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16話 初めての修行

 夜。ヴィオの所有する広い土地で、カイとマモルの実力を測る為の予行が行われていた。

 ゴーレムを全て凍らせてカイの出番は終わり、次はマモルの番となった。


「カイさんお疲れ様です、こちらへどうぞ」


「はい!」


「さてと、お次はマモルさんの番です」


「分かりました」


 ヴィオの言葉を聞いたカイは観客側に戻り、入れ違いにマモルが現場の中心へと移動する。次はマモルの番だ。


「おっと、ハルカワさんの番を始める前に軽く掃除をしておかなくては」


「まかせろ」


 ヴィオの一言により、フィオがホウキ片手に氷だらけのフィールドに飛び込んだ。


「ほっ」


 ホウキを構えながら一際大きな氷に突撃し、氷塊目掛けてホウキを一振り。


「うわっ!?」


 ホウキの一振りに触れた巨大な氷塊は一瞬で弾け飛んだ。


 さらにホウキを大きく掃いて氷の破片を片付けていく。

 氷の欠片は面白いほど簡単に消え去り、氷から解放されたゴーレムはあっという間に自由の身となった。


「これで次の準備は整いましたね!」


「ですね! でも、マモル大丈夫かな……」


「シロヤマさん、ハルカワさんに関して何かご懸念が?」


「えっと……」


「大丈夫だカイ。相手は人じゃない、ゴーレム相手なら何とかできる」


 カイが説明をする前にマモルがそれとなく言及し、カイに軽く手を振る。


「……あっ、マモル!」


「カイ、どうした」


「マモル、ずっとつけていた眼鏡どうしたんだ? 今しっかり見えてるのか?」


「今更だな……大丈夫だ、あれは伊達眼鏡だ」


「あれ伊達眼鏡だったのか!?」


「そうだ」


 カイの質問に真面目に答える中、ヴィオはカイとマモルを交互に見つめながら合図のタイミングを伺う。


「えーと……準備はよろしいでしょうか?」


「あ、はい。大丈夫です」


「ありがとうございます。では……始めっ!」


 ヴィオの開始の合図により、ゴーレムは再び動き出した。

 動きは再び遅くなっており、重そうに足を動かしてマモルの元へと歩み寄っていく。


「マモル……戦ったことはあるのか?」


「戦闘経験はない。だが、魔法を能力で対処する練習はしていた……」


 マモルは全身に力を漲らせる。髪は真っ赤に染まり、両腕から炎が吹き出す。


「はあっ!」


 マモルは炎で染まった両腕を全力で振り、広範囲に炎の塊を放った。


 幾つもの炎はゴーレムに着弾すると、ゴーレムを焼き尽くさんばかりに激しく燃え上がった。


「おおっ! 凄いぞマモル!」


 しかし、炎はあっという間に収まった。肝心のゴーレムには傷1つついていない。


「あ、あれ……? 失敗したのか?」


「いや、マモルの技は成功したようだぞ」


「えっ? フィオさんそれってどういう……」


「ゴーレムをよく見てみろ」


「?」


 フィオに指摘され、カイは改めてゴーレムをじっと見つめる。


「……ゴーレム、さっきから動かないな」


「あれは燃料切れを起こしてますね」


「えっ?」


 ヴィオの発言にカイはすぐさま反応を見せる。


「つまりマモルさんは、両腕から繰り出した炎でゴーレムの燃料である魔力を焼き尽くしたのですよ」


「魔力を……あっ! あの一瞬燃え上がったあれって、相手の魔力も一緒に燃やしたからあんなに燃え上がったのか?」


「……そういうことだ。どうやら俺の技は上手くいったようだ」


 そう説明しながらマモルは、しばらくゴーレムを見つめ続ける。


「マモル、ゴーレムは全部停止してるぞ」


「…………大丈夫そうだな」


 フィオの言葉にやや遅れて返事をしたマモルは、踵を返してカイ達の元へと戻った。


「マモル……」


 マモルは何食わぬ顔をしていたものの、そんなマモルに対してカイは心配の色を見せる。


「昔、色々と練習はしてたんだ。今回は偶然上手くいったようだ」


「……凄いなあの技。あの技があれば、相手の魔力を利用して更に威力を上げたりできるんだろうな」


「一応できる。カイを助けた時も、カイの氷に混ざる魔力を利用させてもらったんだ。だからあの時、火力も容易に出せた」


「あっ! 確かあの時、オレの氷がすぐに溶けたんだよな……あの時は炎の熱で溶けたんだと思ってたけど、今考えたらやけに溶けるのが早かったよな……」


 カイはホウキが落下した時のことを思い返す。


「そうか、オレは既にマモルの技を見てたんだな! マモルの技、最高だな!」


「ああ、カイの言う通りマモルはいい技持ってるな。この方法なら、上手くやれば傷つけずに相手を無力化できる」


 無邪気に褒めるカイの隣で、フィオも素直に感心してマモルを褒める。


「だが、通用するのは単純な相手だけだ。強い相手にこの技は通用しないぞ」


「その通りです」


 フィオの指摘にマモルは頷く。


「更に付け加えると、俺自身の魔力が足りないので、相手の魔力を利用しなければ高い威力は出せません」


「魔力が足りない?」


「俺は人工魔石によって魔力を賄ってるんです。いわゆる人工魔法使いというもので……」


「魔力が無くても魔法使いになれるってやつか!」


「その通りだ。魔力は滅多に枯渇しないものの、普段の使用量は制限される」


「そうだったのですか?」


 マモルの話に静かに耳を傾けていたヴィオは、不思議そうに首を傾げる。


「ヴィオさん、どうしました?」


「いえ、ハルカワさん自身に多量の魔力を感じたので……」


「?」


 ヴィオの発言に今度はカイが首を傾げる。


「……はい、俺自身にも魔力はあります」


「あるのか!? でもマモルはさっき人工魔法使いだって……」


「魔力はあるけど使えないんだ。だから人工に頼ってる」


 驚き戸惑うカイにマモルは言葉を付け足す。


「昔は普通に魔法は使えていた。ある時から使えなくなった」


「そうなのか……」


「なるほど……ハルカワさんに関しては、そこも課題として取り上げましょう。さて……」


 マモルの話にカイは神妙な面持ちに変わる。そんな中、ヴィオは話の整理をするためか、ここで軽く両手を合わせた。


「先程の戦いぶりを拝見した結果、お2人はある程度の基礎は出来てると判断しました」


 改めて話をするヴィオに対し、カイとマモルは大人しくヴィオの前へと移動する。


「お2人に共通するのはやはり経験不足ですね。カイさんは技術はあるようですが力を適切に使い切れてない様子」


「なるほど……」


「マモルさんは少ない魔力を有効的に活用して能力を扱えています。あとは魔力を引き出し、更に技の威力を上げることですね」


「分かりました」


「他にも細かい点はありますが、とりあえず目立つ点だけ……」


「ヴィオ、言いづらいのは分かるがここははっきり言った方がいいぞ」


 2人の利点と欠点に軽く触れるヴィオの言葉を遮り、フィオは堂々とカイとマモルの前に出た。


「はっきりと言わせてもらう。私の評価としては……お前達2人は初心者未満のひよっこだ。全然ダメだ」


「初心者未満かぁ……」


 フィオの一言にカイは悔しそうにしながらも真面目に耳を傾ける。マモルは真面目に傾聴している。


「だがひよっこであるだけまだマシだ。基礎を完璧に仕上げ、なおかつ実践経験を積むことだな。まずは初心者卒業を目標に頑張れ」


「と、いうことで……まずは素振りのようなものから始めましょう!」


「はい!」


「分かりました」


 ヴィオのふんわりとした合図と共に、カイとマモルの修行が開始した。




「まずは手始めに、能力の基礎練習をしましょう! 全身に魔力を巡らせ、能力を常に使用できる状態にしてください。そこから両手を突き出し、手の先から一定量の能力を発してそのまま維持します」


「基礎中の基礎だな。まあ、これくらいならまだ余裕だろ」


「じ、地味にキツイ……」


「だが、できないというわけでもないな……」


 ヴィオとフィオが見守る中、カイとマモルは全身に魔力を巡らせる。両手の先から能力で生み出した水と炎を浮かべ維持する。


「というより、カイお前……能力は氷じゃなくて水だったのか……」


「水をギュッとして凍らせてるんだ……」


「随分と大雑把な説明だな……」


「お、まだ余裕そうだな」


 雑談をする2人にフィオはそっと近付く。


「余裕があるのならもう少し時間置いてみるか」


「はい! オレもう少しやれます!」


「限界まで頑張ります」


「……やっぱやめとくか」


「何でですか!」


「限界まで頑張ります」


「それだよ。お前達はほっとくと倒れるまで修行続けるだろ、そんな真似するな」


「フィオさん意外と優しい……」


「それより、次は体術の基礎を叩き込むからな。能力だけでなく体術も極めろ」


「「はい!」」


 この後2人は全身に魔力を巡らせたまま体術の基礎を学び、素振りを行い、そしてフィールドを数周したところで今回の修行は切り上げとなった。


「お2人とも、お疲れ様でした!」


「真面目に修行を続ければ、力を使いこなせるようになるだろうな」


 ヴィオとフィオが労いの言葉を向ける中、疲れた様子のカイとマモルは拍子抜けしたような様子でお互いに顔を見合わせた。


「意外と早く終わったな……」


「基礎練習と体力作りだけで終わったな」


 初めての修行はキツイものではあったが、想像を絶するほどではなかった。


「初回だからこの程度で済んでるのだろうな」


「だよなぁ……それでも強くなるために脱落せず全力で頑張るだけだな!」


「ほぉ、まだやる気あるのか。やる気があるのはいいことだ」


「姉御」


「あ、フィオさん! お疲れ様です!」


 疲れが見える2人にフィオが声を掛ける。


「お疲れ様……か。どうやら今日の修行は済んだと勘違いしているようだな」


「えっ?」


「予め宣言しておく。修行はここからが本番だぞ」

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