表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/54

17話 修行本番……?

「予め宣言しておく。修行はここからが本番だぞ」


 本日の修行は終わったと思い込んでいたカイとマモルに、メイドのフィオは声色を一切変えずに言い放つ。


「フィオさん、それってどういう……」


「さて、後は寝るだけだな。2人ともお疲れ様、帰宅したらおやすみしろよ」


「えっ」


「じゃあな」


 修行はまだ続くと思い込んでいた2人は、フィオのテレポート能力により自然公園へと移動。


「ハルカワさん、シロヤマさん、お疲れ様でした〜!」


「あ、お疲れ様です」


「お疲れ様でした」


(何事もなく終わった……)


 そのままお開きとなり、2人はそのまま真っ直ぐ家へと帰ったのだった。




「…………ん?」


 真夜中の深い森の中。地面に伏せるように眠っていたカイは静かに目を覚ます。


「あ、あれ……?」


 自室から大自然へと変貌した世界に、カイは驚き慌ててその場から立ち上がる。


(何処だここ……)


 パジャマ姿で眠りについていた筈だが、今はいつも通りの私服姿へと変わっている。


「どうなってるんだ……あっ!」


 辺りを見回していたカイは、遠くで地面に倒れるマモルを発見した。


「マモル! 大丈夫か!?」


「うぅ……もう食べられ……」


「寝ぼけてないで起きろって!」


「……いや、ここまで来たら全て食べざるを得ない……」


「無理して食べ切らなくてもいいって! おいマモル! 起きろ!」


「ん……?」


 カイの声掛けにようやく反応し、マモルは目を覚ました。


「ここは…………なんだ、森の中か」


「寝ようとするなマモル! ここ明らかにおかしいって!」


 再び眠りにつきそうになったマモルをカイは急いで揺り起こす。


「オレ、さっきまで自分の部屋で寝てたのに……! しかも服まで変わってるんだよ!」


「ここは……もしや、夢の中か?」


『ハルカワさん、その通りです!』


 マモルの言葉に、どこからともなく第三者の声が元気よく反応を返した。


「この声は……ヴィオさん!?」


「はい! シロヤマさん、先程ぶりです!」


 静寂に包まれた森の中。カイの真上にある木からヴィオが降り立った。


「うわっ!?」


 木を一切揺らさず、物音立てず静かに姿を現したヴィオにカイとマモルは驚く。


「さあ2人とも! これしきのことで驚いている場合ではありませんよ! これから体術の基礎のおさらいします!」


 ヴィオは両手を叩き、2人に簡単に説明を始める。


「基本の構えをしっかり意識した上で、ありとあらゆる技の動きを……とりあえず1000回ずつやってもらいましょうか」


「1000回!?」


「ずつ、ということは……全て合わせた合計ではなく、ひとつひとつの動きに対して1000回ということですか……?」


「その通り! とりあえずここでは基礎を覚えてもらおうかと思いまして……技ひとつにしても、魔力の流れや身体の扱い方は異なってきますから」


「なるほど……」


「それらを完璧に覚えるためにも、夢の中でも修行をするんですね」


「その通りです! 現実でもしっかり修行してもらいますが、今回は修行の流れを見てもらう為にも、控えめにしておきますね」


「控えめ……」


「で、どうしますか? もしご気分が優れないのでしたら修行は中止しますが……」


「「やります!」」


 こうして夢の中での特訓が開始した。カイとマモルは真面目に修行に打ち込み、やがて素振り1000回を終えた。


「お、終わった……」


「身体は疲れてない筈なのになんか疲れた……」


「流石です! ではお次は魔力で身体強化をして、この山の中を全力でランニングしましょう! フォームを意識してついて来てくださいね!」


「「はい!」」


 ヴィオの修行はまだまだ続く。


「ランニング終わりです! ではお次は全身に魔力を維持したまま耐久です!」


「「はい!」」


「それを終えたら再び素振りです!」


 ヴィオの修行は続き、かれこれ数十時間後……


「はい! 本日の修行はここまで!」


「ようやく……」


「お、終わった……」


 夢の中で長く続いた修行はついに幕を閉じた。2人の表情には疲労が滲み出ており、夢の中だというのに今にも眠りこけてしまいそうだ。


「あ、あの……これでもまだ簡単な方なんですか……?」


「はい。夢の中で修行し過ぎて、現実の身体が追いつかない……なんてことが起こりますから。現実での修行も厳しくなるにつれて、夢の中の特訓も長引いていきますよ」


「マジか……」


「マジです! 時の流れが現実と違う夢の中なら、何十時間でも修行できますから!」


 疲労からつい口から出た若者言葉にヴィオは元気よく返事をする。


「現実で1000回やって、夢の中では10000回やってもらうといった感じで、とにかく短期間で基礎を仕上げてもらいますからね!」


「基礎かぁ……」


「基礎を仕上げたら、いよいよ本当の修行が始まります! 頑張ってください!」


「えっ?」


「それってつまり……この修行は……」


「修行の修行、ということになります!」


「マジすか……」


 カイとマモルが体験した修行は修行の前座だった。


「明日から全力の修行が幕を開けます! シロヤマさん、ハルカワさん、頑張りましょう!」


「頑張ります……!」


「とことんしがみつきます……!」


 しかし2人は挫けない。動機があり、目標があり、絶対に曲げられない信念があるからだ。


「ヴィオさん……! オレ、絶対に強くなりますから……!」


「期待します!」



 やる気のある2人だったが、次の日を境に更に修行は過酷なものとなった。


「おーい2人とも、修行するぞ〜」


 学園が終わればすぐさまフィオが車と共に出迎え、2人をヴィオの私有地へと移動させる。


「さあ! 昨日やった基礎練習を全てやりますよ!」


「今日はたっぷり時間があるからな、昨日の倍やるぞ」


「昨日の倍!?」


「頑張ります」


 だだっ広い私有地のど真ん中で待ち構えていたヴィオと、合流したフィオによる地獄の修行が幕を開ける。


「カイさん! 肘はもう少し上です!」


「はっ、はい!」


「マモル、腕が下がってきてるぞ」


「分かりました……」


  昨日よりチェックの厳しい修行に早くも疲労の色を見せる2人。しかしヴィオとフィオは修行の手を緩めない。


「……よし、そこまでだ」


「お疲れ様です! すぐに治療します!」


 休憩時間はヴィオの魔法ですぐさま減った体力を回復させる。


「回復したら次は体力作りだ。魔力を全身に巡らせたまま走るやつ始めるぞ」


「はい……」


「頑張ります……」


「おう。ところで……」


 カイとマモルが治療魔法を受ける中、フィオは話を切り出す。


「カイが昨日使ってたどデカい技あるだろ。あれ、1回使ったら魔力ほぼ消えるんじゃないのか?」


「あ、そうです……」


「やはりか。だからあの時、魔力の残る氷を蹴飛ばして誤魔化したわけか。なら魔力量も増やす修行をしないとな」


 フィオは合点がいったのか、握り拳を手のひらにポンと乗せた。


「よし、修行追加だ。どデカい魔法を使用しても攻撃を続けられるよう、魔力も強化するぞ」


「「分かりました!」」


 夕陽が沈みゆく中、2人は嫌な顔ひとつせず修行に取り組み続ける。途中で豪華な晩御飯を挟み、休憩を終えたら修行を再開。


 そして……


「本日の修行はこれまで! お疲れ様でした!」


「早めに寝ろよ。次は夢の中での修行だからな」


「「はい……」」


 現実での修行を終え、次は夢の中での修行が始まる。


「さて! 今日行った修行の復習をしましょう! 復讐を一通り終えたら、気分転換に簡単な実践のようなものをしましょう!」


 時の流れが緩やかな夢の中で何十時間にも及ぶ修行を続け、この日の修行は終了。必要な睡眠時間分を残して修行の夢は幕を閉じた。



「これが何日も、何週間も続くのか……」


 朝を告げる時計のアラームに起こされたカイは、うわごとに近い独り言を呟いた。

 しかし、カイに修行をやめる選択肢は無い。


「……よし!」


 カイはその場で両頬を叩いて気合を入れると、元気よくベッドから降りて学園に向かう準備を始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ