32話 いざゲーセン
カイ御一行はホウキで空を飛び、ゲームセンター、通称ゲーセンへとやって来た。
「きゃー! なんて楽しそうな気配!」
ホウキから降りたヴィオは、目の前に鎮座する巨大なゲームセンターを前にして何度も飛び跳ね大喜びする。
「外観だけでもワクワクするのは分かります。ですが、中を見たらもっとテンション上がりますよ!」
「そんな……! わたくし、有頂天になり過ぎて倒れてしまわないよう注意しなくては……!」
「大丈夫ですよ、俺達より強いヴィオさんなら耐えられますから」
「心の問題です! わたくしなら隕石や魔獣くらいどうってことありませんが……」
「ヴィオさん隕石平気なんですね」
「ある程度は……しかし、ゲームセンターは……! ゲームセンターの都会指数次第では、流石のわたくしでもどうなるか……!」
「都会指数?」
ヴィオの放った謎の言葉にカイは頭を傾げる。
「……そういうことですか。ヴィオさんがやたらコンビニ飯にこだわる理由がなんとなく分かりました」
しかしマモルは言葉の意味を理解できたらしい。
「ヴィオさん。貴方はコンビニ飯を食べることで、都会指数とかいう謎の数字を上げたつもりになってたんですね」
「えっ? それって……都会指数はつまり、都会の適応度みたいなやつ……ってことですか?」
「ハルカワさん、シロヤマさん、その通りです……!」
「そうだったんですか!?」
ヴィオがコンビニにこだわる理由が判明したところで、3人はようやく目の前のゲームセンターに入店した。
「うわぁ……!」
音の洪水と共に出迎えられたヴィオは、ピカピカ光るカラフルな機械の群れを前に言葉を失っている。
「この地域で特に大きなゲームセンターです。ヴィオさん好みのゲームが見つかるといいのですが……」
「絶対に見つかる! オレが保証する!」
「お前はゲーセンの何なんだ」
カイとマモルが話をする中、未だに無言のまま感動していたヴィオは、とある機械に目を奪われる。
「……あっ! 何やら光る物が沢山あります!」
ヴィオが小走りで向かった先にあったのはクレーンゲームの台。
中には宝石をデフォルメしたようなキャラクターの、カラフルで小さなぬいぐるみが沢山積まれていた。
「小さなぬいぐるみが山のように積み上げられています!」
「クレーンゲームです! あのアームを操作してぬいぐるみを掴んで、あの穴に落とせたらぬいぐるみをゲットできますよ!」
「これが前々から話で聞いていた、遊びながらぬいぐるみをゲットできる機械……! これは是非ともやらなくては!」
「1回100マルです!」
「この日のために硬貨は沢山用意してきました! いざ!」
ヴィオは懐からがま口財布を取り出すと、クレーンゲームの硬貨投入口に硬貨を1枚入れた。
〜♪
台から軽快な音が鳴り、残り時間が表示される。
「この棒でクレーンを操縦するんです! 右側に1回、前へ1回動かせます!」
「おぉ! なるほど……!」
カイの説明を聞いたヴィオは、レバーを的確に倒してクレーンを操縦する。
「おぉ! 中々いい感じですよ! 初めてとは思えないです!」
「よし!」
ぬいぐるみの真上まで到達したクレーンは、ツメを開いてゆっくり降下していく。
「おっ! これは……!」
「行け! 行け!」
クレーンはぬいぐるみを的確にキャッチして上昇。クレーンは穴の真下までぬいぐるみを運ぶと、ツメを開いてぬいぐるみを落とした。
「きゃー! やったー!」
取り出し口から青色のダイヤモンド型の可愛らしいぬいぐるみが取り出される。
「初めて獲得した獲物です!」
「初めての操縦で、ここまで上手にクレーンを動かせる人は中々いませんよ! すごいです! クレーンマスターじゃないですか!」
「クレーンの位置はかなり的確でした。見事な腕前です」
「やったー! えへへ……」
カイとマモルに褒められ、ヴィオは左手を後頭部に回して嬉しそうに笑う。
「よし! この調子で他のぬいぐるみもゲットしていきますよ!」
「景品はぬいぐるみ以外もありますよ〜!」
この後、ヴィオは気になるクレーンゲームを発見しては硬貨を投入して遊んだ。
気になるぬいぐるみを硬貨数枚で獲得し、お菓子を総取りするまでは順調だった。
しかしヴィオは、巨大なぬいぐるみの台を遊んだところで初めて理不尽を体験した。
「あれっ!? しっかり掴んだはずなのに……!」
「あーこれは……」
「アームがだいぶ弱いようですね」
「アームが弱い……!?」
マモルの説明にヴィオは戦慄する。
「カイ、これはそういうことか?」
「あーえっと……まあ……」
「あのゲームセンターに通い慣れているシロヤマさんが口ごもるとは……まさかこれは!? 高難易度のクレーンゲームということですか……!?」
「いや、そういうわけでは……」
「いいでしょう!」
説明しづらそうにするカイに対し、ヴィオは1人で燃え上がる。
「クレーンゲームが大得意なわたくしが! この高難易度クレーンゲームを攻略して見せましょう!」
(もうクレーンゲームが得意分野になってる……)
カイとマモルが見守る中、ヴィオは硬貨を投入してはクレーンを操作してぬいぐるみを捕まえる。
的確なキャッチによりぬいぐるみは順調に穴まで進んでいき、硬貨を約15枚ほど投入したところでついにぬいぐるみは穴に落下した。
「やったー! ついに高難易度のクレーンゲームを攻略しました!」
「やりましたねヴィオさん!」
「おめでとうございます」
ヴィオは巨大なぬいぐるみを意気揚々と掲げ、カイとマモルはヴィオを祝福した。
「ゲーセン最高です!」
ヴィオは嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめ、ふと妙なことを口走る。
「家にも置いてみようかな……」
「えっ?」
「さて、他にはどんなゲームがあるのでしょうか!」
ヴィオは巨大なぬいぐるみを懐の魔法袋に収納しつつ、辺りをキョロキョロと見回す。
「折角なら全員でできるゲームやりましょうか!」
この後、ヴィオは様々なゲームにチャレンジした。
「これはガンシューティングです! この銃で標的を撃ちまくるゲームですよ!」
「やってみます!」
ヴィオはすぐさま食いつき、1回遊んでみるも……
「おぉ〜こんな感じですか〜」
「凄っ!」
「2丁拳銃スタイルで、しかもノーコンティニューでクリアとは……」
ヴィオの凄まじい技術力により、ガンシューティングは見事クリア。
「中々楽しいゲームでした! ……おや? あれはもしや、レーシングゲームですか?」
「そうです! 折角ですし全員で対戦しましょう!」
「いいですね! 負けませんよ!」
全員で対戦と聞き、ヴィオは意気揚々とレーシングゲームの筐体に駆け寄った。
ちょうど3人分の空きがあったため、3人は仲良く並んでゲームを開始。しかし……
「あ、あれ……? なんか景色が……」
「ヴィオさんそれ逆走してます!」
「そのまま進むと崖から落ち……遅かったか」
レーシングゲームは不得意だったのか、カイが1位、マモルが2位を取る中、ヴィオは最下位に終わった。
「むぅ……! いつかリベンジさせてください……!」
「いいですよ! 次も負けませんからね!」
「家で徹底的に修行してきます……!」
「家……?」
随所で妙なことを口走るヴィオに疑問を抱きつつも、ヴィオのゲーム巡りは続いた。
「あっ! 可愛らしいゲームがあります!」
「ポコポコマジックです! 音楽を奏でるゲームで、皆んなでわいわい遊べるのでオススメですよ!」
「全員で遊べるのですか?」
「はい! それぞれで担当するボタンを決めれば、難しい曲も楽しく遊べると思います!」
「楽しそうです! 是非とも皆さんで遊んでみたいです!」
「いいですよ!」
カラフルで楽しそうなゲームに飛びついたヴィオ。ゲームはカイに操作してもらい、様々な曲を遊んでいく。
「曲ひとつひとつにイラストが付いてます! すごいですね!」
「カイ、そのイラストに描かれているおじさんには何か設定はあるのか?」
「この人は確か……職業はスパイか始末屋らしいよ」
「なんか不穏な選択肢だな……なんでこんな可愛らしい世界観にそんな奴がいるんだ……?」
「もっとファンタジーなキャラは沢山いるよ! 選んだのが偶然殺伐としてただけで……あ、そろそろ時間切れだ! どれか曲選ばないと!」
「ではその曲にします! とても可愛らしい子がいるから、きっと可愛い曲です!」
「カイ、その子はどんな子なんだ」
「この子は始末屋だよ」
「この世界始末屋が2人もいるのか」
音ゲーも3人でワイワイ遊び、ヴィオは大満足でゲームを終えた。
「すごく楽しかったです! ポコマジ、名前だけでも是非とも覚えて帰らなくては!」
音ゲーも楽しかったらしく、上機嫌で先程遊んだ曲を口ずさんでいた。
しかしヴィオは、ここでもやはり気になる一言を呟いた。
「……音ゲーも是非とも検討すべきですね」
「……!?」
しばらくして……
「楽しかったです!」
大きなぬいぐるみを抱えながらゲーセンを後にしたヴィオは、獲得したぬいぐるみ達を抱きしめながら満足そうに言い放った。
「ヴィオさんが楽しそうで良かったです!」
「俺達もヴィオさんのおこぼれにあやかって色々楽しめました。ありがとうございます」
「どういたしまして! それにしても……お2人はわたくしの奢りを全然受け取ってくれませんでしたね」
「いや、さすがに悪いですよ……」
「でもせめてゲーセンを遊ぶためのお金として5万受け取ってくれても良かったのでは……?」
「流石に受け取れません!」
「いくらヴィオさんでもそれだけは……」
ヴィオから提示された金額にカイとマモルはすぐさま首を横に振る。
「ヴィオさんは師匠としてオレ達を鍛えてくれてるのに! その上でお金までもらうなんて!」
「ですが……その修行があるせいで、お金を得ようにもアルバイトするお時間もないですよね?」
「いや、調整すればバイトもできますよ!」
「しかし、わたくしとの遊びのためにお金を使わせるのは……」
カイの言葉にヴィオは困り、頭を傾けて何やら考え事をする。
「……そうだ! わたくしにいい考えがあります!」
やがて何か思いついたのか、ヴィオは上機嫌でカイとマモルにひとつ提案をした。
「能力使いの資格を取得しましょう!」
「能力使いの資格?」
「はい! 能力使いの資格を所持しているとなんと、お金が貰えるんですよ!」




