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こっち向けの魔法だよ!-君を好きになる魔法-  作者: パーシバル田中
中学生編

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26/29

26.紫海蘭

帰ってからずっとノートを見返していた。

水瀬の顔を思い出しながら、何度も唱え続けた。


『りり、そんなことする必要ありませんわ。』


どうして邪魔するの?

私はこんなに頑張っているのに。


『私がずっと他人の真似をし続けたら、どう思いますか?』


……あなたも水瀬のようになりたいの?

どれから始めればいいのかな?


『そうですね……髪型——』


『流されてます!協力、しちゃってます!』


やっぱり、やりたいんじゃん。

それに、これは大事なことなんだよ?

あんなことがまたあったら大変だし。


『それは、そうですが。嫌な予感がしますわ。』


私は後ろ髪を持ち上げながら、あり得ないと思った。

未来なんてわかりっこないのに。

窓を見ると、何とも無様なポニーテールが反射していた。


『練習!練習が、必要です!』


明日までに、習得する!

そう心に誓った。


天才的な考えを閃いてしまった。

ポニーテールと、他の練習は両立できる。

何から練習するかは決めていた。


「な……なぎ……さ。」


熱が出た。

やめておこう。


「なぎさ……ちゃん」


微熱くらいだろうか。

これくらいなら、大丈夫そうだ。


『何が大丈夫なのかわかりませんわ……』


あなたは私なんだから、わかるでしょ?

それよりも、こんなことしたら水瀬が温かくなっちゃうね。

たしか、名前で呼んでほしがってたし。

明日は、私から話しかけよう。

きっとびっくりしちゃうんだろうな。


その後、眠くなるまで練習を続けた。


◇◇◇


昼休み、目の前には水瀬が座っている。

準備は万端だ。実践あるのみ。


まず、私は顎を引き、じーっと見つめた。

そして、ニコッと笑い、反応を待つ。


完璧に決まった。そう確信した。


「……りり?どうしたの?」


期待した反応じゃない。

そうか、忘れてた。

しゃがまないとよく見えないかもしれない。


「えっと……可愛いね?」


ありがとう。

でも、そこじゃない。

後ろを向いて身体を揺らしてみせた。


「あ、おんなじだ!かわいー!でも、少し崩れてるよ?直してあげる!」


完璧だったはずなのに……!


「嬉しいなー!私と一緒にしたかったんだね。」


そうだよ。やっとわかってくれた。

水瀬は鈍感だ。


「なんか、付き合ってるみたいだね!」


慣れた手つきでポニーテールを完成させた水瀬が、耳元で囁いてきた。

水瀬の方に向き直すと、いつもの水瀬とは少し違って見えた。


「つき……あう?」


つきあってるってなに?

いい、ことば?


「つきあってる……わかんないよ。」


お揃いは嬉しいけど、それがつきあうってことなの?


「りりは、私のこと考えたりする?」


私はこくんと頷いた。


「ずっと一緒にいたいって思う?」


同じ動作を繰り返した。


「私もだよ。」


一気に顔が熱くなった。

私と、同じ?

これが、付き合うってこと?


「でも、これだけじゃダメなんだよ。」


……何が、必要なの?

わかるように言ってよ。


「大事なこと、してないから。」


今日の水瀬は意地悪だ。

なんにも教えてくれない。


「なんてね!実は私もよくわかんないんだ!」


今日の水瀬はよくわからない。


「……バカ。」


声にもならないほどの大きさで囁いた。


勝手に溢れてくる涙を必死に抑え、水瀬の足をツンツンと突いた。

痛い!と、騒いでたけど、そんなの知らない。

水瀬はバカだ。大バカだ。

……私の気持ちも知らないで。


——りりの気持ち?自分でもわかってないのに何を言ってるんだろう。


「ちょっと!つっつかないでよー!」


わかんないんだから、こうするしかないでしょ。

教えてくれないんだから。


「りーりー!聞いてる!?……えい!」


手の自由を奪われてしまった。

水瀬の体温が、手首を通して伝わってくる。

胸がきゅっと苦しくなった気がした。


「な、凪沙……ちゃん。」


えー!と、大きい声を教室中に響かせた。

周りの人たちが一瞬こちらを向いたが、すぐに戻った。


「凪沙って言ってくれた!もう言ってくれないのかと思ってたよ!」


練習いっぱいしたんだよ。

温かく、なったかな。

なってたらいいな。


捕まれている手首に意識を集中させたが、特に変化はないように感じた。

お読みいただきありがとうございます。

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