26話 卑怯者の一撃
カイとマモルの合わせ技により異空間に穴が空き、妖精に取り憑かれたタイカは大怪我を負った。
後はタイカをこの場に留めておくだけだが、ここでカイに異変が生じた。
「力が……力が上手く使えないんだ……!」
「何だと?」
合わせ技の余波により怪我を負ったカイは、声を僅かに震わせながら呟く。
『ギギィ!』
その隙を見た妖精はタイカを操作し、カイへと突撃させた。
「うわっ!?」
「カイ!」
カイは防御の構えを取り能力を発動させるものの、氷はタイカの蹴りにより呆気なく砕け散った。
そのまま相手の蹴りを喰らい、カイは後方へと飛んだ。
「うぐっ!」
『ギャハハハハー!』
壁に激突し、全身が激しく打ちつけられる。妖精は下品な笑いを部屋中に響かせる。
「大丈夫か!?」
「ダメだ……力が上手く形にならない……!」
「まさか防御すらままならんのか……!?」
マモルは慌ててカイに駆け寄る。そこにすかさずタイカが飛び出し、マモルの真横に降り立った。
『オマエモクタバレッ!』
タイカはすぐさま蹴りを入れるも、マモルはすぐに防御の構えを取り、タイカの蹴りを受け止める。
『アッ!?』
「お前、調子に乗って随分と舐めた真似をしたな……」
マモルはすぐさまタイカに力を飛ばす。タイカの装備する木製の魔法道具に凄まじい炎が発生した。
『ギャアアア!?』
タイカはその場で大きく飛び跳ねてマモルから離れる。その隙にマモルはカイを助け起こす。
「カイ、大丈夫か」
「マモル……強くなったな……」
「かなり時間を要したがな。だが、それより……」
カイは力は使えなかったものの、身体強化による防御はできたらしい。
致命傷こそなかったが、カイは無視できない怪我を幾つも作ってしまった様子だ。
「……完全に俺のミスだ」
「えっ?」
「合体技は異空間に穴を開けるだけに留めておくべきだった。ついでに相手を弱らせようと欲張った結果、カイを大きく動揺させてしまった……」
「そんな……! マモルは悪くない!」
「だが、結果はこの有様だ。まさかタイカが助けを求めるとはな……」
マモルはカイを助け起こし、カイを前に改めて言葉を投げかける。
「カイ、この場から逃げろ」
「えっ!?」
マモルの一言にカイは驚き戸惑う。
「でも……!」
「俺なら大丈夫だ、相手も深傷を負っている。それに後の仕事は、アイツをこの場に留めておくだけだ」
遠くで火消しをするタイカに、マモルは視線を向けながら話をする。
「それに、さっき逃げた不良がまた逃げ遅れて再び襲われる可能性がある。力は使えなくとも、妖精から逃げるよう不良を誘導することはできるな?」
「あ、ああ……」
「よし。ならばカイは不良を助けに向かってくれ」
「わ、分かった!」
此処にいても役に立てないと理解したカイは、その場からすぐさま駆け出して近くの扉へと駆け寄った。
『逃ガスカヨ!』
しかし、扉へと走るカイの前にタイカが立ち塞がった。
「た、すけ……」
「!」
カイの前で、タイカ本体が再び声を上げる。カイは動揺してその場で動きを止めてしまった。
『ヒャハハハハ!』
「っ!」
タイカは大笑いしながらカイを殴りつけた。カイはまともに防御できず、顔面に拳を受けて床に叩きつけられた。
『ギャハハ! 助ケテェ! 助ケテェ!』
「アイツ……! タイカを人質にあんな真似を……!」
タイカを操る妖精は、本調子を出せないカイに狙いを定めたらしい。
「とことん卑怯な奴だ……! おいカイ!」
『ギャハハ!』
マモルはカイに駆け寄り、その隙に妖精操るタイカはカイから離れる。
「奴はカイを狙っている。下手に離れたらまずい」
「……なら、オレが囮になる。アイツがオレに夢中になってる隙にマモルはアイツを……」
「そんなことしたらカイが危険だ」
「いや、もうそれしかない。オレは大怪我して、もうまともに役に立てない。なら、少しでも時間稼ぎの為に……」
『ヒャハハ!』
カイが話をしている途中で、タイカはカイとマモルの間に強引に割り込んだ。
「しまっ……!」
タイカはカイを掴みマモルを全力で蹴り付けた。
「!」
マモルは遠くへ飛び、クローゼットと激突した。クローゼットから木製の道具が飛び散る。
「マモル!」
『オマエハコッチへ来イ!』
マモルを心配するカイを他所に、タイカはカイを掴んだまま高く飛び、カイとマモルを引き剥がした。
『ヒヒヒ……!』
「や、めろ……! いや、だ……!」
カイの眼前で、妖精とタイカは別々に言葉を発する。
「タイカ……!」
大怪我を負ったカイはまともに動けず、掴み掛かってくるタイカの腕を握ることしかできないようだ。
タイカの腕に能力を発動させようとするも、もはや氷すら発生しない。タイカの腕は水で濡れるばかりで、力がまるで役に立たない。
(でも、こっちに注意を向けてくれた……! まともに戦えない以上、こうして時間を稼ぐしか……っ!?)
カイは囮になれて好都合と思っていたのも束の間。カイの目の前に立つ、妖精操るタイカは急に歪な笑みを浮かべた。
『ヒヒヒ……!』
タイカは周りの木片を魔法で操り、巨大な槍を作り上げた。
『ヒャハハハハーッ!』
「うわっ!?」
タイカはどういうわけか、カイをマモルの近くへと投げ捨てた。カイは床へと派手にぶつかる。
そしてタイカは、地面に倒れたカイを目掛けて全力で槍を投げつけた。
「カイ!」
マモルはすぐさまカイの前に立ち、槍を目掛けて力を放出した。
「マモル!」
槍はあっという間に燃えて使い物にならなくなる。
しかし、巨大な槍の猛攻はそこで終わらなかった。
燃えた槍はなんと、空中で分解してパーツを四方八方へと弾き飛ばした。
「何っ!?」
槍の中には太く鋭い木片が混ざっていた。
「……!」
木片はマモルの胸部を目掛けて真っ直ぐ突き進んだ。マモルの炎を高速で突き抜け、その身を焦がしながらマモルの元へと到達した。
能力に多量の魔力を使い、マモルの身体にはまともに魔力がない状態。木片による致命傷は避けられない。
「マモルーッ!!」
カイはその場から立ち上がり、マモルの背に向かって全力で叫びながら手を伸ばした。
「待てえっ!!」
木片が突き刺さる寸前、大部屋に一際野太い声が響き渡った。
「!」
マモルの胸部に突き刺さろうとしていた木片は、突如として飛来した謎の金属片と激突。
木片はその場で砕け散り、力をなくした木片はマモルの前で散らばった。
『誰ダッ!?』
その場にいた全員は金属が飛んできた方角に目を向けた。
「お前……!」
「番長!」
そこには、仁王立ちで構える勇ましい番長の姿があった。




