28.結成
「名前……か」
ウリエルに言われ、刀根はガリガリと後頭部をかいた。
「全く考えてなかったな……」
「共同体の名が必要になるような法案、ありませんもんね」
草案をぱらぱらとめくりながら佐京。今のところ、共同体の『領土』は法によって定義されておらず、法が有効となる範囲は全てウリエルが展開する法制領域を基準として定められていた。つまり、共同体の名前を必要とする項目が、一切なかったのだ。
「名前……名前か。……どうする?」
困り果てた刀根は、周囲の意見を仰いだ。
「どんな名前でもいいのか?」
「然り。基本的に、如何様なものでも可能であるが、共同体を定義し承認するために名称そのものは必要不可欠である」
望月の質問に、こくんと頷くウリエル。
「じゃあ『サンダーファイヤー』みたいなカッコイイ名前でもいいんですか?」
バッと手を挙げて佐京。ウリエルは一瞬、佐京の顔を凝視したのち、頷いた。
「可能である」
「……かっこいいか? それ」
下らない質問を飛ばすことに余念のない佐京に、多賀は呆れ顔だ。
「ぶっちゃけ名前とかどーでもいいわ」
「同じく」
ダルそうに意思表明をする志鎌と鬼塚。
「極力、わかりやすいものが良いのではないでしょうか」
「ボ、ボクも同じ意見です。あんまり変だと、広まりにくいですし。インパクトを狙うって手もアリかもしれませんけど……」
冷静な酒寄、どもりながらも宮口が意見を述べる。
「実際、拠点を何処にするかにも依るな」
腕組みをした剛田が椅子に座りなおしながら重々しい声で言った。
「っつーか、ほとんど牟那方で決定だろ?」
ぐらぐらと椅子を揺らしながら、面倒くさそうな志鎌。
現在、望月たちが集まっているのは牟那方市の市立図書館だ。牟那方市そのものは、中規模の海沿いの田舎町で、市の中心部はある程度計画的に都市化されているものの、基本的に辺境の地には田んぼと川しか存在しない。
しかし現状、その田舎っぷりは決してデメリットではなかった。田畑の面積が非常に広く、海沿いには小規模だが漁港が整備され、津久井町との境目に伸びる山脈のお陰で降水量が多く水源も豊富。JRの鹿児島本線も通っており、国道も市内を横断しているため、事故車両の撤去などを行えば東西へのアクセスも良い。今後、『自給自足』していくならば申し分のない環境と言えた。
加えて、県内随一の生徒数を誇るマンモス校の私立響ヶ丘高校や、中堅の公立牟那方高校などを擁するため、中高生のみが存在する『この世界』においては人手を集めやすいという利点もある。
そして望月たちのほとんどが、牟那方市や牟那方近郊の市町村出身であることも大きなポイントだった。
まず、望月・佐京・マユの三人組は牟那方の隣町たる津久井町の出身だ。
刀根・多賀・剛田は牟那方に実家があり、剛田は港に操業可能な漁船が停泊しているという。
刀根がスカウトしてきた鬼塚・酒寄・宮口・志鎌、そして雨水兄妹も、牟那方市近郊の西部~南部の町からやってきている。唯一望月と行動を共にしていた小牧だけが、牟那方から車で一時間ほど東の町織尾住まいで、現状のメンバーの中では一番実家から離れている。
ちなみに刀根は、器士の反応が多数感知された福岡県東部でも勧誘を試みたらしいが、織尾より東に踏み込むとやたらとガラの悪い暴走族が多く見かけられ、絡まれかけたのでそれ以上踏み込むのは断念したらしい。
「まあ……私はホームタウンでもあるし、牟那方を拠点とできれば嬉しいが」
足元の鞄から、大きめの県内の地図を取り出した刀根は、磁石でホワイトボードに貼り付ける。
「皆としては、他に候補はあるかね?」
「その前に、刀根さんが牟那方を推す理由を今一度しっかりお聞きしたいですね。ホームタウンだから、ってだけではないでしょう?」
真面目モードに切り替わった佐京が、地図に視線を注ぎながら問う。
「そうだね。まず挙げられる利点は、響ヶ丘高校や牟那方高校の存在だ」
胸ポケットから伸縮式の指示棒を取り出し、プレゼンを始める刀根。
「最低でも三千名近い高校生が、市内を『知っている』ということ。故に、牟那方を拠点として活動を始めても、ここに集まることに心理的抵抗が低くなるであろうと考えられる。まだ接触はしてないが、響ヶ丘には特に寮生も百数十名いるからね。そうだろう、多賀くん?」
「ですね、ほとんど体育科の野郎ですけど。おれが知ってる奴も多いですし、比較的頼りにはなるとは思います。……今頃大騒ぎだろうな」
『転移』から既に三日が経過しているわけだが、器械による『知識』がなければ何が起こったのかさっぱりわからないはずだ。級友たちの顔を思い浮かべながら、彼らは今どう過ごしているのだろう、と多賀は思いを馳せた。
「そして次に、耕作地の多さだね。……まあこれは、近隣の町にも同じことが言えるが、隣町の言海には農業高校もある。もしかしたら器士もいるかもしれないし、早めに接触したいところだ――いずれにせよ、土地が広い、果樹園もあれば水源も多い。時間はかかるだろうが、ある程度安定して食料を生産できるはずだ」
地図を見ればわかるが、牟那方市には一級河川が多く、農業用の貯水池も数多く整備されている。渇水とはまるきり無縁といえる。
「尤も、毎年台風が直撃するたびに一部流域では水害が発生しやすいのが玉に瑕だが……危険な河川の下流域には極力住まない、という方向性で凌ぐしかないね。幸いなことに、人口に対して土地は余りある……」
水不足にはならない代わりに、毎年水害に悩まされる元牟那方市民として、少しばかり肩をすくめる刀根。
「それと、漁港と、剛田の存在だ。これに関してはわざわざ説明するまでもないだろう」
「うむ」
刀根の視線を受けて、額の鉢巻――神器【一徹】に触れながら、剛田が頷く。食糧供給に関しては、現役の漁師たる剛田の存在は大きい。海の幸は良質なタンパク源だ。
「俺としては、ソロモン・レプリカにかなり期待している」
剛田は神器【ブラダマンテ】の器士・常盤と、神器【ソロモン】の器士・青木に熱い眼差しを送った。
「正直、俺一人でできることは限られているが、ソロモン・レプリカで念力が使えるようになれば、かなり作業に幅が出てくる。漁は、特に海が荒れ気味な日なんかは揺れとの戦いになるが、念力があればバランスを崩して転んだり船から落ちたりする事故も減るだろう。こう言っては何だが、ずぶの素人でもソロモンを持っていれば、ある程度教えるだけで即戦力になると思う」
操船の技術も勿論必要だが、基本的に漁は力仕事だ。そして素人の場合、慣れない海上の揺れや滑りやすい床などが業務遂行の大きな障害となる。
しかし――ソロモンの念力で船体を『掴む』ことができるならば、そんな心配は無用になる。加えて、数メートル先に手が届くようになれば、網を使った作業は劇的にやりやすくなるはずだ。ソロモンを使いこなす自分を想像して、剛田は年甲斐もなくワクワクとするのを抑えられなかった。
「なるほど、そういう使い方もあるか……」
「色々と作業はしやすくなるだろうな、とは俺も思う」
感心する刀根に、望月もまた土木方面のことを考えて同意した。
「そうだ、そしてこれは望月くんにも関連のあることだが」
ぱん、と指示棒で津久井町を示して刀根。
「まず、望月くんの実家の建設会社が津久井町にあること。現在我々は望月建設の事務所で厄介になってるが、本拠地を移すならばそれほど遠くない方がいいだろう? 重機とかを移動させるのにね」
「だなあ。正直、色々な手間を考えると牟那方くらいの距離で済めば助かる」
頬をぽりぽりとかきながら、望月は答えた。
事務所にはまだパワーショベルやロードローラー、小型クレーン車なども多数置かれている。ある程度の速度で自走可能なクレーン車などは兎も角、問題があるのは足の遅い重機の類だ。重機運搬車は一台しかなく、運転できるのも望月のみ。全ての重機を運ぶためには、目的地と事務所を何往復もしなければならないのだ。
その点、津久井町から牟那方市は、山を越えてしまえばそれほどの距離はない。もちろん、牟那方市そのものが結構広いので、牟那方の『何処に』拠点を置くかで多少変わってくるだろうが。
加えて、どうしても心配だったのが運搬車その他諸々の燃料だが――これは酒寄の神器【みずち】の存在で解決した。一日に二十リットルも生産できればかなり余裕があるし、ブラダマンテでみずちそのものも複製も可能なのだ。燃料を気にする必要はないだろう。
「ってか、オイオイ、お前って社長息子なのかよ!」
面白がるように、身を乗り出す志鎌。
「……まあな。社長息子ってほどご立派なものじゃないが」
「土建屋なんだろ? もしかしてお前ん家ヤーさん?」
「ちげーよ、普通の建設会社だよ!」
からかう志鎌に、苦笑して望月。と、そのときふと視線を感じた。
首を巡らせれば、志鎌の隣に座る酒寄がじっとこちらを見ている。望月と目が合うと、酒寄は捉えどころのない笑みを浮かべて、つっと視線を逸らした。
「あーいいなー家が金持ちってよー。オレだったらそーだな、自分用のクルマ買って、ヤニも、もちっと良いのに銘柄変えれるしなァーどれがいいかなァー」
なんだ今のは、と訝る望月をよそに、志鎌は妄想を逞しくしている。
「だから、それほど大したもんじゃないって、自転車操業だったし。……ところで志鎌、あんたに重機とか運搬車とかの整備って任せられるか?」
自己紹介で、志鎌は自動車整備士を自称していたはずだ。望月の問いに、志鎌は渋い顔で腕を組む。
「……正直、あんまり自信はねー。運搬車とかイジったことねーからな、軽くエンジン覗いて、汚れ取って壊れにくくするくらいしかできねーと思う。言っとくが事故っても修理とかムリだからな」
「いや、それだけでも助かる。ぜひお願いしたい」
「……あぁークソ! これが『向こう』なら金取れてたのになァ、金とかねーからなァチクショー! おい刀根、クルマとかの整備はオレがやってやるからよ、ソロモンのレプリカは早めにオレに寄越せよな! 念力使えたらエンジン周りの手入れがクッソ楽になるハズなんだよ!」
「……まあ、キミの技能を考えると妥当かもしれないね」
口調は図々しいが、志鎌の言っていることは至極尤もだった。思ったよりメチャクチャを言う奴ではない、ということがわかってきたので、安心やらそのギャップやらで刀根は苦笑している。
「まあ、どちらにせよ今日中にソロモンあたりは複製をお願いしようと思ってたんだ。条件的にも指輪なら見つけやすいし……」
「指輪ならあるぜ!」
ババーン! と右手中指にはめたシルバーリングを示して、超絶ドヤ顔の志鎌。サイズもぴったり、条件もぴったりとなれば反対する理由がなかったので、自動的に本日の複製器械獲得者は志鎌に決定した。
「用意がいいことだな……あとは条件的に、位階Ⅳのレプリカを作成可能になるのかな?」
「そうですね、オリジナルの位階がⅤのものです。わたしたちの中だと、多賀さんの魔剣【スルト】か、酒寄さんの神器【みずち】か……」
「……ふむ、鞘つきの剣は今すぐには都合できないし、みずちの方がいいかもしれないね。確か『壷』の形状なら何でもいいんだろう?」
器士は誰が担当するかはおいおい決めよう、と結論付けて、刀根は話を続ける。
「話が脱線したね。それで拠点についてだが、私としては、津久井町で門の破壊に成功したことも大きいと思う」
不意に、右手に例の『特典』――黒い本を召喚し、刀根はぽんぽんとその装丁を叩いた。
「この本の中で、『門』についても少しばかり言及されていた。かなり重要な情報だが――ひとつの門の半径二十キロ以内には、別の門が存在しないらしい」
「ほう。それは朗報だな。つまり津久井町の門を中心にした半径二十キロは、今や安全圏になったということか」
「概ね、その通りだ」
わかりやすくまとめた剛田の言葉に、深々と頷く刀根。
「津久井町からは少し外れるが、牟那方もその『安全圏』に含まれる。仮に、二十キロの範囲の外側に必ず門があると考えても……十分な距離だ。ここに腰を据えて、拠点を整備しながら次なる門を探索するのは、悪くない選択肢だと思う」
地図上の津久井町を中心に、刀根は指示棒でまるっと二十キロの範囲を示す。
「また、治安という点でも牟那方は悪くない。先日、器士の勧誘のために乙幡市の方面にも出向いたがね……あのあたりの治安悪化は、割と深刻だと思うよ」
刀根の言葉に、当日同行していた剛田が渋い顔をした。二人は多くを語らなかったが、暴走族に絡まれて色々あったらしい。
福岡県東部――乙幡西区織尾に家がある小牧は、実家の周囲を危険地帯呼ばわりされて少し凹んだ顔をしている。
「まあ、乙幡から牟那方までは、音賀川を挟んでかなり距離があるからね。あの治安の悪さがこちらに響いてくる前に、ウリエルの『法』を何とかしておこう。さて、最後になるが、」
ぱしぱし、とホワイトボードの地図を指示棒で叩いて、刀根が皆を見回す。
「最後に、私が最終的に牟那方が最良と判断した理由だが――トイレについてだ」
満を持して刀根が切り出した話題に、望月を始めとした皆が嫌そうな顔をした。
「……気持ちはわかる。だが生きていく以上、これは避けられない話題だ。あまりこの点を蔑ろにすると、中世で流行った疫病やら何やらを笑えなくなる」
はあ、と溜息をついて刀根。
現状、望月たちがトイレをどうしているかというと――外で地面に穴を掘って、用を足している。が、この方法は少人数だから何とかなっているだけで、共同体を立ち上げ大人数が集まれば、何らかの対策を打たない限りとんでもないことになるのが目に見えている。
「実は、牟那方はそれほど下水道の普及が進んでないんだ。市街地は割と整備されていて、下水道が市内北西部の処理場に繋がっている。が、」
刀根はカンカンカン、と市の外縁部――辺境のあたりを指示棒で叩く。
「人口密集地ではないこの地域は、トイレはほとんど汲み取り式で、生活用水も浄化槽を通してから水道管に集め、海に垂れ流す形になっている」
「あの辺は、まれに赤潮が発生するな」
うんうん、と剛田が頷く。刀根は渋い顔をした。
「赤潮やら、環境汚染やらの危険性はある。……だが、下水処理施設が機能しない現状、我々はそれに頼るしかないわけだ……」
「……つまり?」
「当面、トイレは汲み取り式! 生活用水は浄化槽を通して海に垂れ流し! あとは頑張って、汲み取り車を我々で運用するしかない……」
刀根の出した結論に、ますます嫌そうな顔をする面々。
「尤も、浄化槽も電力を供給して気泡発生装置を動かし、酸素を送り込んでやらなければ、内部のバクテリアが死滅してしまう。これは、望月くんが持ってるような家庭用発電機や……他の方法で電力を供給するしかない。あくまで、当分はね」
「汲み取ったし尿はどうするんです?」
諦め顔で、佐京が尋ねる。
「幸い、市役所の水道課を漁った結果、バキュームカーや大型浄化槽の位置はわかってる。その辺をどうにか動かすしかない。もしくは……糞便に関しては焼却処分という手もある」
刀根は順に、多賀と志鎌を見やる。うへぇ、という顔で身を引く二人。
「それは……」
「オレはゴメンだぜ……」
「贅沢は言ってられないよ……」
諦めろ、と言わんばかりの刀根。
「ただ、これは将来的には解決できるかも知れないと私は考えている。要は下水処理場を稼動させられるだけの電力を供給する目処が立てばいいわけだ。……その点、私は多賀くんのスルトに期待したい」
「スルト、ですか? 電力に?」
刀身が燃え盛る剣をどう使うのか、と首を傾げる多賀。刀根はそれを見てニヤリと笑う。
「お風呂で思いついたんだ。――スルトを使った、火力発電だよ。水中でも刀身が燃えて、湯を沸騰させられる性質。あれは、蒸気機関に転用可能だ。そして私の専門は、電気工学でね……」
とんとん、と自分の頭を叩いて笑ってから、刀根は真面目な顔を作る。火力発電と蒸気機関という言葉に、望月たちは目を見開いた。
「正直なところ、つい先日までは、思いついても不可能だと思っていた。だが常盤くんのブラダマンテが全てを変えたよ。レプリカのスルトならば、発電機の部品に転用しても惜しくはない。発電機や蒸気機関そのものの部品も、一から大型の部品を構築するのは難しいと考えていたが、酒寄くんのみずち、青木くんのソロモンでかなりやりやすくなる」
だから、と刀根は言葉を継いだ。
「少し、私に時間をくれ。電気工学が専門とはいえ私もまだペーペーの大学生だ。本式に稼動可能なモノを作り上げるのにはある程度時間がかかるだろう……しかし、やり遂げてみせる。それまで、しばらく汲み取りやら何やらで我慢してほしい」
一気に言い切って、刀根はふぅと溜息をついた。
「……喉が渇いた」
「あ、お注ぎします」
思わぬ長口上に、苦笑いして喉を押さえる刀根に、席を立った酒寄がそそと歩み寄って、紙コップに水を注ぐ。
「ありがとう。……生き返るな。さて、私からは以上だ。皆はどう思う?」
刀根に問われたが――望月たちは、苦笑しか出なかった。
「そこまで言われて、反対意見はありませんよ」
「代案出せって言われても無理だし」
「メンドくせーからもう牟那方でいいわ」
賛成多数、反対なし。刀根は満足げに頷いた。
「よし、じゃあ拠点は牟那方ということで……肝心の名前はどうする?」
「牟那方が本拠地なら……牟那方共和国とか?」
青木が首をかしげて提案する。
「共和制じゃないからなぁ……」
「え、そういう問題か?」
「サンダーファイヤー……」
「それはない」
やいのやいのと話し合ったところで、ふと多賀が閃いたようだった。
「牟那方市国、なんてのはどうですかね? ヴァチカン市国のノリで」
サイズ的にもちょうどいいし、と多賀は肩をすくめた。
「……ふむ。悪くはないか」
「無難でいいんじゃないですかね」
「もうメンドいからそれでいいわ」
またもや反対意見は出ず、共同体の名前は『牟那方市国』に決定した。
市民、僅か十余名の小さな『国』だ。
だが、これからもっと大きくなる――
「よろしい。熾天使の名の下に、汝らを承認する」
ウリエルが厳かに告げ。
机の上に置かれた『法』の草案を、その手の天眼旗で打ち据えた。
眩い青の光が瞬き、A4のコピー用紙で形作られた草案が、美しい青の装丁で彩られた。
「すげえ、こんな権能が……!」
「汝らの法である。心して運用せよ」
燃え盛る炎のような天眼旗を手に、ウリエルの機械じみた声は、しかしどこか優しげだった。
「よし。では無事コミュニティも成立したことだし――」
刀根が再び、青木と常盤を見やって、ニヤリと笑う。
「そろそろ、器械の複製を試してみようじゃないか」




