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東京サイコハザード  作者: グラタファトナ
14/21

ギャルゲー2

 いつも通りのなんてことない日常。

 ちょっと変化があるとすればそれはチェルシーがいないことだろう。彼女は今、僕の元を離れて日本で行方不明となった兄さんを探しに出かけている。

 そのことは僕も了承しているし、この機会を逃すわけにはいかないと必死の形相で説得されたことはまだ記憶に新しい。

 チェルシーからは定期的に連絡が来る。と言っても今は何処にいるとか手がかりがあったとかなかったとかの一喜一憂のメールだ。

 彼女がここを出てから一か月以上が経とうとしている。自分でも思っていたよりチェルシーが傍に居てくれないと不安だということが分かったのは意外だった。

 

 今日も朝を迎える。朝食と共にTVをつけて今日のニュースを視ようとすると、外の外部スピーカーから放送が流れてきた。 

『緊急、緊急! 東京にお住まいの皆さま、TVをご覧ください。7時より緊急放送を行います。誰一人お聞き逃しないようにお願い申し上げます』

 日本は結構平和な国だからこういうことはあまりないはずだ。何かあったのだろうか。

 TVをつけて待っていると画面の中には狼の被り物をしている男性が立っていた。

『東京人狼ゲェェェェエエエエエエエエエエエエエエェェェェンンムッッッッ!!!!』

 彼は大仰な様子でそう声高らかに宣言した。

『東京の皆々様、おはようございまァす! 私、人狼男爵と申します。本日より東京にお住まいの皆さまにはデスゲームを行っていただきます』

 デスゲーム。確か創作物の中でも際立って殺伐としたフィクションだった気がする。あまり信じたくはないがそれを現実でやろうと彼は言っているのだろうか?

『ルールはこちら!』

 ルールを一通り眺め、把握する。このルール通りであれば人間と呪術師は午前中、狼は午後動いた方が良さそうだ。だけどまずは自分のことを把握しなくちゃいけないだろう。

 全部事実であれば、だけど。

『このルール表は各世帯配布、及びTVで連日報道されます。さてさてさて! 皆様、もうお気づきの方もいらっしゃられるかもしれませんが、皆様には一人一人に役職が与えられています。どうやって判別するか、それはこちらからお教えすることはありません』

 とても正気とは思えない言動と態度だ。この分ではこのゲームに参加する人物は相当限られるのではないだろうか。

『それでは皆様、楽しんでデスゲームを致しましょう! 三日後、その時にまたお目に掛かれば幸いです! ハーッハッハッハ!!』

 彼は高笑いしながらどこかへと去っていき、TVの画面もいつも通りのニュース番組へと戻る。

 ピロンと音を立ててスマートフォンに着信が届く。LINEを開いてみるとチェルシーからだ。


チェルシー > 天成様、そちらで何か異常事態が起きてませんか? もし起きている場合、それらは全て事実ですので何としても生き延びてください。


 見透かしたようなチェルシーのメールに僕は少し驚きながらも返答を返す。


天成 > どういうことだい? こっちではデスゲームというのが開催されているみたいだね。

チェルシー > デスゲーム……でしたら、前回のクリア者である白坂紬という人物に注視してください。可能であれば彼女を仲間に引き込んでおけるとうまく進むでしょう。

天成 > 分かったよ。でも、おかしいね。君は今、新潟にいるはずだろう? なぜ東京の、それも今しがたの事を正確に理解しているのかな?


 僕が不思議と思ったのはそこだ。もしかしたら今メールしている人物はチェルシーではない可能性もある。

 数分して彼女から再度返信が来た。


チェルシー > 協力者から情報を頂きました。……天成様、どうかお気を付けて。また、後程ご連絡致します。


 ……不可解だ。出来ることなら会って話をしたいが彼女の正確な位置は分からない。

 今はチェルシーの言葉を信じて僕のやるべきことをしよう。

 まずは白坂さんを仲間にする。そのためには……彼女がどちらの陣営なのか、を決める必要がありそうだ。

 現状、僕が考えた作戦なら両陣営とも必要だ。可能なら人間が好ましいけどね。

 玄関を出て、彼女をよく見かける通学路で待ち伏せする。

 しばらくすると白坂さんが厳しい表情で登校しており、しきりに周囲を確認している。この時間帯だとあまり人通りがないから吊るされる可能性を危険視しているのかもしれない。

 ただ、デスゲーム経験者であれば初日の動きでおおまかな動向は分かる。

 もし彼女が狼であれば動くのは午後からだろう。午前中は吊られる危険性を考えて自宅待機しているだろう。と、考えれば彼女は呪術師か人間なのが妥当だ。

 僕は呪術師なので『鑑定』を使用して彼女を判別する。

 結果は人間。理想的な配役と言える。これがもし狼だったら別の手を考えていたところだ。

 ふと、白坂さんは小さな音にもならないような声で反対側の歩道にいたスーツ姿の男性に指を差した。その言葉は『吊るす』と言っていた。

 その様子を撮影し、僕はすぐにその場を離れた。現像することを考えたらあまり長居はしていられないな。


 学校に到着してすぐに僕はクラスメイトたちを洗脳した。白坂さんは図書室に居るみたいだ。

 カラカラカラと音を立てて扉を開け、白坂さんの隣までやってくる。

「やぁ、白坂さん。図書室にはよくいるのかい?」

「神代山……。まあ、良く来るけど」

 どうやら一人でいる時間を邪魔されて少し迷惑そうだ。悪いことしたかもしれない。

「そうなんだ。隣、良い?」

 でも彼女は優先的に囲っておく必要がある。積極的にいかなくては。

「私に構う暇があったらハーレムでも形成すれば?」

 それについては流石に苦笑いするしかない。

「そんなことしたらチェルシーに殺されちゃうよ」

 実際、殺されはしないだろうけど『実家に帰らせて頂きます』くらいは言いかねない。それに彼女は誤解しているようだけど僕はチェルシー一筋なんだから。

「ちょっとだけ話を聞いてもらえないかな? 君に相談したいことがあるんだ」

「私じゃなくてチェルシーって人に言えば? あんたの嫁なんでしょ」  

「残念だけど、チェルシーは学校にいなくてね。遠くに行ってるんだ」

 すると白坂さんは何を誤解したのか悲しそうな、憐れみを込めた視線を僕に向けてきた。

「……そう。……辛かったね」

 一体何を誤解されたのか分からない。

「まあ、一週間もしたら帰ってくるって言ってたから心配はしてないけどね」

「とりあえず座ったら? 相談くらいなら乗るし」

 どういうことかさっぱりわからないけど、勧めてくれているのなら話をさせてもらおう。

「じゃ、失礼して」

 対面の席に座って僕は率直に彼女に問う。

「――白坂さん、今朝の放送どう思う?」

「実際、行われるよ。ゲームはもう始まってる」 

「……やっぱりそう思うよね」

 チェルシーの言っていた通り、彼女は確信した感じで頷いた。

「――神代山。あんたもデスゲームやったことあるの?」

 経験者だと思われているのかな? ここは素直に否定しておく。

「ないよ。でも、白坂さんは前の学校で行われたデスゲームの唯一の帰還者だ。その意見を参考にさせてもらおうと思ってね」

 彼女は少し警戒した素振りを見せた。提案するならここの辺りだろう。

「ねえ、白坂さん。僕と組まない?」

「は?」

 あっ、これ女子が気持ち悪いとか思っている時のトーンだ。僕の言動の何かが彼女の琴線に触れてしまったようだ。

「神代山、先に行っておくけどお互いがどちらの陣営かわからない以上、そういうことを迂闊に言うのは危険だよ」

 デスゲーム経験者だからか、経験則から僕にアドバイスしてくれた。その顔は変わらず怪訝そうだけど。

「ううん、大丈夫。僕が今知る中で安全圏なのは君しかいない。何故って? 今日の通学中に君が通行人を吊るしかけてるを見たからね」

「悪いけど私はそんなことしてな――」

 彼女が否定する前に胸ポケットから今朝取れたての写真を取り出して机に置いた。

「盗撮しちゃった。ごめんね」

 彼女のドン引きしている視線が痛い。




























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