21話 成長した2人
何もない平野にて。大多数の不良はカイの力により氷漬けになり、杖を持った一部の不良と番長は氷から脱出した。
「こうなったのも元を辿れば俺達も原因のひとつだ。カイ、責任を持ってアイツらを止めるぞ」
「おう!」
魔法使いの杖を構える不良を前に、カイとマモルは身構えながら全力で走り出した。
「たった2人で何ができんだよ!」
「能力使いだからって思い上がってんじゃねーぞ!」
「主人公にでもなったつもりかテメェ!?」
不良はこぞって杖を構え、カイとマモル目掛けて魔力弾を放とうとする。
しかし、魔力が杖に上手く集まらない。
「あれ……?」
「なんか力が出ない……」
その隙にカイとマモルは不良に近付き、杖を構える不良の手を握りしめ即座に捻った。
「あだだっ!?」
「よしっ!」
カイはすぐさま杖を奪い取ると、手に持った魔法使いの杖を凍らせた。
「あっ!」
杖は分厚い氷に覆われて使用できなくなった。
「こんな危険な物を……ふんっ!」
「ああっ!?」
一方マモルは、手に持った杖を不良の目の前で即座に燃やした。杖は焼けて使い物にならなくなった。
「あの野郎! 反撃……したいのに、なんか魔法が上手くいかねぇ……!」
「くそっ! 何で力が出ねぇんだよ!」
反撃しようにも、不良達はどういうわけか力が出ずにモタついている。
「遅い」
「あっ!」
そんな不良に対し、カイとマモルは容赦なく接近しては杖を奪い取り使用不可にしていく。
「ひひ……」
そんなマモルの背後から、音も立てずに忍び寄る1人の不良が。
「隙ありっ!」
1人の不良はマモルの背に向けてすかさず魔法弾を放った。
「!」
マモルはすぐさま反応し、身体を横に逸らして魔法弾を避けた。その上で魔法弾を放ってきた不良に急接近する。
「げっ!」
「甘いな」
マモルは不良の持つ杖の持ち手部分を直に握り、持ち手から先を燃やし尽くしてしまった。
「うわっ!? マジかよ……!?」
ヴィオにより徹底的に鍛え上げられたカイとマモルに、不良達はでも足も出ない様子だ。
それ以前に、先程から不良の魔法が上手くいかず本領を発揮できずにいるのには理由がある。
それは、戦闘が始まる前にマモルが能力で生み出した大きな火柱にあった。
マモルは火柱を上げたその瞬間、能力を使用して周りから魔力を一気に吸い上げていた。
集めた魔力により火柱の勢いを更に増していたのだ。
その結果、周りにいた不良は魔力が削られ不調気味となった。
(マモルの魔力吸収、かなり効果あるなぁ……!)
どこか元気のない不良達を前に、カイは心の中で感心していた。
因みにカイは魔法で魔力吸収を防いでいたので魔力を吸い取られることはなかった。
因みに、魔力吸収は火柱を上げたその瞬間にほんの数秒だけ行った為、後半はカイが不良に向けて能力を使用しても氷は溶けることはなかった。
「それっ!」
「くそっ!」
カイとマモルは相手の攻撃を冷静に躱し、相手の杖を破棄していった。
「よし順調!」
「カイ、あまり調子に乗るなよ」
「分かってるって!」
目に見えて不良が減っていく。
しかしそんな中、マモルとカイの前に一際威勢のいい不良が立ちはだかった。
「おいメガネ、そろそろこっちにも構ってくれよ」
「お前……!」
マモルの前には杖を手に持つ猫耳不良のタイカが。
「ここまで強くなったか……よし! 番長である俺が直々に相手してやる! 勝負だスノーマン!」
「番長!」
カイの前には、やる気と魔力溢れる番長が現れた。
「メガネ、あの時はただ殴られるだけだったのに、随分と腕を上げたな」
「わざわざ俺とお喋りしに来たのか。随分と元気だな」
「俺は周りの雑魚とは違うんだよ」
マモルと猫耳不良のタイカはお互いに距離を保ちつつ相手の出方を伺う。
「大方、さっきの火柱で周りの魔力を吸い取ったんだろうな。雑魚は魔力不足でまともに戦えないってわけだ、随分と狡い手を使うな」
「そこまで分かるのか、やはりお前は頭がいいな。最初に出会った時から知識があるとは思っていたが……」
「馬鹿にしてんじゃねぇ!」
マモルの言葉が癪に障ったのか、話を唐突に遮りタイカが真っ先に動いた。
タイカはマモル目掛けて魔法弾を幾つも放つ。しかし、魔法弾はマモルにぶつかる寸前に全て発火し、燃え尽きてしまった。
「腕がいいな。質のいい魔法弾を何発も放てるとはな」
「上から目線でモノ語ってんじゃねーぞ!」
魔法弾が通じないと即座に判断したタイカは次の手に出る。
タイカは一際強い魔法弾を生み出し、マモルの立つ地面付近を目掛けて放った。
「おらあっ!」
大地が抉れ、地面から勢いよく飛び出した大量の土や石がマモルに飛んでいく。
マモルは腕で庇いつつ即座に回避するも、それをタイカは見逃さなかった。
「はぁあっ!」
「!」
タイカは回避したばかりのマモルを目掛けて強力な魔法弾を幾つも放った。
「おらああっ!」
タイカはここぞとばかりに激しく打ち込んでいく。あまりにも激しい弾幕に土煙が上がり、マモルの姿は見えなくなった。
「人工魔石のお前にできることは限られているのは分かってんだよ。身体強化に魔力を回せば、能力の発動はできない……はははっ!」
手応えを感じたタイカはマモルを前に高笑いをする。
「魔法学園通ってるからって俺を馬鹿にした奴が、魔法学園にも通ってない学生にやられるとはな! どうだ! ザマァみやがれ!」
返事は帰ってこない。しかしタイカは暴言を吐き続ける。
「まともな家に生まれて! まともな人生送ってる奴が俺に知ったような口を聞くんじゃねぇ!」
「お前の人生歩んでたら俺はとっくに天才魔法使いとして世に出てたんだよ! 凡人が魔法学園に通ったところで不良にボコボコにされて、今どんな気持ちだ!?」
「……はは、もう何も言えねぇか。二度と俺に逆らうなよ馬鹿が!」
マモルに意識は無いと判断したタイカは最後に捨て台詞を吐くと、未だに土煙が絶えない現場に背を向けて歩き出した。
「……咄嗟に俺の隙を生み出したわけか。よく考えたな」
「は?」
背後からマモルの冷静な声が聞こえてきた。
「お前はきっと、俺の考える以上に努力をしてきたんだろうな」
タイカは眉間にシワを寄せたまま、静かに振り返った。
「…………あ?」
立ち込めていた土煙は晴れていたが、そこにマモルの姿は無かった。
マモルが忽然と姿を消し、タイカが呆然としたその時。
「あっ!?」
想定外の方向からマモルの手が伸び、タイカの持つ杖を右手ごと掴んで思い切り捻り上げた。
「あだだっ!?」
タイカは杖を手放し、マモルはタイカの杖を掴み燃やし尽くした。
「お前の努力は認めよう。だが、俺はお前以上に、文字通り血の滲むような努力をしてきた。徹底的に鍛え上げ、弱点の克服もした」
「お前……!」
タイカの目の前には、攻撃された跡すらない無傷のマモルがそこにいた。
「まだ生きてやがったか……!」
タイカは慌てて懐から杖を取り出し再び構える。
「まだ杖の予備があったか」
「うるせぇ! くそっ……何なんだお前!」
叫ぶタイカに対し、マモルは静かに口を開く。
「……俺達を鍛えてくれた師匠の為にも、そしてお前にこれ以上罪を重ねさせない為にも、俺はそう簡単にやられるわけにはいかない」




