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初めての鬼



昔々の話をしよう。

お上に苦言を申し立てるには、己が命と引き換え、時には己が一族の命と引き換えであった時代のこと。

ある年、稲の苗が盛大に伸びる夏の盛りに、嵐の害がもたらされた。

田畑は荒れに荒れ、水際は上流から流れ着いた木々で漁に出ることすら叶わぬ状態に陥った。

嵐の害をひどく受けた領主は、お上に進上を述べるために我が子を(跡継ぎから外れた者であったが)差し出し、領民達の税の免除を進上し、同時に領主の私財を嵐の害を受けた民へと分け与えた。

民は領主の決断に感銘を受け、田畑の修繕、それに流れ着いた木々の撤去に邁進した。が、荒れた田畑から収穫が見込めず、廻船にありったけの布を積もうにも港は漁にすら出られぬ状態。この年を越せるかどうかと皆眉をひそめる日々。

故に年頃の子どもらは、被害が少なかった農村へと嫁がされ、あるいは養子に出され、奉公に出され、色街へ身売りされていった。

そうして、色街に売られた娘の一人が、領主がお上に差し出した若者と出逢った。

同じ境遇の二人は、瞬く間に恋に落ちたのだが……

国のあちこちで蝗が大量発生し、世は大飢饉。一揆が、打ち壊しが起こり、娘が身を寄せる色街も例外ではなかった。

怒濤の如く街を駆ける農民達。米問屋はたちまち黒山の人だかり。あちこちで火の手があがり、その混乱に乗じて娘は色街を出、若者は娘の身を案じ、娘の元へとはせ参じた。

二人は混乱のさなか、手を取り合って二人を知る者がいない地へと逃げることも出来たが、共に人身御供とも云える立場。

――ならば、なきに等しいこの命と引き換えに、お上にこの惨状を申し上げよう――

二人は鬼と化し、千里を一瞬に駆け江戸の城へと馳せ参じたと云ったという。


――これが『初鬼』に伝わるの昔話じゃ。

猛威を奮う病魔。

民意を損なう行い。

人身御供ともとれる行為……

我らも鬼とならねばならぬその時が来ているのではないかね?



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