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東京サイコハザード  作者: グラタファトナ
12/21

デスゲーム6

 正午のチャイムが鳴ると同時に私と神代山の脳内にメッセージが響いてきた。

『おめでとうございます。白坂紬、神代山天成、条件をクリアしました。ゲーム終了まで殺されなければゲームクリアとなります』

 こんな不可解なアナウンスが流れる場合、大抵が事実であることを告げている。

 ふう、と私は息を付く。ひとまずは安全圏に入った。安心したのか少し眠くなってきた。

 ……ソファーって寝やすいなぁと思いつつ夢の中へと落ちていった。


 午後もあっという間に過ぎ去って夜のターンも終わる。

 夕食の準備が整うくらいに、ベランダに出て望遠鏡で外を見ていた高杉さんが観察を止めて戻ってきた。時刻は6時を過ぎていることから内容は私たちと一緒だろう。

「あっ、か、神代山君。な、なんか変な声が頭の中に……」

「なんて言っていたんだい?」 

 神代山は落ち着いた態度で高杉さんに声をかけ、ソファーに座らせる。

「条件をクリアしました、って」

「こっちも同じみたいだね。これで三人ともにゲームはクリアしたね」

 ホッと一息吐いて神代山も肩の力を抜いた。

「夕食は腕によりをかけたグラタンだよ。ちょっと早いけどパーティーしようか!」

「うん」 

「は、はい!」

 夕食は談笑をしつつお祝いし、明日は一日ゆっくりと過ごそうということになった。

 その後はTVの中継を視つつ、情報を集める。特にもう意味はなくなってしまったけど、最終日終了まで何があるかわからない。用心するに越したことはないだろう。


 夜11時を回るころ。神代山も高杉さんも自分の部屋に戻って横になっている頃合いだろうか。

 コンコン、と扉がノックされる。

「はい?」

「やぁ、白坂さん。ちょっといいかな?」 

 声は神代山だ。こんな時間に何の用だろう。

「こんな時間に何の用? スペアキーで入ってきたらピアノ線で頸動脈掻っ切るからね」

「ハハハ、怖いこと言わないでよ。……扉越しで良いんだ。ちょっと聞いてくれないかい」

「それなら、まあ」

 軽口の次に出てきた真剣な声色に私も扉付近まで近寄る。

「それで、どうしたの?」

「うん。チェルシーのことなんだけどね。……彼女からさっき連絡があったんだ。それで今からちょっと出かけなくちゃならなくなった」

 要領をあまり得ない説明だ。でも、今ここを出るのは危険すぎる。

「それ、明後日に出来ないの? 流石に今は危険だよ」

「……白坂さんならそう言ってくれると思っていたよ。でも、チェルシーが言うには今来てほしいみたいなんだ。あまり時間がないとも言っていた」

「……罠って可能性は?」

 もしチェルシーさんが何者かに囚われていて神代山をおびき出すための罠だった場合、彼の命が危ない。そもそも黙って出ていけばよかったのになんでこの事を私に伝えたのだろう?

「もし罠でもなんとかなるさ。白坂さんには迷惑をかけない。この家のマスターキーは置いていくから内側から閉めておいてほしい。万が一、高杉さんの洗脳が解けた場合のことも考えて彼女には睡眠薬を飲ませてあるから安心してほしい」

 さらっと聞き捨てならないことを聞いたが、今は置いておく。

 さて……本当なら止めなくちゃいけない場面なんだろうけど、神代山は何が何でもいく覚悟で話しているはずだ。チェルシーさんにも危険が迫っているというのならここでグタグタしているよりは送り出した方が後悔しないだろう。

 扉の鍵を開ける。

「白坂さん?」

「鍵、内側から閉めておくんでしょ。……明日の夜18時。その時間を超えない限り、この扉は例えあんただったとしても開けないわ。それでも良いなら行って」

 すると彼は不自然なく笑って私にカードキーを差し出した。

「分かった。もし万が一、一週間経っても帰ってこなかったらココに連絡してほしい」

 そう言って番号の書かれた紙を渡される。……多分、これ神代山家直通の番号な気がする。

「了解。ほら、さっさと行って。チェルシーさん連れて帰ってくる」

 ぐいぐいと彼を押して玄関までやってくる。

 神代山は用心深く扉をゆっくりと開き、周囲に人影がないことを確認してから表へと出た。

「じゃ、頼んだよ」

「いってらっしゃい」

 別れはあっさりとしたものだった。

 扉の鍵を閉め、念のため高杉さんの様子も確認してから部屋へと戻る。

 明日は暇になりそうだなぁ、と考えつつベッドに横になって私は目を閉じた。


 デスゲーム最終日。

 朝。私は未だに状況を理解していない中継を視つつ、今日の終わりに何万人死ぬかなぁと考えながら朝食を頂く。

 高杉さんは目を覚ます気配がないので家事を一通りやったら暇になった。

 暇つぶしにツイッターを見ると、トレンドはデスゲーム考察、デスゲーム、東京パニック、なんて書かれている。もう三日目になるというのにまだ事実確認をしたり情報提供を待っている人が多い。

「今日から狩り始める人お疲れ様、っと」  

 私の呟きは見向きもされずに流されていく。

 そもそもデスゲームが本当にやっているのかどうか理解していない人が多すぎる。しょうがないといえばしょうがない気もするけど。

 ……そういや、このゲームを始めた犯人って誰なんだろう。

 ふと気になってネットをサーフィンする。犯人の人物像や声明、声色などの考察やまとめスレは多く立っておりデスゲームそっちのけで行われている。

 眺めている内にふと気になる文章を見つけた。

「ふーん」

 自称『探索者』と名乗る人の書き込みだ。

 彼曰く、このデスゲームの首謀者は彼と同様の魔法使いが起こしているらしい。魔法を使うための力、魔力が異世界から流れてきており現状は魔法が無制限に使いたい放題になってしまっている。

 そのため魔法の力に溺れた一人が狂気に陥ってデスゲームを開始したようだ。

 解決するには全ての根源である『異世界の門』を閉じる必要があり、もうすぐ閉じることが出来そうだとか何とか書かれている。

 コメントも基本的にお疲れ様コメが多く、まともに取り合っている人はいない。

 私も面白いなと思いつつも流し読みして時間を潰していく。


 午後18時前。やはりというべきか外のスピーカーから放送が聞こえてきた。

『東京の皆さま、デスゲーム終了五分前です。生死問わずTVをご覧ください』

 酷いアナウンスだ。そう思いつつもTVを付けると初日と同じ人が画面に出現していた。けど、記憶にある彼とは違って少し背丈が小さいだろうか? 何か違和感がある。

 少し待つと彼はオホンと一つ咳払いして告げた。

『東京の皆さま、もう間もなくデスゲームは終了します。クリア条件を達成できなかった方はご家族の方とお別れを済ませておくようにお願いします』

 違う。コイツは初日の奴じゃない。別の人間だ。声色も、仕草も、狂気性も全くの別人だと感じられた。

『そしてこの場を借りて二つほど申し上げさせて頂きます。一つ目は我らが同胞へ。『門は閉じた。もう魔法を多く使う事は出来なくなる』。二つ目、これは世界の皆さまへ言えることですが、魔物の発生を止めることはもはや困難になってしまいました。既に被害に遭ってしまった方、これから被害に遭われる方へお悔やみ申し上げます』

 なんという言いようだろう。彼から発せられた内容のほとんどは意味が分からない。私たちの理解の範疇を大きく超えた情報だろう。

『残り三十秒。ああ、そうそう。このデスゲームの元凶はこちらで仕留めておきましたのでご安心ください。今回の事件はこれで幕引きとなります。定時と共に映像は消えますのでご了承ください』

 深々と一礼し、しかし彼は思い出したように顔を上げた。

『ああ、それとこれは完全に私怨なのですが――おい、勇者。お前のせいで世界はこうなったんだからな。これらすべてはお前がやらかしたんだ』 

 それを言い残すと同時に映像はプツリと切れた。

 そして――。


 東京は血の海に沈んだ。

























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