29.試作
「待ってましたァ!」
オレの時代がやってきた! とでも言わんばかりに無邪気な笑みを浮かべて立ち上がる志鎌。まるで長い間待ちわびた新しい玩具を、今まさにプレゼントされようとしている子供のようだった。
「ソロモンとみずち――条件は『指輪』と『壷』だったね、常盤くん」
「はい、そうなります」
白杖を握り締めて、こくりと頷く常盤。
「材質などは条件に関係ありませんが、他の器械と接触した際に破損する可能性が高まりますので、極力頑丈なものを『依り代』にすることをお奨めします」
「え、依り代の強度って関係あるのか?」
常盤の説明に、多賀が興味深げに口を挟んだ。
「はい。素材の強度は、器械同士が干渉する際に、非常に重要な要素となります。例えばソロモンの条件は『指輪』ですので、極論、紙で作った指輪でも良いわけです。しかし位階Ⅲ相当の紙製の器械では、おそらく多賀さんのスルトの熱に少しでも当てられたら一瞬で燃えちゃうと思います」
「そのとき、器械の権能は?」
「当然、失われます。破壊され二度と戻りません」
「そういえば器械同士が衝突したとき、位階によって優劣が発生するんだっけ?」
くるくると、手の中で象牙色の特殊警棒――位階Ⅶの神器【アスクレピオス】を回しながら、鬼塚。
「そうですね。ブラダマンテの知識によると、位階の差はかなり顕著です」
「詳しく聞いても?」
刀根も興味を示す。
「もちろんです。器械は基本的に不壊ですが、器械同士で接触する際は、ある程度強度に差が出てきます――」
常盤曰く、器械は物理的に破壊されることはないが、器械同士で激しく接触した際、その位階と『素材』の強度に強く影響を受け、最悪の場合破損するという。
まず同格の器械同士においては、本体のいわゆる『物理的強度』がかなり重要になってくるようだ。たとえば、位階Ⅴの神器【みずち】と魔剣【スルト】の場合、みずちは陶器製の壷に近いもので、スルトは頑丈な金属製の剣だ。両者が衝突すれば、高確率でみずちの方が割れ砕けてしまう。
対して位階が違う場合、素材の強度よりも位階の差が大きく関わってくる。
「位階Ⅰは、例えるなら紙です。位階Ⅱは段ボール。折り紙の剣で段ボールの盾を壊すのは、難しいですよね。逆に段ボールの盾のせいで剣の方が折れ曲がってしまうかも知れません」
片方の手の平を、つんつんと指先で突きながら常盤。
「位階Ⅲは、木材です。段ボールや紙とは段違いの強度ですね。位階Ⅳは、例えるなら石。サイズや形状によっては、位階Ⅲの方が頑丈なこともあるかもしれません。位階Ⅴは……青銅器、といったところでしょうか。この辺りから下位の器械との差が顕著になってきます。そして位階Ⅵは鉄器、位階Ⅶは鋼鉄とかとても頑丈な合金といったところです。正直、位階ⅥとⅦはそれほど差がないと思います」
「じゃあ、ウリエルさんが本気出したら、位階Ⅲくらいの器械は容易く破壊されてしまうと?」
懐中電灯を至極大切そうに撫でながら佐京。
「はい。位階Ⅰ、Ⅱでしたら、おそらく紙を破くように。位階Ⅲでもそれほど苦労はされないでしょう。ウリエルさんは、わたしが感知し得る器械の中でも、とりわけ強大な力をお持ちのようですし……対策としては、器械を布一枚でくるむだけでも随分違うと思います。刀剣類や炎に対しては無力ですが、単なる打撃であれば間に物体が挟まることで『器械同士の接触』を回避できますから」
「ほうほう。ということは、器械から放たれる炎とかレーザーとかは、器械の延長線としての効力を持つということですか?」
「そう、ですね。ただし直接的な打撃に比べると威力は劣るはずです。……尤も、器械は使えば使うほど器士とともに成長していくので、器士の熟練具合によってはその限りではないと思います」
「なるほどなぁ……そういえば、ウリエルさんのその旗が位階Ⅰ相当なんでしたっけ? 紙程度の強度なら、確かに上位の器械で簡単に壊せることに……あっ」
何気なく言ってから、佐京は口を押さえた。ウリエルの『天眼旗』が位階Ⅰ相当で破壊が容易であることは、あまり吹聴しないようにと、刀根に釘を刺されていたのを思い出したからだ。
ところが、「やっちまったか」という顔で佐京が刀根を見やると、刀根は全く気にしていないようだった。
「それは資料にも書いてある」
「あっ、そうですか」
「まあ、部外者には言わない方がいいだろうね」
みんなも内緒だぞ、と改めて釘を刺す刀根。
「位階Ⅰってことは、天眼旗は一日に七本複製できるのか?」
ウリエルが手にした蒼く輝く旗を見ながら、多賀がふと思いついたように言う。
「法制領域広げられるんなら悪くないと思うんですけど、刀根さん」
「……ふむ。ウリエル?」
「原則として、可能ではある。しかし我は、より正確に言うならば神器【熾天使】の器士は、全身を器械で覆われている状態である」
コンコン、と自身の装甲を指で叩きながら、ウリエル。
「然るに、我は生身で器械に触れることができず、新たに器械を獲得することができない。仮に天眼旗を複製し、他者が器士になったとして、我がその法制領域を掌握できるかは不明である」
「なるほど……ウリエルさん、その天眼旗、少しブラダマンテで検めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「構わない」
常盤の差し出した手に、そっと天眼旗を載せるウリエル。常盤は胸元から再びロザリオ――神器【ブラダマンテ】を取り出し、こつんと旗本体に押し当てた。ブラダマンテと天眼旗がほのかな銀色の光を放つ。
「あっ。これはダメです。危険です。複製できません」
目を閉じたまま常盤が表情を歪める。
「危険……とは?」
「……天眼旗は位階Ⅰ相当、とのことでしたが、複製すれば位階0の扱いとなり、確かに一日につき七本の複製が可能です。しかし天眼旗は神器【熾天使】から派生した器械なので、その権能は神器【熾天使】そのものなんです。……つまり、天眼旗レプリカの器士となった人は自我を取り込まれた上、あらゆる点で劣化した位階0のウリエルさんになります」
ある種の困り顔で常盤が告げた言葉に、全員がぎょっとする。
「おっかねえな」
「位階0って……位階Ⅰが紙なんだよね 何になるんだろう?」
「ティッシュとかじゃないか?」
「というか、不壊性失うのに器械同士での優劣関係あんのか?」
皆の視線が、常盤に集中する。
「……どうやら、不壊性を失った上で、さらに位階による優劣の影響も受けるようです。位階としての強度は、水で濡れた紙程度かと」
ブラダマンテを撫でて答える常盤。
「ダメダメだろ」
「下手したら自壊するレベルじゃん」
「仮に旗量産できても位階0じゃなぁ……」
「武器系の器械は、位階Ⅲ以上じゃないと複製しても使い物にならんな」
一応、位階Ⅰ以上でさえあれば、器械としての不壊性は維持できる。単純な物理的強度のみを必要とする場合は位階Ⅰでもいいかもしれないが、戦闘中にうっかり味方の器械に当たって破損、などということになっては話にならない。
「っつーか、ンなことはどうでもいいから、とっととレプリカ作ろうぜ!」
と、皆が複製の可能性について模索する中で、一人ソワソワした様子だった志鎌は、とうとう堪えきれなくなったようだ。
「まあ、そうだな。先に複製してみようか」
「じゃあ、ぼくのソロモンからですね!」
中指から金色の指輪を抜き取りながら、青木。
「……これ、どうしましょうか。ぼくのソロモンは、拒否反応で『重量』ってのがあるんで素手じゃ重くて持てないと思うんですけど……」
「ハンカチに包んで頂くか、あるいは手袋か何かがあればよいのですが……」
「あ、軍手ならありますよー!」
ラッキーを抱きかかえていたマユが、コートのポケットから滑り止めつきの軍手を取り出し、常盤に渡す。
果たして、軍手をはめた常盤は、青木からソロモンを受け取り、ブラダマンテと接触させた。
ぽう、と仄かに発光するブラダマンテ。
「……あ」
右手にソロモン、左手にブラダマンテを持ち、一瞬顔を強張らせる常盤。しかし何事か、と訝る周囲の空気を肌で察し、すぐに「いえ、なんでもありません」と首を振る。
「ありがとうございました」
丁寧に頭を下げて青木にソロモンを返却し、常盤は目を閉じたまま、志鎌の方を向いた。
「……なるほど。志鎌さんとソロモンは、相性が良好ですね」
「相性?」
オウム返しにして、目をぱちくりとさせる志鎌。
「ンなもんあんのかよ」
「はい。ソロモンに限った話ではありませんが、器械と器士には相性があるようです。適合率、と言い換えられるかも知れませんが……わたしは、ブラダマンテにコピーした権能を保持している間、その器械と周囲の人の相性がある程度把握できるんです」
「マジかよ」
へー、と志鎌は感心しているようだっが、それを聞いた面々は少しばかり不安げな顔をした。志鎌は『相性が良い』と言われたので気楽に構えているが、考えようによっては――その力は、なかなかに恐ろしいものに思えたからだ。
「まっ、それなら言うことはねえや。それじゃあレプリカ頼むわ」
「はい。『依り代』を、こちらに」
常盤に促され、志鎌はおもむろにシルバーリングを抜いて、手渡す。
「それ、一応マジモンの銀だから、丈夫ってほどじゃあねーがクソみたいな安モンほど脆くもないぜ」
「これなら大丈夫でしょう、熱に特別弱いような素材でなければ、直接他の器械と接触する可能性も低いでしょうし……えーと、どうしましょう」
軍手越しにリングの重みを確かめながら、常盤は少々困り顔だ。
「すいません、なにぶん、初めてのことなので。……この指輪とブラダマンテを接触させればそれで終わり、ですが、少し権能を調節できそうです。志鎌さん、もう『知識』は要りませんよね?」
「は? 知識? ……どういうことだよ」
突然の問いに困惑する志鎌。
「ええと、今ブラダマンテの中には、オリジナルを10とすると、6くらいの力が入っています」
常盤が、仄かに光り輝くブラダマンテを掲げる。
「依り代に6くらいの力しか封入できないので、オリジナルに比べると能力が劣化するわけですが、余計な機能や知識などを削れば、権能を少しだけ強化することができます。リソースを他に回すことができるわけです」
「はァ? ……クルマで余計な部品取っ払って、軽くして最高速度上げる、みたいなノリか?」
「んんん、ちょっと違いますけど、そんな感じです」
「はぁ。そンなら、知識とかどーでもいいわ。もうアグニのがあるし」
「わかりました……といっても、権能の強化は微々たるものでしょうけど。じゃあ敵とかの知識は削って……他に、よくわからない知識も入ってるんですが、ひょっとしたら念力の使い方とかを司ってる部分かもしれないので、これは残しておきます。……拒否反応はどうしますか? 結構な容量を占めてます」
志鎌は、青木を見やった。
「『重量』とかだっけ? 他人が触ったら重く感じるってヤツ?」
「そうですね。正直、ぼくとしてもあんまり意味ないと思います」
「じゃあ、それもいらね」
「わかりました。……これで終わりですかね。では、いきます」
むっ、と気合を入れて、軍手越しに握ったシルバーリングに、こつんとブラダマンテを接触させる常盤。
ブラダマンテの銀色の光が、すぅっとリングに移って、消えた。
「…………」
何か変化が起きるのかと、一同は固唾を呑んで見守ったが、常盤がふぅと一仕事終えた顔をする。
「はい、できました」
「え、もう終わり?」
「……呆気ないな」
「できたのか!」
拍子抜けする面々をよそに、一人テンション高めの志鎌。
「はい、どうぞ。志鎌さんなら相性がいいので、オリジナルの六割程度の力まで引き出せるはずです」
「早速使わせてもらうぜ!」
常盤の差し出すシルバーリングを意気揚々と掴み取った志鎌は、その瞬間「おふぅ」と呻き声を上げて床に倒れ込んだ。
「あっ、大丈夫ですか!?」
頭を抱えて悶え苦しむ志鎌にマユが心配げに駆け寄るが、望月たちは「ああ」と同情するような、納得するような複雑な笑みを浮かべた。
「やっぱり器械獲得すると、ああなるのか」
「二度目でもなるんだね」
「もう最初から寝転んで受け取った方がいいかもな、絶対転ぶだろ」
頭の中に、ぐにゃりと『何か』が入り込んでくる感覚――経験したのは一度のみだが、忘れようのない体験だった。
「ぐ、ぅぅ……結構キツいぜ……だがッ!」
床で伸びていた志鎌が、カッと目を見開き、青白い光をほとばしらせた。
「うおおお……ッッ!」
雄叫びのように吠えながら、ふわりと浮かび上がる志鎌。その茶髪が逆立ち、瞳が青白く光っている。空中で椅子に座るように足を組み、ドヤ顔を披露する。
「うおお、すげえ!!」
「ふふ、どうってこたぁねーよ」
「レプリカどんな感じです? こういう言い方するとアレですけど、使い物になりそうですか?」
「うーん、そうだな……」
佐京の質問に考え込もうとする志鎌だったが、段々とその顔から余裕の色が抜け落ちていく。
「ぬっ……ぐぅぅ……!」
しばらく顔を真っ赤にして踏ん張っていた志鎌は、やがて汗だくになってずり落ちるようにして着地した。
「だ、ダメだ……コレめっちゃキツいじゃねえか!」
ぜえぜえと肩で息をしながら、叫ぶ。その発言を受けて全員が青木を見やった。
「えっ、そんなにキツいですか?」
「ああ、なんつーか……オレも『腕』のイメージ使ったけど、普通に懸垂するのと、あと足元で自分を支えるのとで二倍疲れる感じがすっぞ」
普通に腕で天井にぶら下がった方がラクなんじゃねーかコレ、と呟く志鎌。青木は顎に手を当てて首を傾げた。
「おかしいですねーぼくはそれほどキツいとは思いませんでしたけど」
「やはり、ベースの出力が違うのかもしれんな」
うむうむ、と頷いて剛田が言った。
「だが志鎌! 疲れるのは決して悪いことではないぞ!」
「……はァ?」
ニヤッ、と暑苦しい笑顔を浮かべる剛田に、志鎌が怪訝な顔をする。
「疲れるということは、つまり! 鍛える余地が残されているということだ! 筋トレの要領で毎日訓練を繰り返せば、やがては疲れなくなるはずだ!」
「ええ……そういう問題かよ……」
「お前には漁を手伝って貰わなければならんからな……」
「はァ!? オレは自動車整備だろ!?」
「何を言う、こういう状況下で貴重な器士の一人だぞ! やることなんざ腐るほどあるに決まっているだろう、ハッハッハッハ!」
「いやいやいや意味わかんねーし……」
豪快に笑う剛田の前で、志鎌の言葉が尻すぼみになる。どうやら、剛田のような暑苦しい人物は、苦手としているようだった。対照的な二人につられて周囲の面々も笑う。
ひとり――どこか釈然としない顔をする、青木を除いて。
「まあ、何はともあれ無事に複製できてよかった。次は、みずちかな?」
ぱんぱん、と手を叩きながら刀根。
「花瓶ならその辺にありますね。今やりますか」
会議室の窓際に置かれていた花瓶に佐京が目を留める。どうやら造花を差してあるだけで、中に水は入っていないようだった。大きすぎず小さすぎず、水筒ほどの大きさでそれほど重くもない。これならば携帯しても邪魔にならないだろう。
「強度の観点からは、金属製とかの方がいいのかもしれませんけどね……」
「まあ、試作だからね。今日のところはこれでいいんじゃないかな」
シルバーリングと同様に、今度はみずちをベースにして複製を行う。
「あ、こちらも制限を加えることで能力を上げられますね」
みずちの力をブラダマンテに保持した状態で、常盤がぽつりと呟く。言葉そのものは歓迎できるものだったが、その表情はどこか浮かないものだった。
「というと?」
「みずちの権能――『任意の液体を湧出する』、つまり『液体なら何でも出せる』という能力をそのまま再現しようとすると、この部分に力を割かれすぎて、一日に出せる液体がかなり限られます。具体的には、オリジナルが二十リットル前後なのに対し、こちらはせいぜい一リットルです」
「えっ!?」
「少なっ!!」
元より、オリジナルの五割から七割の力しか持たない劣化コピー、とは聞いていたが、流石に能力が劣化しすぎている。
「待って待って。じゃあ逆に、権能を忠実に再現しようとしなければいい、と?」
「そう、ですね。出す液体の組成を、例えば一種類に限定すれば……生産力が飛躍的に伸びるはずです。少なくともオリジナルと同程度か、それ以上に。相性の問題もあるので、正確な量はわかりませんが」
「……どうします?」
「一種類に限定、か……」
「一種類じゃなくてもいいんですか? 二種類、三種類とかでも」
「いいと思います。一種類に限定すればかなり生産量が伸びる、ということはわかりますが……数種類にまで適用させた場合どうなるかはわかりません」
そして、しばらく皆で話し合った結果、今回の『みずちレプリカ』は、出す液体をガソリンと軽油の二種類に限定することにした。発電機を稼動させ車や重機も乗り回している現状、最も必要とされている液体だからだ。そして、敢えて二種類にすることで生産量がどの程度になるかも測ることができる。
「わたしたちの中で、みずちと相性がいいのは……酒寄さんは、元から相性がかなりいいですね。あとは特筆するならば、刀根さん、剛田さん……それと小牧さんでしょうか。他の方は、似たり寄ったりといった感じです」
指名を受けた四名は、顔を見合わせた。小牧は、特に微妙な表情だ。この場においては少数派の器士ではない人間。『念願の器械』とはいっても、護身用の武器ならば兎も角、ガソリンと軽油が出る壷は、なんというか微妙だった。
「燃料の補給は、汚れ仕事になるかもしれんからな。……俺がやろうか、船にも使えるし」
「頼んだ」
半ば、押し付け合いとなった器士の役目は、剛田が引き受けることとなった。
「では……液体を二種類に限定したレプリカを作ります。拒否反応の『重量』と知識は削除しますね」
常盤が右手の壷に、こつんとブラダマンテを接触させる。銀色の光が壷に溶け込んでいった。
「はい、これでできました。現状、このレプリカはまっさらの状態で、二種類だけ液体を……なんでしょうね。『登録』できる状態です。器士になったら、剛田さんが知っている『ガソリン』と『軽油』を思い浮かべてください、それで権能が機能するはずです」
「……わかった」
転ばなくて済むように、床に直に座った剛田は、みずちレプリカを受け取り――再び、『脳内のアレ』の洗礼を受けて器士となった。
「……どうだ?」
「問題ない。ガソリンと軽油を出せるようになったはずだ。量は正確にはわからんが……二十リットル弱、か? オリジナルより少し劣る、という程度だと思う。体感ではな」
壷を手に、一人納得するような顔の剛田。生産量を劇的に悪化させることなく、複製は無事に成功したようだ。
「……さて、複製は終わったが。このあとはどうするべきか」
祭りの後のような、盛り上がりの抜けつつある空気の中で、ぽつりと刀根が呟いた。
「あ、行きたいところがある」
そこで、手を挙げたのは望月だ。
「器械が量産できるようになったのはいいけど、まだ武器が足りてない」
言いながら、望月は小牧の腰のホルスターに視線をやる。前々から考えてはいたが、門の破壊のため時間を取れていなかったのだ。
だが、今なら時間はたっぷりとある。
皆の顔を見回して、望月は言った。
「――葦屋町の自衛隊基地に行こう。武器を回収しに」




