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23話 異質な杖

 放課後、何もない平野にて。先程まで敵対していた番長は、カイの事情と真実を知り警戒を完全に解いた。

 そしてカイの友人の最後を全て話し、番長は最後に一言付け加えた。


「カイ。形は違えど、俺達の目的は同じだったわけだ」


 未だに涙を流し続けるカイを前に、番長は静かにそう告げる。


「……そうと知ったら、俺がやることはただひとつ」


 そう言うと番長は、自身の腕に魔力を込め始めた。


「番長! まさかまだ戦うのか!?」


「いや、違う……俺達に、もう争う理由はない」


 涙を拭いながらこれ以上の戦いを拒絶するカイだが、番長も気持ちは同じだった。



 番長は魔力を込めた右手を自身の胸に添えると、右手の魔力を大爆発させた。


「ぐぅ……!」


「番長!?」


 突然爆発した番長に驚き、カイと周りの不良が駆け寄る。


「何してるんだよ!?」


「番長!? 何故そんなことを……!」


 カイはすぐさま番長を助け起こす。


「……これはケジメだ」


 胸に大きな怪我を負いながらも、番長は言葉を紡ぐ。


「事情を何も知らずに、俺はカイを殴りつけてしまった……だからこれは、俺なりのケジメだ……」


「そんなことしなくても……!」


「俺がそうしたかったんだ……それより、もうひとつ、絶対にやらなければならないことがある……」


 番長はカイから離れてなんとか起き上がった。


「……カイ、そこでバンザイしろ」


「えっ?」


 番長の妙な指示に、カイは疑問を抱きつつも素直にバンザイをする。


「よし、少し失礼するぞ」


「えっ、何……うわっ!?」


 両手を広げた番長は目の前のカイに力強く触れ、なんとも豪快な身体検査を開始した。


「あたたっ! ちょっ! 力強いって!」


「これくらい我慢しろ! ……やはりか」


 力強い身体検査を終え、勝手に納得し1人で頷く。


「あたた……急にどうしたんだ……?」


「……お前は、魔法道具なぞひとつも所持してないな?」


「えっ、うん……持ってるのは見習い魔法使いの杖くらいで……」


「なら大丈夫か……お前の仲間も同様、悪いものは何ひとつ所持してない。そうだな?」


「オレ達なら別に持つ必要ないし……何でだ?」


「はぁ!? お前何も持ってないのか!?」


「話と違うじゃねーか!」


 疑問を露わにするカイだが、そんなカイの言葉を聞いた周りの不良は一斉に驚いた。


「話? なんのことだ?」


「カイ。俺達はな……あの猫耳の奴から戦いに誘われたんだ。お前達は学生が持てない魔法道具を所持していると」


「ええっ!?」


「治安維持の為に力を貸せと言われた。あと眼鏡の学生とは因縁があると言われ、何かしらの事情を察した俺は大人しく従ったが……」


「えっ!? 俺そんな違反な物は持ってないって! むしろ持ってるのはあっちだろ!?」


「分かってる、お前はそんなことはしな…………ん? どういうことだ?」


 カイの言葉に番長は呆気に取られ、困惑の色を見せる。


「オレ達が取り上げたやつとか……! ほら、あの猫耳不良が持ってる杖! あれ魔法使いしか持っちゃダメなやつだよ!」


「何だと?」


「オレは魔法使い見習いで色々勉強してるから分かる! あの杖は免許無しで持てないんだよ!」


「そうか……ようやく全てを理解した……!」


 カイから新たな情報を聞いた番長は、表情を困惑から怒りの形相へと変えていく。


 やがて番長は視線を猫耳不良のタイカに向けた。


「あの野郎、俺達にボラ吹きやがった……!」


 番長は怒りを露わにしてタイカを睨みつけた。




 一方。猫耳不良タイカと戦っていたマモルは、和解したカイと番長を尻目にタイカを見やる。


「形勢逆転か……どうする? どうやら流れが変わったようだぞ」


「うるせぇ!」


 番長だけでなく、周りの取り巻きも怒りの表情をタイカに向けている。


「それよりメガネ! さっきからずっと避けてばっかで何もしてねぇじゃねぇか!」


「何もする必要はないからな。それよりお前、さっきから息が上がってるぞ。随分と疲れてるようだな」


「るさいっ! くそっ……!」


 最初に見せたスマートな動きは何処へやら。今のタイカの立ち回りはどうにもお粗末で、お世辞にも上手いとは言い難い。


「はぁ、はぁ……おらっ!」


 タイカはゼエゼエと息を吐きながらも懸命に魔法弾を放つ。魔法弾にはキレはなく、威力も大したことはない。


「大丈夫か?」


「黙れっ!」


 タイカは魔法弾を何発も生み出すも、マモルの前で全て燃え尽きた。


「魔法の勉強に実践練習、他にも色々してきたようだが……体力作りだけはまともにしてないようだな」


「……っ、くそっ……!」


「魔法の勉強をしたことあるなら分かるだろ。魔法使いには体力も必要不可欠、体力作りを怠った結果がそれだ」


「説教……してんじゃ……っ!」


 叫ぶことすらままならなくなったタイカは、唐突に地面に膝をついた。


「あ、あれ……?」


 タイカは杖を手放し、そのまま地面に倒れる。指すら動かないところを見るに、どうやらまともに動けない様子だ。


「終わったようだな」


「何、で……俺、まだ……魔力は……」


「お前の魔力は俺が燃やし尽くした。戦闘中、お前から感情と共に魔力が流れ出ていたからな」


「!」


 マモルはずっと避けに徹しつつ、タイカの魔力を燃焼していた。


 マモルは勝負に勝つより、危険物を所持するタイカをその場に留める方を優先していたのだ。


「杖の予備があろうが、その様子ではもう使えない。これで逃げも隠れもできないな」


「くそっ……! 卑怯、者……!」


「どっちが卑怯者だ?」


「!」


 倒れるタイカの前に、怒りに満ちた番長が姿を現した。彼の長ランは自身の魔力で大きく揺らめく。


「ひっ……! オオガシラ番長……!」


 番長に片手で持ち上げられ、今になって番長に恐怖を覚えたのかタイカはガタガタと震えだす。


「お前、命拾いしたな……」


 地面から持ち上げられ宙ぶらりんの彼に対し、番長は凄みのある声色で言葉を続ける。


「カイの温情により、この場での暴力はしないと約束しよう……だが、謝罪しない限りはまともに外を出歩けると思うなよ……!」


「ひぃ……!」


「それより前に警察行きだろうけどな」


 番長の隣に立つマモルは、その辺に転がる杖の残骸に目をやる。


「魔法使いの杖は魔法使いでない学生には絶対に買えない。それもこんな量の杖を、すぐに用意できるものではないぞ」


「だよな……しかもこの杖、オーダーメイド製のやつだよな? どれも普通に買おうとしたらすごい値段になると思うけど……」


 不良から治療魔法を受けながら後からやってきたカイは、タイカの手から落ちた杖をじっと見つめる。


「マモル、この無事な杖どうする?」


「証拠として保護しておくか。あと、無事なやつから杖に関して聞いてみたいところだが……まずは通報だな。今度は逃がさん」


「だな。しっかり反省してくれ!」


「……で……だ……?」


「ん?」


 番長に掴まれたままのタイカは、途切れ途切れに言葉を発する。


「何で……だ……? お、俺……何でこんなもの使えたんだ……?」


「……は?」


 タイカの妙な発言に、その場にいた一同はタイカに目を向ける。


「こ、こんな……! 武器……! 恐ろしく、て……掴むこと、すら……ためらう……のに……」


「……普通はそうだろうな。魔法の杖を掴むのは、拳銃を構えるのと同じだ。魔法を使う際に多少は躊躇いが出るはずだ」


「ち、違う……! 俺、こんな武器……見つけても……絶対に手に、しない……!」


「……?」


 タイカの切羽詰まった台詞にマモルは困惑する。


「あの……お取り込み中失礼します……」


 そんな中、不良の1人は携帯電話を片手に、絶妙な空気の中を割って入ってきた。


「どうした?」


「あの、電話の電波ないから連絡できないんすけど……」


「何だと?」


「さっきまで入ってたんですよ。ですが、今はどういうわけか繋がらなくて……」


 電波が入らないと困惑する不良。妙な空気が漂う現場に周りが呑まれていく中、何処からともなく妙な声が聞こえてきた。



『許サナイ……』



「……あ?」


「何この声……?」


 異質な声色に周囲が一斉にどよめく。


「っ!? おい! あれ見ろ!」


「!?」


 声のした地面に目をやるとそこには、先程まで無かったはずの異質な杖が地面に転がっているのが見えた。


「な、何だコレ……!?」


「まさかコレは……」


 カイとマモルが構える中、異質な杖はひとりでに宙に浮かび上がった。


「前にヴィオさんの言っていた……」


「まさか……妖精!?」


『オマエ達、全員……一生、永遠ニ許サナイ……! 呪ッテヤル!!』


 けたましい声量で叫んだ異質な杖は、その場で光り輝いてタイカを包みこんだ。


「うわーっ!?」


「何だ……!?」


 やがて光はカイとマモル、番長、不良、その場の全てを包み込んでしまったのだった。

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