書店に向かい、参考資料を見に行こう」


「裏切りやがったなメガネェ!」


 マモルの提案にダイキは全力で叫び散らす。


「間どころか完全に丸眼鏡寄りじゃねーか!」


「まあ待てよダイキ! マモルも何か策があるんだろ?」


 ダイキをカイが宥めつつ、それとなくマモルの策を伺う。


「その通りだ。書店には様々な本が並んでいる。漫画で歴史を解説している本もあるだろ」


「マモルくん、まさか……漫画で歴史を学ばせるつもり? 僕としてはあまりおすすめしないんだけど……」


「何事にも取っ掛かりは必要だ」


 マモルの策に苦言を呈するジェイに対し、マモルは冷静に反論する。


「漫画は分かりやすさを優先しているものが多い。しかし、大体の歴史の流れは理解できる」


「それはそうだけど……」


「そもそも、勉強が苦手になる理由は「内容が分からない」からだ。少しでも歴史への理解が深まれば、苦手意識は融和される筈だ」


「なるほど……一理あるね」


 マモルの説明にジェイは納得した様子だ。


「眼鏡がなんて言ってんのかよく分かんねーけど……とりあえず、歴史の漫画本を読んで歴史を勉強しろってことだよな?」


「そういうことだ」


「いいぜ! 漫画なら分かりやすいし、俺としては妥協点だな! 本のとこに行こうぜ!」


 ダイキも納得し、全員で書店へと向かうことになった。




 書店でマモルのオススメ漫画を購入したダイキは、近くの公園のベンチで早速漫画を開封していた。


「何ぃ!? まさか……ここに来て持病が……!? マジかよ……!」


「ダイキくん、声が大きいよ……」


 ダイキは歴史の偉人が主人公の漫画にすっかりハマり、周りの目も気にせず声を上げながら読み耽っていた。


「やはりか……」


 その様子を眺めていたマモルは満足そうに頷く。


「歴史を学ぶなら、戦国時代から学習させるのが1番……」


「ダイキのやつ、すっかりハマってるな〜! 流石はマモル! 勧めるのが上手いな!」


「フッ……」


 カイに褒められたマモルは、満更でもなさそうに笑みを溢す。


「すげぇ……! 昔の人ってこんなに賢かったのかよ……! 俺より頭いいじゃん!」


「……ダイキくん、昔の人になら勝てるとでも思ってたの?」


「現代の知識持ってるからな、昔の人間よりは有利だろ!」


「その現代の知識、過去の時代でどう活用するのさ……」


 ダイキの根拠のない自信にジェイは呆れる。


「ダイキ! 昔の人は賢いぞ!」


「カイも昔の人間の肩を持つのかよ。じゃあどこが賢いのか言ってみろよ」


「地球にでっかい城を沢山建ててる!」


「カイくんもカイくんでその認識はどうなの……」


 カイも歴史に曖昧な認識を持っており、ジェイは再びため息を溢す。しかし、満更でもなさそうに微笑む。


「……でも、歴史にここまで興味を持ってくれるのはいいことだね。これで少しは歴史に興味を持ってくれるといいけど……」


「いやぁ、それにしてもスゲェよ……! もっと戦国時代の合戦とか色々知りてぇ!」


「もし良ければ他のシリーズも貸すぞ?」


「いいのか眼鏡! ぜひ貸してくれ!」


 マモルの申し出にダイキは即座に食いつく。


「戦国時代はいいぞ。この星に生きる人類なら、戦国時代さえ覚えておけばどうにかなるからな」


「それもそれでどうなのマモルくん……」


「よっしゃ! 次はゲームショップ行こう! 戦国時代のゲーム買ってもっと歴史の勉強するんだ!」


「ダイキくん、ゲームは流石にやめておいた方が……いや、興味を持ってくれたらそれでいいのかな……」


「オレはいいと思う! ゲームなら楽しく学べるしな!」


「いや、そういう問題じゃなくて……はぁ、まあいいかそれで……」


 マモルとダイキの発言にジェイは振り回され、カイの発言で考えるのを諦めたようだ。



 楽しい放課後。しかし、そんな4人にそっと忍び寄る、不穏な影が1人。



「さて! そうと決まればゲームショップ行こーぜ!」


「ちょっといいかな?」


 立ち上がったダイキの前に、1人の少年が立ち塞がった。


「放課後に遊び回るなんて、随分と呑気だね……」


「は?」


 和気藹々とした4人の前に現れたのは、能力使い試験の日に駅前で出会った黒パーカーの男、リトだった。



「君達には選ばれた人間という自覚が無いのかな……?」


「お前は……」


「……あっ! 妙なこと言ってた人!」


 マモルとカイは何となく彼のことを覚えていたようだ。


「力を持つ者としての勤めがあるはずなのに……ようやくライバルと巡り会えたと思っていたけど、君にはガッカリだよ」


「は? 誰だお前」


 妙な物言いをする訪問者にダイキは不機嫌になり、黒パーカーに歩み寄りギロリと睨みつける。


 しかし黒パーカーは怯む様子はない。


「ああ、デカブツ君には興味ないよ」


「あ?」


「僕のお目当てはそこの2人さ。デカブツ君と丸眼鏡君は帰っていいよ。興味ないからね」


「はぁ〜?」


 黒パーカーの発言にダイキは更に不機嫌になる。


「何だお前、突然現れたと思ったら適当並べやがってよぉ……!」


「待て!」


 ダイキは目の前の黒パーカーの男に食って掛かろうとするも、それをマモルに止められた。


「止めんなよ眼鏡」


「ダイキ止まって! やめた方がいい!」


「コイツはまずい……!」


「は?」


 ダイキとジェイには見えてないようだが、黒パーカーの髪の色は全て明るい黄色に染まっていた。


 前は毛先ほどしか変色していなかったが、今は根本まで変色している。


(アイツは恐らく、前に会った時より確実に力が強くなっている……)


 マモルとカイは様子のおかしい黒パーカーを睨みつけ、身構えながらそれとなく距離を取る。


「2人とも逃げろ!」


「は? 眼鏡、お前……」


「マモルの言う通りだ! ダイキ! ジェイ! すぐにこの場から離れろ!」


「は!? どうしたんだよカイまで!」


 黒パーカーの様子がおかしいと察したカイは、ダイキとジェイに避難するよう大声で叫ぶ。


「何だよ急に……!」


「ダイキくん、カイの言う通りにしよう。あの人、なんかおかしいよ……」


「おいおい! ジェイお前、カイと眼鏡置いて逃げるのかよ!? 俺達だって魔法使いだろ!?」


「彼の言う通りだ、一般人は逃げた方がいいよ。戦いに巻き込まれたくなければ……ねっ!」


 黒パーカーはカイとマモルの発言に頷くと、片手からすぐさま光の球を生み出し、カイ目掛けて投げつけた。


「!?」


 光球は目にも留まらぬ速さで飛び、構えていたカイの腹に命中した。


「ぐうっ……!?」


 光球はカイに打撃を与え、後方へと吹き飛ばした。どうやら防御が完全に間に合わなかったらしい。


「アハハハハ! 見たか! 僕の真の力を!」


「急に何するんだよ!?」


 ダイキは大急ぎで駆け出し、遠くに吹き飛ばされたカイのそばに駆け寄る。


「おいカイ! 大丈夫か!?」


「へ、平気……防御が間に合わなくて、ちょっとだけ痛いけど……」


「ちょっとどころじゃねーだろ!?」


 驚き慌てるダイキ。対する黒パーカーは飛ばされたカイを気にも留めず、大笑いしながら言葉を放ち続ける。


「アハハハ……! お前とは対等……いや、もはやそれ以上になった! カイ、マモル、僕と勝負だ!」

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