37話 光の能力使い
放課後。夕暮れに染まる広めの公園の中で屯していたカイ達の前に、突如として黒パーカーの少年が姿を現した。
黒パーカーの少年は手のひらから光の球を生み出すと、すぐさまカイに投げつけて吹き飛ばした。
「アハハハ……! お前とは対等……いや、もはやそれ以上になった! カイ、マモル、僕と勝負だ!」
カイとマモルは黒パーカーに一方的に勝負を挑まれた。
「はぁ!? お前これ完全にダメなやつだろ! おいカイ! 大丈夫か!?」
カイの友人である、ツノの生えたガタイのいい同級生のダイキは、倒れたカイに声をかける。
「だ、大丈夫……ありがと」
カイは何とか起き上がり、黒パーカーの少年を睨みつける。
「何、するんだよ……!」
「ああ、自己紹介がまだだったね……僕はリト、よろしく」
黒パーカーことリトは、カイの言葉を無視して簡単な自己紹介を述べる。
「ほら、どんどんいくよ。カイ、簡単にくたばらないでよね……!」
黒パーカーのリトは、遠くにいるカイを見つめながら両手から光の球を生み出す。
「待て!」
そんな中、ダイキはカイの前で仁王立ちをして立ち塞がった。リトの次の攻撃を受け止めるつもりのようだ。
「ダイキ! やめとけ!」
「俺は頑丈だから平気だ! カイ、今のうちに逃げろ!」
「……デカブツ君、何してるのかな?」
目の前に立ちはだかったダイキに、リトは笑顔を消して話しかける。
「僕の目当てはカイとマモルだって言ったよね? 君……邪魔だよっ!」
「やばいっ!」
リトが両手の光球を投げつける寸前。カイは目の前に立ちはだかるダイキの足を全力で蹴りつけ、ダイキを転倒させた。
「おわっ!?」
カイはしゃがみ込み、ダイキが地面に転がったところで光球はダイキの頭上を瞬時に通り抜けた。
光球は奥にあった木に命中し、木をへし折り倒してしまった。
「げえっ! 何だアレ!?」
「デカブツ君、邪魔だよ。早く逃げたら?」
「だっ、誰が逃げるかっ!」
「ダイキ、頼む! 外に助けを呼びに行ってくれ!」
「何言ってんだカイ! 助けを呼びに行くのはお前だっ! 力がある俺が残るっ!」
「はぁ……面倒だなぁ……」
リトはひとつため息をつくと、ポケットから綺麗な宝石を取り出し、その辺に投げつけた。
地面に落ちた宝石は目の前でぐんぐんと成長していき、やがて奇妙な人型に姿を変えた。
「うわっ!? 何だよコレ!?」
「ゴーレムか……!?」
小さな宝石から、見た目が完全に人に近い奇妙なゴーレムが出来上がっていく。
ゴーレムはマモルを囲い込み、カイと離れ離れになってしまった。
「このゴーレム、かなり機敏に動くな……」
「マモル! 世界が変だ!」
「何?」
カイの発言に反応し、マモルは辺りを見回す。
「……異空間か」
先程まで夕暮れに染まっていた筈の公園は、今は観世に暗闇の中に取り込まれていた。
全体的に不気味な薄暗さで、街灯は頼りない光を放出している。
「マモル! ジェイとダイキがいない!」
「まさかあの2人、異空間から弾かれたのか……?」
「その通り。この異空間は能力使いしか入れない聖域……これで邪魔者無しで戦える」
リトは改めてカイと対立し、手元から光球を幾つも生み出す。
「待って! 俺、リトに何かしたか!?」
「ただ戦うだけでいいんだよ。余計なことは考えなくていい」
カイは大慌てでリトに事情を聞くも、リトは曖昧な答えを返すだけ。
「まともな話し合いは無理そうだ。なら、ここは全力で止めるのみっ!」
マモルは全身に魔力を漲らせ、立ちはだかるゴーレムを目掛けで凄まじい炎を投げ飛ばした。
「おおっ、すごい力だ……」
マモルの炎はゴーレムを飲み込む。対するリトはマモルの力を間近で眺め、笑顔を浮かべる。
「素晴らしいけど……あのゴーレムには効かないよ」
「何?」
マモルの放った炎は何者かの手により消し飛び、炎の中から無傷のゴーレムが姿を現した。
「!」
無傷のゴーレムは即座にマモルに駆け寄り、拳を放った。
「ぐうっ!?」
マモルは防御の構えを取るも、力の強いゴーレムによりその場から吹き飛ばされた。
「まさか君、ゴーレムすら倒せないの? マモル、実に残念だよ……」
「くっ……!」
「マモル!」
カイは倒れたマモルに駆け寄ろうとする。しかし、それをリトの光球により妨害された。
「うわっ!?」
足元が抉られ、カイは即座に停止する。光球は地面を深く抉る威力を持つらしい、中々の威力だ。
「君の相手はこの僕だよ。よそ見してる場合かな?」
「なんで……! なんでこんなことするんだよ!?」
「カイ、とりあえず戦いなよ。何もしない相手を一方的に痛めつける趣味は僕にはないからね」
リトは両手の光球をカイ目掛けて放っていく。
「うわっ!?」
カイは慌ててその場から駆け出し、すぐさま遊具の遮蔽物に隠れる。
「隠れたって無駄だよ!」
リトは即座に構え、両手から凄まじい光線を遊具目掛けて放った。
「!」
両手を構えた時点で嫌な予感を察したカイは全力で遊具から飛び出した。
「危なっ……!」
光線に晒された遊具はすぐさま破壊され、跡形も残らず消え去った。
一方マモルも、ゴーレムを相手に苦戦していた。
「無駄に硬い……!」
ゴーレムに炎をぶつけるも、相手には全く効果が無い。
とにかくゴーレムの群れに囲まれないよう立ち回るが、人並みの速度で駆けて攻撃を仕掛けてくるゴーレムに苦戦している様子だ。
そんなカイ達を、遠くの建物の上から眺める若者が1人。
「あの2人、大変そうだね」
オレンジの毛先を持つ黄髪のキザな見た目の若者ルキ。花束を背負った彼は、建物の上からカイとリトの戦いを見守る。
「これで苦戦されても困るんだけどね。2人にはとことん強くなってもらわないと」
「こんな調子で、あの日に間に合うのかな?」
そんな彼の隣には、かつてカイと資格の本を取り合っていた黒髪の男性カゲマルが。
「間に合わせるだけさ。カゲマル、お前にもしっかり働いてもらうからね」
「分かってるよ〜。にしてもあのリトくん、僕らの薬を分けてあげてから随分と偉そうになったね」
「薬込みでようやくこの程度か……」
2人は不穏なワードを織り交ぜながら話をする。
「アイツ、力に溺れてまともな戦い方が出来ていないね。まあそもそも何の期待もしてないけど」
「え〜? ルキってば、リトくんのこと最初から見限ってたってこと? ひどいね〜」
「アイツはあの2人をつついて、やる気を出させるだけの存在だよ。興味はないかな」
花束を背負ったルキは、カイとリトを見つめながら妙な一言を呟いた。
「とりあえずアイツには、きちんと役目を果たしてもらうからね」




