15話 今の実力を見てみよう
ヴィオに現代を教えるべく外に繰り出したカイとマモルだったが、思いがけないところで不良の群れと遭遇した。
不良は無事に追い払えたものの、カイの顔を知られた以上はこのまま歩き回るには物騒という結論に至った。
「と、いうわけで……ここは今後のためにも、修行をして必要最低限の護身術を学びましょう!」
己の身を守るためにも、ここで一旦修行を挟むことになった。
「ではすぐに修行できる場所へと移動しましょう! お2人とも、わたくしについて来てください!」
ヴィオを筆頭に移動し、3人はフィオが待つ駐車場へと移動した。
「あ、フィオさんは無事だ!」
「不良の大群に囲まれておきながら、よくもあんな堂々としていられたな……」
黒い高級車の中でヘッドホンしながらゲームをしていたフィオは、外に現れた3人を見るとゆっくり車から下車した。
「フィオさん、お待たせしました!」
「おうヴィオ、随分と都会に馴染んだな」
「えっ、本当ですか!?」
「おう。都会の若者と見間違えたぞ」
「やったー! えへへ……」
フィオの言葉を素直に受け止めたヴィオは大喜び。
「で、マモル。お前は不良になったわけか」
「形だけ不良にされました」
「強そうだな。形だけなら不良のトップになれるぞ」
「なりません。というより形だけのトップってただの飾りじゃないですか」
「それより、今度はどこに行くんだ」
「あ、そうそう。遊びに没頭して本来の目的を忘れる前に、修行の準備をしておこうかと……」
「あーそういうことか」
フィオは軽く頷くと、ヴィオから視線を逸らしてカイとマモルを見つめた。
「お前達、骨は拾っておいてやるからな」
「修行の準備で骨出るんですか」
「ヴィオさんの修行ってそんな恐ろしいものなんですか……?」
「いやいや、そんな恐ろしいものじゃないですよ! それに、今回はお2人の実力を見るだけですから!」
フィオの横槍に対し、ヴィオは慌てて訂正を入れる。
「ほら、暴れ回れる広い場所に移動しますよ! お2人とも車に乗り込んでください!」
ヴィオに促されるまま、カイとマモルは車の後部座席に乗り込んだ。
「さーてと。お前達、念の為に車のどこかしらを掴んどけ」
「あ、はい」
フィオの指示に従い、カイは座席に手を触れ、マモルは座席に深く座り込んだ。ヴィオも座席に深く座り込んだ。
「よし、じゃあいくぞ」
フィオはそう一言告げると車のハンドルを力強く掴んだ。その瞬間。
「うわっ!?」
「外が……!」
車の外の景色が一瞬で変化し、明るい街中からだだっ広い土地へと変化した。
「一瞬で景色が変わった……?」
「実はフィオさんも能力者なんです。瞬間移動で車ごと私達を広い土地に移動させてくれたんですよ」
「フィオさんも!? なんて凄い力なんだ……!」
「だろ」
カイの驚きように、フィオはサムズアップ片手に返事をする。
「皆さん、とりあえず降車しましょう」
「おら、とっとと降りろー」
「あ、はい!」
「それにしても、此処は一体……」
ヴィオとフィオが降車し、カイとマモルは車から降りて辺りを見回す。
「わたくしの所有している土地です。身体を動かしたい時によく来るのです。フィオさん」
「あいよ」
ヴィオが指示を出したその途端、辺りに置かれていたらしい巨大な照明が音を立てて光り輝き始めた。
「うおっ!?」
「大掛かりだな……」
何もない殺風景な大地、少し離れた場所には切り立った崖、遥か遠くには森が見える。
「広っ!」
「これくらいの広さなら大暴れしても大丈夫な筈です。さてと……」
満足そうに頷いたヴィオは改めてカイとマモルのいる方に向き直る。
「確かお2人は、誰かを守れる力をご所望でしたね?」
「あっ、はい!」
「その通りです」
「ならば……お2人にはまず、簡単に技を見せていただきましょう」
「技ですか?」
「はい。能力を使って簡単に戦ってみてほしいのです。戦いやすいよう、それなりの的をお出ししますね、それっ!」
ヴィオは手元から宝石を生み出すと、宝石を指で弾いてその辺に撒き散らした。
「あっ! 宝石が……!」
「ゴーレムの形となって動き出した……!」
地面に付着した宝石はその場で急成長すると、ガタイのいいゴーレムへと姿を変えた。
「凄っ!」
「私の生み出す宝石は大量の魔力を内包できるので、このような使い方もできるのですよ。因みに、あのゴーレム達は動くだけで何もしないので安心安全です!」
「なるほど、あのゴーレムの群れを相手に戦うんですね! じゃあ早速、オレから戦わせてもらいます!」
「シロヤマさんからですね、ではお願いします!」
「はいっ!」
カイは元気よく返事をすると、意気揚々と前へと躍り出た。
ヴィオとフィオとマモルは後方へと下がり、見物の姿勢に入る。
「では……始めっ!」
開始の合図と共に、ゴーレムはカイを目掛けてゆっくりと動き出した。
「相手は複数、それなら……!」
対するカイは、手元から氷の結晶を複数個生み出して構えた。
「それーっ!」
カイは慣れた手つきで氷の結晶を放った。結晶はゴーレムの足や身体に命中し、次々と氷漬けになっていく。
カイは結晶を次から次へと放ち、やがてゴーレムは1匹残らず氷漬けになった。
「よし! いい感じ!」
「おお、ゴーレムがあっという間に氷漬けに……!」
「あいつの力、だいぶ強いな」
カイの能力捌きに、ヴィオとフィオは好意的な反応を見せる。
「カイさんにはこのゴーレムは優しすぎたようですね、ではゴーレムを少し強くしてみましょうか!」
ヴィオがそう宣言すると、ゴーレムを覆っていた氷塊にヒビが入り、次々と氷から解放され始めた。
「うおっ!?」
「単純にパワーを上げました! このゴーレムは生半可な力では止まりませんよ! さあ、どう立ち向かいますか?」
氷から解放されたゴーレムは、先程より歩行速度を速めてカイへと向かう。
「それならこうするまでっ!」
カイは手に持っていた雪の結晶を巨大化させ、ゴーレム目掛けて全力で投げ込んだ。
氷の大結晶はゴーレムの群れの中心に落下すると、一瞬で巨大な氷の結晶へと姿を変えた。
「大勢いたゴーレムが、一瞬で飲み込まれた……!」
これほど大きな結晶に包まれてしまっては、力のあるゴーレムでも脱出は不可能だろう。
「素晴らしい! これほどの力を使いこなすなんて!」
「おー見事だな」
観戦していた3人は突如発生した氷の結晶に目を奪われる。
しかし、結晶に巻き込めなかったゴーレムが数名いた様子だ。
ゴーレムは結晶には目もくれずカイを目指してズンズン進む。
「あっ、取りこぼした!」
突き進んでくるゴーレムを見たカイは慌ててその辺に散らばる氷の欠片を蹴り飛ばした。
幾つも蹴り飛ばされた欠片はゴーレムに命中し、欠片は破裂し大きな結晶となってゴーレムを包み込んだ。
「よし! 終わりっ!」
「おお素晴らしい! カイさんの技はどれも安定して、なおかつ威力も高いようですね! 高評価ですよ!」
「いやぁ、それほどでも……!」
「だが、技がどれも大袈裟で実用性が無いな」
「えっ」
ヴィオは手放しでカイを褒めるが、対するフィオはバッサリ切り捨てた。
「見栄え重視なのか? 全体的にテンポが悪い、次の技に移行するまで時間かかりすぎだ」
「うっ……」
「雑魚相手ならどうにかなるかもしれんが、強い奴相手だと技を発動する前にやられるぞ」
「た、確かに……」
フィオの言葉に心当たりがあるのか、カイは悔しそうにしながらも頷く。
「フィオさんの言うことも一理あります。もっと技に磨きをかけて、実践で使える物にした方がいいですね!」
「そうだな。カイ、お前はもう少し技を見直した方がいい。もったいないぞ」
「なるほど……! 分かりました!」
「カイさんお疲れ様です、こちらへどうぞ」
「はい!」
「さてと、お次はマモルさんの番です」
「分かりました」
ヴィオの言葉を聞いたカイは観客側に戻り、入れ違いにマモルが現場の中心へと移動する。次はマモルの番だ。




