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31話 お出掛け再開【表紙・挿絵あり】

挿絵(By みてみん)


 ゼウシリーア。電化製品が有名な星であり、他の星と比べて比較的平和な星でもある。


 ヒノモトは特に治安が良く、夜も町を出歩けるほど平和だ。




 今は夜。魔法学園に通う魔法使い見習いのシロヤマ・カイは、友達との待ち合わせの為に1人で公園のベンチに座っていた。


 心地よい風が流れ、彼の白い髪と『夜間散歩』と記載された腕章が揺れる。


「ふんふーん」


 彼はイヤホンを繋いだ音楽プレイヤーで音楽を再生しており、鼻歌を交えつつノリノリで揺れている。


「ふふふーん……ん?」


 そんなノリに乗ったカイの前に、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた不良数人が現れた。


「おい、そこのスカジャン」


「1人で随分と楽しそうにしてんな」


 カイを囲んだ不良達は、カイに向かって言葉を飛ばす。


「おっ、こんばんは! 誰だ? もしかして前に会ったことある?」


「初対面に決まってんだろ。お前、俺達のこと舐めてんな?」


「どうやら痛い目見てぇようだな? あ?」


「まさかオレと喧嘩する気か?」


 虫の居所が悪そうな不良に囲まれたカイは、特に物怖じせずに不良と会話をする。


「オレと戦うのだけはやめといた方がいいと思うけどな」


「お前がどう思おうが、俺達の知ったこっちゃない。どちらにせよお前は、俺達の縄張りに入ったからちょっとお仕置きしねえといけねーんだわ」


「えー? 公園は皆んなのものだろ?」


「うるせぇ! とことん舐め腐りやがって!」


 カイの飄々とした物言いに不良は激怒。魔力を込めた拳をカイ目掛けて放った。


 そこそこ素早いパンチは、素人なら避けるのに苦労するだろう。しかし……


「よっ!」


 カイは飛んできた拳を余裕でキャッチ。


「は……!?」


「ほら、返す!」


 カイは掴んだ拳を軽く投げ返した。拳を返された不良は目を丸くして呆気に取られる。


「俺の拳を簡単に受け止めやがった……!?」


 明らかに素人ではないカイの拳捌きに驚く不良。


「な、なあ……」


 そんな中。不良の1人は何かに気付いたのか途端に震えだし、とある言葉を口にする。


「コイツもしかして、スノーマンじゃね……?」


「スノーマン……って?」


「知ってるだろ!? 雪だるまのスカジャンを着た氷の能力者! 悪い奴には容赦なく攻撃することで有名な……!」


「いや、確かにコイツはスカジャンだけど……」


「オレのこと知ってるのか!」


 不良の説明にカイはすぐさま反応する。


「なあ、オオガシラ番長は元気か?」


「はあ!? お前、あのキメラ連合の頭のオオガシラ番長と知り合い……!?」


「間違いない! コイツ……いや、この方はシロヤマ・カイさんだ! オオガシラ番長に認められた奴で、不良の取り締まりを許可されたとんでもない能力使い!」


「能力使い!?」


「マジかよ!?」


「下手に刺激したら凍らされるぞ!」


 カイの正体がスノーマンだと気付いた不良達はすぐさまカイから距離を取る。対するカイは笑顔で不良達に接する。


「大丈夫! 悪いことしなければ凍らせないから!」


 カイは笑顔でそう言うと、右手に軽く力を込めた。


「ほっ!」


 一瞬でカイの手元から氷の結晶が生み出された。


「こ、これって……」


「結晶! 綺麗だろ? ほいっ」


 生み出された結晶にビビる不良達を前に笑顔を向けたカイは、手に持っていた綺麗な結晶を軽く放り投げた。


 投げられた氷は山なりに飛んでいき、不良の頭上を飛び越え、やがて誰もいない地面に落下して破裂。



 派手な音を立てて破裂した結晶は巨大な氷の結晶へと変化した。


 

「は……?」


「マ、マジ……!?」


 後方から存在感と冷気を放つ結晶に、不良達は軒並み戦慄する。


「もし変なことするなら、この結晶をお前達に投げつけるからな!」


「ほ、本物だ……!」


「ヤベェ! 逃げろ!」


 それを見た不良達は顔を青くして震え上がり、やがてカイを背にして逃げ出した。


「悪いことはするなよー!」


 カイは逃げゆく不良の背中に声を飛ばし、改めてベンチに座った。


「カイ」


 そんなカイに新たな人影が駆け寄り、一言声をかけた。


 真っ赤な髪をオールバックにした、革ジャン姿の魔法学生。彼もカイ同様『夜間散歩』と記載された腕章を腕に着けていた。


「あっ! マモル!」


「公園に見慣れないオブジェがあるな」


 マモルと呼ばれた革ジャンの男は、園内にある巨大な結晶に目を向ける。


「あ、消すの忘れてた!」


「俺が消そう」


 カイは慌てて立ち上がるも、それをマモルが制して止める。


「はあっ!」


 マモルは片手から炎を生み出すと、氷の結晶に向けて放った。

 炎は氷にぶつかると、氷に含まれる多量の魔力を燃料に一瞬だけ激しく燃え上がり、あっという間に氷を消し飛ばしてしまった。


「これで綺麗になったな」


「マモル、ありがとう!」


 彼の名はハルカワ・マモル。カイの友人であり、炎の能力使いでもある。



「カイ、随分と長い間待たせたみたいだな。申し訳ない」


「オレが早く来過ぎただけだから大丈夫! それより! 早く待ち合わせ場所に行こう!」


「元気いっぱいだな。ああ、行こうか」


「ホウキ出すから待ってて!」


 そう、カイがしていたのは待ち合わせの待ち合わせ。

 マモルと合流したカイは、次の待ち合わせ場所へと向かう為に鞄からホウキを出した。


「よし、乗って大丈夫だ!」


「乗ったぞ、確認を頼む」


「分かった! ……って、後部座席に乗ってないじゃん!」


「フフ……どこで俺の不在に気付くか見ものだな」


「もう気付いたよ!」


 そんなやり取りをしつつ、マモルはカイのホウキにしっかり乗り込んだ。


「よし……出発!」


 カイはホウキを宙に浮かべると、掛け声と共にホウキを発進させた。



 カイが辿り着いた先は自然公園。カイが到着してみれば、公園のテーブルにお目当ての人物が座っているのが見えた。


 どことなく貴族を彷彿とさせる衣装の上にパーカーを身につけた、幼い見た目をした人物。


「シロヤマさん、ハルカワさん、こんばんは!」


 彼の名はヴィオリシア・グランドル。


 通称はヴィオ。宝石の能力者であり、かつて数多の星を巡ってはその類稀なる力により救ってきた大英雄である。

 今はゼウシリーアに隠居し、カイとマモルから現代のアレコレを学んでいる最中だ。


「ヴィオさんこんばんは!」


「こんばんは。いい夜ですね」


「はい! 絶好のホウキ日和です!」


 ヴィオはカイとマモルに駆け寄り、嬉しそうに話をする。


「お2人とも聞いてください! 本日は晩御飯にコンビニおにぎりを食べました!」


「コンビニで晩御飯を購入して食べたんですか! 順調に現代に馴染んでますね!」


「はい! もうすっかり現代の顔です!」


 ヴィオはカイとマモルを見上げて自信満々に答える。


「とはいえ、コンビニご飯ばかりでは栄養が偏りそうなので、毎日コンビニご飯は避けた方が良いですよ」


「フィオさんにも言われました! なので今は時折、コンビニご飯を再現した食事を家で作ることで妥協してます!」


「家でコンビニのご飯を……?」


「そこまでしてまで現代を摂取する必要はあるんですか?」


「1日でも早くシティボーイになりたくて……」


 ヴィオは照れながら呟く。


「ヴィオさん、そもそもコンビニのご飯だけが現代の食事ってわけではないですよ。そこまで固着せずとも、別で現代を摂取する方法はいくらでもあります」


「分かりました!」


 マモルの説明を真面目に聞き、ヴィオは元気よく返事をした。



「さてと……そろそろ例の目的地へと向かうとしましょうか!」


 ヴィオは両手を合わせて話を切り出す。


「本日、我々が向かうのは……!」


「ゲーセンだー!」


「まるでゲーセンに到着したかのような熱量だな。カイ、ここはまだゲーセンじゃないぞ」


 ヴィオの言葉にカイはすぐさま反応し、マモルは半ば呆れながらカイを見つめる。


「本来はデパートに向かう予定でしたが、フィオさん曰く「デパートはまだ早い」とのことなので……」


「基準が分からないですね」


「でしょう? わたくしとしましてはすぐにでもデパートに向かいたいのですが……」


「楽しみは後で取っておくものですよ!」


 カイはヴィオにそう言いながらホウキに乗り込んだ。


「さあヴィオさん! すぐにゲーセンに行きましょう!」


「はい!」


「カイ、そう急かすな。ゲーセンは何処にも行かないから安心しろ」


 カイをはじめとした一同はその場でホウキに乗ると、ゲームセンターを目指して空を飛んだのだった。




 一方、カイに一方的に喧嘩を売ったものの返り討ちに逢った不良達は……


「も、もう大丈夫だよな……?」


「はぁ、まさかスノーマンと遭遇するとは……」


 全力で公園から離れ、人気のない河川敷へと移動した不良達。


「あーくそっ! 誰かブン殴りてぇ……!」


「もうやめといた方がいいって! もし番長にあのことチクられたら俺達終わるぞ!」


「最近やたら周りの目が厳しいからなぁ……やっぱ、今は大人しくしといた方がいいっしょ」


「でもよぉ…………ん?」


「どした?」


「あれ見ろよ」


 1人が遠くを指差し、不良達は一斉に指し示した方を向いた。


 そこには、大きな花束を背負った、どこか都会人らしさ漂う男の姿があった。


挿絵(By みてみん)


 右側の前髪を伸ばし、他の髪を後方に撫でつけた髪は全体的に黄色一色で、髪の先端に向かうにつれてオレンジ色に染まっている。不思議な髪色だ。


「……」


 彼は何もせず、目の前に広がる川を静かに眺め続けている。


「なんだアイツ……」


「まあいいや、アイツぶん殴ろう」


「あっ、おい! せめて周り確認しろよ!」


「大丈夫だって、この辺は他の奴らは滅多に来ないから!」


 不良達は性懲りもせず、遠くで佇む花束の男に駆け寄った。


「……ん?」


 花束の男は駆け寄ってきた不良達に気付き、川から視線を逸らした。


「よぉ、花束男」


「花束男ってオレのこと? キミ達、僕に何の用かな? ひょっとして新手のナンパ?」


「んなわけねーだろ!」


 花束男は不良に臆せず、淡々と自分のペースで話をする。


「おい、そこの馬鹿みてぇな花束背負ったお前。知らねぇ顔だな。何処から来た」


「何処でもいいでしょそんなこと。それよりキミ達、なんかさっきから突っかかってくるね。ひょっとして、俺に構って欲しいとか?」


「あ?」


 花束男は不良の質問にまともに答えず、むしろ不良達達を挑発するかのような、どこか気障ったらしい物言いをする。


「なんだお前……」


「馬鹿にしてんのかテメェ!」


「馬鹿になんかしてないよ。ただ、構ってほしい子どもみたいでカワイイなって思っただけ」


「んだとゴラァ!?」


 花束男の微笑みと共に放たれた台詞は、不良達を一瞬で沸騰させた。


「テメェ馬鹿にしやがって! タダで済むと思うなよ!?」


「ひょっとして喧嘩する気? いーよ、構ってあげる」


「テメェのそのにやけヅラ、徹底的にボコボコにしてやる!」


 不良達は周りを一切気にせず、辺りに怒声を響かせながら花束男に突撃した。


「はぁ……てんでなってないね」


 花束男は、無策で突撃して来る不良達を見てため息を溢すと、手に持った花束を不良達に向けた。


「花束なんかで何ができる!」


「馬鹿にしてんじゃねーぞ!」


 花束を向けられ更に頭に血を上らせる不良達。



「……あ?」


 だが、不良達の前で花束の花に変化が現れた。


「な、何だ……!?」


 花束に纏められた花が急成長を始めた。花は異様に膨れ上がり、太く長く伸びた茎は他の茎と絡まっていく。


「は!? 何だコレ!?」


 あっという間に成長した植物はやがて、人間の腕のような形へと変化した。


「!?」


 思わず立ち止まった不良達の前には、人間の腕の束を握り締める目つきの鋭い男が1人。


「覚悟しろよテメェら」


 花束男は低い声でそう告げると、花束から幾つも生えた植物の太い腕は不良に向かって物凄い速さで伸びた。


「うゎああああ!?」


 植物の腕は不良の手足を力強く掴み、不良はそのまま宙吊りになり抵抗すらできなくなった。


「ぎゃああああ!?」


「やめろ! やめろぉおおおお!!」


 他の不良も植物の腕に掴まれては宙吊りになっていく。


「もうおしまい? 達者なのは口だけだね」


「なっ、なんなんだ!? なんなんだよお前!?」


「そんなのどーでもいいって言ったじゃん。もう忘れたの?」


 叫ぶ不良に対し、花束男は少し不機嫌そうにする。そんな中、不良の1人は花束男に向かって情けない台詞を吐き出した。


「たっ、助けて……!」


「え? まさか喧嘩を仕掛けた相手に助けを求めるつもり?」


 不良に助けを求められた花束男は、再び目つきを鋭くする。


「一度吐き捨てた台詞、そう易々と引っ込めてんじゃねーぞ」


「ひっ……!?」


 花束男のただならぬ気配に怖気付いたのか、不良達は小さな悲鳴を上げる。


「わ、悪かった……だから……!」


「発言には責任持てよ」


 花束男はそう吐き捨て、花束を一際強く握り締めた。



「ぎゃあああああああ!?!?」



 河川敷に不良達の悲惨な断末魔が響き渡った。

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