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27話 守るために立ち向かえ

 大穴が空いた異空間にて。


 マモルに太く鋭い木片が突き刺さる寸前。唐突に現れた番長が投げた金属片により、木片は木っ端微塵となった。


「番長!」


「カイ無事か!?」


 番長はカイとマモルの元へと駆け寄り、大怪我を負っていたカイを抱き抱えた。


『ジャマスルナァ!!』


 妖精に操られているタイカはすぐさま番長に飛び掛かった。

 タイカの身に纏う魔法道具はボロボロだが、それでも人並み以上のスピードは出るようだ。


「舐めるなぁ!」


『ガアッ!?』


 だが番長は飛び込んできたタイカを目視し、タイカの顔面を片手で全力で殴りつけた。


『アアアッ!?』


 タイカを操っていた妖精は叫び、タイカと共に壁に激突する。番長の力は未だ健在のようだ。


「くっ……やはり傷が疼く……!」


 しかしそれでも本調子は出ないのか、番長はケジメとして自らの手で負わせた胸の傷に手を置いた。

 誰かの手により手当はされているものの、まだ傷は痛むようだ。


「番長……」


「お前達、随分と無様な姿になったな……サラマンダー、お前は猫耳の相手をしておけ。俺はカイと話がある」


「……分かった。番長、カイを頼んだ」


 マモルはすぐに体勢を立て直すと、飛んでいったタイカに駆け寄っていった。



「こっち側の仕事が済んだから駆けつけたものの……まさかこんなことになっていたとは……! カイ、何をしている!」


「ごめん……オレ、急に力が使えなくなって……」


「そこではない! が、力が使えなくなったのもまずいな……」


「本当にごめん……」


 番長に叱責され、カイは目を伏せて申し訳なさそうに謝罪をする。


「力か……お人好しのお前のことだ! 何かあって、あの猫耳に感情移入してしまったんだろう!?」


「……」


「図星のようだな……お前、もう少しでまた友を失うところだったんだぞ」


「……ごめん、番長……」


「俺に謝罪してどうする!」


 マモルとタイカがぶつかる中、カイはただひたすら謝罪をする。


「……カイ、マモルに木が刺さる寸前。お前はマモルに急いで駆け寄ったな?」


「……」


「俺が声を上げていなかったらお前は、自らの命を犠牲にしてでもアイツを助けるつもりだったんじゃないだろうな?」


「…………気がついたら、身体が動いてたんだ」


「やはりか……! お前! 友の死で何を学んだ! 残された奴らのことを考えなかったのか!?」


 番長は目から涙を散らし、とにかく言葉を並べ続ける


「……カイ。お前は出来る限りで、全力で足掻こうとしたのは分かった。きっと、友の危機が迫るその瞬間も、ずっと力を振り絞ろうとしたんだろう?」


 番長の問いに、カイはそっと口を開く。


「……うん。オレ、ずっと力を出そうとしたんだ……」


「そうか」


「でもタイカを前にすると、全然出てこないんだ……! オレもマモルと一緒に戦いたいのに……!」


「カイ、お前は戦わなくてもいい!」


 必死に言葉を紡ぐカイに、番長は全力で叫んだ。


「お前は俺と戦っていた時でさえ! 俺のことを守ろうとしていた! そうだろ!?」


「え、うん……」


「カイ、お前は味方も敵も守る為に戦っていた! ならばあの猫耳の馬鹿も全力で守ってやれ! その力で守って見せろ!」


「守る……」


「そうだ! あの猫耳を見ろ!」


 番長は妖精に操られるタイカを指し示す。


「妖精が無理に動かしているせいで苦しそうにしているだろ! これ以上動いたらアイツは駄目になる!」


 マモルを相手に戦うタイカは、誰の目から見ても酷い有様だ。


「このままでは妖精より先に、あの猫耳がくたばることになるぞ」


「あ……! それだけは駄目だ!」


「だろ! その上、不可抗力とはいえアイツは人を殺すかもしれんのだぞ!」


「!」


 番長の一言に、カイは一際目を見開いた。


「猫耳の人生はどうなる。妖精に取り憑かれていたとはいえそんな真似したら、一生人殺しとして後ろ指を指されることになる……」


「それは……! それだけは絶対に駄目だ……!」


「ならばどうする?」


「……オレ、アイツを守りに行く! マモルも守って、タイカも助け出す!」


「よく言った! ならば俺も全力でカイを手助けしよう!」


「ありがとう番長!」


 いつもの調子を取り戻したカイは、怪我した身体でなんとか番長の腕から降り、番長に礼を述べた。


「どうだ、力は出るか?」


「……何とか形にはなってる」


「完全に調子を取り戻したわけではないのか。俺も本調子で動けん中、お前もボロボロでまともに動けんのだろう。どう立ち回るつもりだ」


「……オレに考えがある」


 番長の問いにカイは一言答える。


「と言っても、これは番長次第なんだけど……」


「俺に出来ることなら全力で強力させてもらう。で、お前は何をするつもりだ」


「相手の真似をするんだ!」


「真似?」




 一方、マモルはたった1人で妖精操るタイカと戦っていた。


「くそっ……!」


 タイカはボロボロだが妖精は弱る気配はない。マモルの体力が削られる一方で、相手はまだまだ息が上がる気配はない。


(異空間の中の時間は、表の時間より緩やかに流れているらしい……これはマズイな……)


 一方的に体力が減り、マモルは次第に追い詰められていく。


『ギャハハハハ!』


 妖精は優勢だと悟った途端、マモルを相手に遊び始めた。


 四方八方へと駆け回ってみたり、無駄に蹴りを入れたりと、獲物をオモチャにするような動作が目立ち始める。


(相手が遊びだした……これは好都合だが、1人で相手するのは流石にきついな……)


 人外との戦いにマモルは疲労の色を見せる。


 僅かな隙を見せたマモルに、すかさずタイカが飛び込みドロップキックを放つ。


「……!」


 何とか防御できたものの、疲労により最初のようなキレはない。


「俺もまだまだ初心者か……」


『マダマダァ! クタバレバーカッ!』


 ドロップキックを決めたばかりのタイカはすぐに姿勢を変えて再び飛び込んでくる。

 タイカを前にマモルは再び防御の構えを取った、その時。


「くたばるのはお前だボケェ!」


 マモルの前に全身真っ白の物体が横切ったかと思うと、真っ白の物体は飛び込んできたタイカを全力で殴りつけた。


『ヒギャッ!?』


 殴られたタイカはなんと氷漬けになり、氷で覆われたまま地面に転がった。


「! お前……!」


 マモルの前に現れたのはなんと、まるで雪のように白く染まった番長だった。


「番長!?」


「マモル! 助けに来た!」


「カイ!」


 番長の背中にはカイの姿が。


「オレはまともに動けないから、番長に動いてもらうことにした!」


「カイは俺に魔力と氷の力を纏わせた。氷の力は雑に振るうことしかできないが、これで多少は戦える!」


 白い番長はカイの説明に言葉を付け足す。


「マモル、遅れてごめん!」


「カイ……助かった。ありがとう」


 番長の背後でマモルは立ち上がり、体勢を立て直した。


「カイ、とにかく防御優先で行くぞ」


「分かった!」


 マモルとカイを背負った番長は再び動きだした。


『シツコイナァ! イツマデヤルンダバカドモガヨォ!』


 妖精操るタイカは全力でマモルと番長を相手に立ち回る。


「カイの魔力分動けるからだいぶ楽だ!」


 大怪我を受けていた番長だったが、カイの魔力分強化されているためか動きがだいぶ軽やかだ。


『シツコイッ!』


 防御と避けに徹する相手に痺れを切らした妖精は、先程のようにその場にある木片から魔法道具を生み出そうとする。


「させるかっ!」


「ふんっ!」


 しかしマモルと番長により未然に破壊されて防がれた。


『クソッ! イイ加減クタバレッ! コノバカドモガッ! 出来損ナイメエッ!』


「くたばるのはそっちだ」


 見るからに苛立ちが募っている妖精は、マモルやカイ達を口汚く罵る。


『ゴミミタイニコビリツキヤガッテ! モウ許サンカラナ! クズドモガァ!!』


 妖精はそう吐き捨てると、脚に魔力を強く込め、部屋中を高速で駆け巡り始めた。


「速っ!?」


「まだこんなに動き回れるのか……!?」


『オセーゾノロマッ!』


 目で追いきれない速度で駆け巡るタイカは、壁を蹴り番長の真横へと急接近。

 番長の胸元の傷を目掛けて全力の蹴りを放った。


「ぐっ……!」


「番長!」


 番長はなんとか耐えたものの、かなりいい蹴りを喰らってしまったようだ。


「くそっ! まともに反撃できなかった……!」


「あの妖精にまだこんな力が……!?」


『ギャハハハ!』


 妖精は天井付近から番長とマモルを見下ろし下品な笑い声を響かせる。


『終ワリ終ワリ終ワリィ! オマエラハココデ無様にクタバルンダヨバーカッ!!』


「あの野郎……!」


『ドーセオマエラクズハコノ程度、俺ニハ勝テナ…………ッ!?』


 笑みを浮かべてしきりに叫んでいた妖精は、途端に全身を震え上がらせた。


「ん?」


『キッ、キテル!? ナンカキテル! ヤバイ!』


 妖精は相手を前に、目に見えて慌てだした。


「おい妖精、さっきまであった威勢はどうした」


『黙レ貴様! コンナトコロニイタラマズイ……!』


 何か良からぬ事が起こったのか、妖精はタイカの身体を乗っ取ったまま慌てて空を飛ぶ。


『アバヨバカドモッ!』


 妖精は天井に空いた大穴から抜け出そうとしたらしい。だが、外に出ることは叶わなかった。


『アダァ!?』


 妖精は天井にある見えない何かに激しくぶつかり、床に叩き落とされてしまった。


 その衝撃により、なんと乗っ取られていたタイカは妖精と分離した。


「おっと!」


 魔法道具から解放されたボロボロのタイカはすぐに番長により拾われる。


 一方カイ達の前には、魔法道具に覆われ姿が見えないものの、見るからに小柄な生物が姿を現した。

 恐らくこれが妖精の正体なのだろう。


『何ダコレハ! 何カニ弾カレタ!?』


「妖精避けの結界だ。気付いてなかったのか」


『妖精避ケダト!?』


 妖精操るタイカと対面する前。マモルは不良達にとある指示を出していた。


「妖精を閉じ込めるために、妖精避けの結界を張ってほしい。魔法の使い方は簡単だ、金属片があればすぐにできる」


 不良達は手元にある金属片をかき集め、妖精のいる方角に向かって妖精避けの結界を展開していた。


「妖精避けの結果を展開したら、異空間に穴を開けてすぐに脱出してくれ。妖精は俺とカイが引きつける」


 力は弱いが展開した結界は、不良達が身を守り安全に外に逃げ出す為の壁として、そしてとある時間稼ぎとして大いに役に立った。


『妖精避ケトハ卑怯ダ! クソッ! クソッ!』


 現に、目の前の妖精は結界に対して大慌て。冷静さを完全に失い、軽いパニックを起こしていた。


『ヤバイ! コノママデハ……! アアッ!?』


 慌てる妖精は真上を見上げた。


 異空間の天井に空いた大穴から、薄紫色に輝く光が舞い降りる。


「ついに来た……!」


『マズイ!』


 妖精は慌てて防壁を展開して構える。妖精は巨大な魔法の防壁を作り出したが、天井から降り注いだのはそんな壁すら凌駕する凄まじい量の光線だった。



『アアアアアアアアアッ!?!?』



 凄まじい光線により防壁は呆気なく砕け散り、妖精は眩い光線に飲み込まれ、呆気なく消滅してしまったのだった。

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