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34話 能力使い達

 無事に『能力使いの資格』の本を購入し、能力使いの勉強を始めてから数日が経過した。


「えーと……」


 休日の昼間。サイレントノルの大きな駅前で佇むカイは、資格の本を片手に頭を悩ませていた。

 そんなカイの隣に並んで立つ眼鏡で真面目姿のマモルは、本を覗き込みながらカイに言葉を掛けた。


「カイ、資格の筆記試験は大丈夫そうか?」


「大丈夫なはず……多分」


「しっかりしてくれ。筆記はそこまで難しくないとはいえ、筆記で落ちたらそれまでだ」


「でもさぁ……まさか資格を受けると決めた数日後に試験があるとか、いくらなんでもあんまりだって……」


「まあ、それはそうだな……」


 今日は能力使いの試験当日。本によれば筆記試験はそこまで難しくはないようだが、実技はかなり厳しいらしい。


 しかしカイとマモルはヴィオにより徹底的に鍛え上げられているため、きっと試験は受かるだろうとヴィオから太鼓判を押された。


 とりあえず筆記だけは絶対に落とさないようにする為に、2人は現実と夢の中で徹底的に資格の勉強を行ったのだった。


「でもさぁ、勉強初めてすぐ試験はやっぱり厳しくないか? 厳しい修行をしながらの勉強だったし、頭に知識入れるのにかなり手間取ってるんだけど……」


「気持ちは分かる。だが、お前はただ勉強そのものが苦手なだけだろ。修行の合間に徹底的に勉強していたのに、何故そこまで弱腰なんだ」


「マモルってば厳しい……」


 カイの言い訳に対し、マモルはばっさり切り捨てる。


「あー、頭使い過ぎて頭痛い……オレ、近くのコンビニでジュース買ってくる!」


「俺も行こう」


 カイとマモルはその場から立ち上がり、すぐさま近くのコンビニに駆け込んだ。


「何飲もっかな〜?」


 カイは飲み物の並ぶ棚の前まで移動し、楽しそうにジュースを眺める。


「やっぱいつものやつに……あれ?」


 しかし、途中で何かに気付いたのかカイはその場で動きを止めた。


「なんか一部の飲み物の値段上がってる?」


「知らないのか?」


 カイの疑問にマモルがすぐさま答える。


「他星に向かう為の転移陣がトラブル起こして使用不可能らしい」


「えっ!?」


「ありとあらゆる物の移動が困難になっているんだ。近くの星々なら問題ないらしいが、遠く離れた他所の星の物は入荷が困難で、軒並み値上がりしてるそうだ」


「マジ!?」


「ニュースで話題だぞ、知らんのか」


「えーと……オレん家のテレビ、楽しいニュースしか流れないから……」


「何だそのご機嫌なテレビは」


 なんやかんやありつつも、2人はジュースを購入。

 2人は近くの空いていたベンチに座り、ジュース片手に勉強を再開。


「あっ、能力使いがいる!」


「勉強再開してからまだ数秒だぞ。せめて数十分勉強してからよそ見しろ」


「よそ見は許してくれるんだな」


 ふと本から視線を逸らしたカイは、遠くにいた銀髪の女子学生を発見した。

 銀色に輝く不思議な髪色は、紛れもなく能力使いの証だ。


「向こうにもオレンジ色の奴がいる!」


「まあ確かに、こんなに沢山見れるのはレアだな。能力使いは珍しいから、普通に生活してたら滅多に遭遇できん」


「もっと能力使いはいないのかな? ちょっと気晴らしも兼ねて辺りを練り開いてみようぜ!」


「おい、勉強しろ」


 楽しそうにはしゃぐカイに呆れるマモル。



 しかしそんな2人に、魔力片手に静かに近付いてくる謎の人影が1人。



「……俺達に何か用か?」


 マモルはすぐさま人影の放つ魔力に気付き、寄ってきた人影に声を掛けた。


「へぇ、僕にすぐ気付くなんてね……」


 カイとマモルに寄ってきたのは、黒パーカーを身につけた少年だった。

 見た目からしてカイと同学年くらいである彼は、どこか近寄り難い妙なオーラを醸し出していた。


「……やはり、君もこっち側の人間か」


「ああ、お前そういうタイプか」


 相手の妙な言葉遣いにマモルはすぐに何かを察する。


「こっち側?」


 しかしカイはピンと来てない様子だ。


「君は随分と呑気だね……こういうことだよ」


 頭を悩ませるカイに対し、青年はわざとらしくフードを外し、そこそこ長い髪をカイとマモルに見せつける。


「あっ!」


「そう、僕も君達と同じさ」


 髪の先端は白に近い黄色。普通とは違う不思議な髪色を持つ彼もどうやら、カイ達と同様に能力使いらしい。


「まあ、見ての通りそこまで力は無い。力は君達よりかは劣るかもしれないけど……フフフ……」


「なっ、何だ!? オレ、何か変なとこあるか!?」


「何でもないよ。それより、赤髪の君」


「何だ」


「……君とはいい勝負ができそうだ」


「……?」


「じゃあね……」


 黒パーカーの彼は一方的に台詞を述べ、満足したのか2人の前から立ち去った。


「あいつ、何だったんだ……?」


「まあ、人には色々あるんだ。カイ、気にするな」


「それよりも、いい勝負できるとか言ってたよな……でも、試験って確か個別で受けるんだよな? 漫画みたいに派手なことしないって……」


「その通りだ。だからアイツと戦うことはない、安心しろ」


 カイとマモルは黒パーカーから視線を外し、試験勉強を再開した。




「フフフ……」


 黒パーカーの彼は、不気味な笑みを浮かべながら駅の周辺を歩く。


「さて、他にめぼしい相手はいるかな……?」


 そんな彼はキョロキョロと辺りを見回し、新たな能力使いを発見した。


「不思議な髪色……彼、すごく興味深いね」


 髪の先端がオレンジ色をした黄髪の若者。黒パーカーの男はすぐさま彼をターゲットにし、魔力を片手に込めながら若者に静かに近付いた。


「ん?」


 しかし若者はすぐさま気付き、黒パーカーの彼に視線を向けた。


「キミ、オレに何か用?」


「フ……君もこっち側か……」


 声を掛けてきた若者に対し、黒パーカーは先程マモルにも発した台詞を返す。


「こっち側って、まさか能力使いのこと? キミ、なんか回りくどいね」


「……」


 若者の発した言葉に、黒パーカーは言葉を詰まらせる。


「そもそもさ、今日は能力使いの試験の日なんだから、この周辺に能力使いが集まるに決まってるでしょ」


「……ライバルになりそうな相手を探していたんだ」


 若者の言葉にまともな返事をせず、黒パーカーは一方的に言葉を放つ。


「1人目は赤髪の彼、そして2人目は……目の前の君だよ」


「オレ? まさかオレ、キミのライバル候補に入っちゃった感じ?」


「当然さ。君は僕がわざと出した気配にすぐさま気付いた。これほど素晴らしい逸材は存在しないよ」


「いや、そんなバレバレの気配出しといてその物言いは厳しいでしょ。魔力以前に気配ダダ漏れじゃん」


「……!」


 若者の発言に、黒パーカーの彼は分かりやすく動揺した。


 そんな彼に、若者はトドメの言葉を言い放った。



「それに、キミにオレのライバルは務まらないよ。ゴメンね」



「はぁ!?」


 若者にライバルを拒否され、黒パーカーは感情を露わにして叫んだ。


「聞こえなかった? キミにはオレのライバルは……」


「光!」


「ん?」


「この世で何よりも強いのは能力の性能だ! 僕の光は何よりも早い! だから相手が能力を発動する前にお前なんか一撃で……!」


 黒パーカーは見るからに激昂しており、若者に対して激しく捲し立てる。若者は唐突に手を伸ばし、黒パーカーの腕を強く掴んだ。


「能力を発動する前に……何だって?」


「……!?」


 黒パーカーはすぐに手を振り解こうとするも、若者の手は微動だにしない。

 まるで頑丈な何かに固定されたかのように、ガッチリ掴まれ離れない。


「……キミには無理だよ。こうやって簡単に手を掴まれてるようじゃね」


 若者は手を離し、手のひらをわざとらしく軽く振る。


「もう用はないよね? じゃあ、オレはこれで……」


「……能力……」


 若者はすぐさま退散しようとするも、黒パーカーはまだまだ止まらない。


「ぼっ、僕の能力は……! 僕の能力は誰よりも優れている! 体術は劣るけど、能力なら……!」


「残念だけど能力じゃないよ」


 若者は黒パーカーに指を突き出しながら軽く述べる。


「なんていうか……信念ってやつ? キミにはそれを感じられないんだよね」


「信念……?」


「そーそー。見てよあの白髪の子」


 若者は突き出した指を黒パーカーから逸らし、カイに向けた。


「アイツ……」


「力強さ? っていうの? なんかそーいうのをひしひしと感じるんだよね。やっぱライバルにするならあーいう奴でしょ」


「はぁ!? あんな能天気な奴が!?」


 能天気の下っ端と評価していたカイにライバルの座を取られ、黒パーカーは激しく取り乱した。


「アイツは僕に気付かなかった! 言葉すら碌に理解しないバカな奴が、僕より上だって言うのか!?」


「分かんないかぁ〜。それが分からないなら、キミはその程度だったってことで。バイビー」


 若者は激怒する黒パーカーから目を逸らすと、黒パーカーに軽く手を振りながらその場から立ち去った。


「アイツ……!」


 黒パーカーは激しい感情を剥き出しにしてカイを睨みつけた。


「あの能天気な奴に、僕が劣るわけがない……! 許さないぞ、白頭……!」

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