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こっち向けの魔法だよ!-君を好きになる魔法-  作者: パーシバル田中
中学生編

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24/30

24.希望

三学期二日目、昼休みに私たちは話し合いをしていた。

昨日渡した、例のものについてだ。



浮かれ過ぎていたのかもしれない。

なんてものを、渡してしまったんだろう。


『全くその通りですわ。浮かれすぎです。』


仕方ないでしょ。夢みたいな時間だったんだから。


『仕方ないです!クリスマス、みんな浮かれます!』


うんうん、あなたはいい子だね。

私はもうあなたとしかお話ししないことにしたよ。


『ダメです!みんな、一緒です!』


だって、浮かれてたなんて言うんだよ。


『あなたが言ったのでしょう。』


そうかも、しれないね。

でも、あなたもだったよ?


拗ねていると、トントンと、私の肩を誰かが叩いている。

顔を上げると、水瀬がもじもじしながら立っていた。

フローラが何やら騒いでいたが、それを無視して意識を水瀬に向けた。

なんだか顔が赤いように見える。


「これあげる!恥ずかしいから家で読んでね!」


水瀬が紙に包まれた紙をくれた。

なんだ、これ。


「昨日お手紙さんくれたでしょ!お返し!」


これがお手紙?

なんでわざわざ包むんだろう。

……開ける場所、ないけど。


「ほんとに嬉しかったの!手紙くれると思ってなかったから。」


紙を裏返してみると、キラキラしたハートのシールが貼ってあった。

剥がしたら開きそうな感じがする。

でも、わざわざ貼ったんだから、剥がしたらダメなんだよね?

可愛いし。


「これ、開かないよ。」


水瀬がポカンと口を開けて固まっている。

間違った手紙を渡したのかもしれない。

私は持っている手紙を水瀬に手渡した。


「え?こうやって開けるんだよ。」


水瀬が躊躇うことなくシールを剥がしている。

貼ったのに、剥がすの?

意味がわからない。

中身だけくれればいいのに。

でも、開け方はわかった。


改めて水瀬から手紙を受け取り、シールを貼ったり剥がしたりを繰り返してみた。


「そう、なんだ。」


また一つ賢くなってしまった。

水瀬はどんなことを書いたんだろう。

やっぱり、くまさんについてかな。

こんなに可愛いし。


机の横に掛けている鞄には、くまのぬいぐるみが付いている。

水瀬の鞄にも、同じものが付いていた。

私はそれがたまらなく嬉しかった。


「あと、写真撮るやつはプリクラって言うんだよ!」


ぷりくら……なんか可愛いな。

それから水瀬が、くれーんげーむ、おむらいすを教えてくれた。


◇◇◇


水瀬がいない間、手紙を眺めていた。

これが、本当の手紙というものなんだ。

表面を見ると、「りりへ」と書かれていた。

りりへって何だろう。

後ろには、「凪沙より」とも書いてある。

水瀬凪沙っていう名前のはずなのに。


「星月さん、ちょっといい?」


ビクッと身体が震え、咄嗟に手紙を隠した。

声の方を見ると、見たことがあるような顔があった。

たしか……いや、わからない。


「前から気になってたことがあるんだけど。」


手紙なら、あげないよ。

これは私がもらったんだから。


「なぎちゃんに、頼りすぎじゃない?」


この人は何を言っているんだろう。

私が、水瀬を頼ってる?


「えと……ど、どう……して?」


たしかに水瀬は私を守ってくれている。

でも、なんでこの人に言われないといけないんだろう。


「どうして?わかんないの?」


わからない。

わかるなら、教えてほしい。


「なんで……なの?」


言ってくれないと、わかんないよ。

この人は、水瀬の何なの?


「なぎちゃん、無理してるんだよ。あなたが誰とも話さないから。」


水瀬が、無理してる?

この人は誰かと間違えている。

だって、いっつも水瀬はニコニコしてるよ。

約束だって、してるんだから。


「わ、わかん……ない。」


目の前の人は顔を真っ赤に染めている。

何故か目が離せない。


「なんにもわかってないんだ……なぎちゃんがやってること、わかってる?」


やってること……?

手紙を書いたこと?

どこかに行ってること?


「星月さんと、周りを繋いでるの。こんなことも、わかんない?」


水瀬は誰かの用事を私に教えてくれる。

でも、私は頼んでない。

水瀬が本当に嫌なんだったら、やめたらいいのに。


「……」


やめたらどうなる?

私は、ちゃんと話せるのかな。

クラスの人や先生たちと。


無理だ。

出来なかったんだから。

水瀬が現れるまで、ずっと。


「わかんないよね。なぎちゃんは、優しいから。嫌な顔なんて、見せないし。」


水瀬が、私から離れる?

いやいや、あり得ないよ。

だって、約束……した……


——人は、変わるもの——


違うよ。違うって言ったでしょ?

あれ、違うか。

変わらないよ。って言ったんだ。

水瀬が言ったんだよね?

絶対私から離れないよって。

言ってたよね?


『あなたを守る。いつまでも。絶対に。と、言っていましたわ。』


ほら、言ってるじゃん。教えてあげなよ。この人に。

水瀬は、私から離れるわけないんだから。


「ねえ、星月さんは、私のこと覚えてる?」


私から奪おうとしてるんだ。

水瀬に近づかないでって。


「わかんないでしょ?あなたは知ろうとしないから。」


ダメだよ。

水瀬は私と一緒にいないと。

クリスマスだって、一緒に過ごしたんだから。

知らないでしょ?内緒だもん。


「なんで、笑ってるの?あなた、おかしいよ。」


楽しかったな。ぷりくらって、言うんだっけ。

さっき、教えてくれたんだから。


「たの、し……いね?」


くれーんげーむで何にも取れなくて。

あと、なんだっけ。

おむ……思い出せないけど、変な味だった。

水瀬は不思議な味のものが好きことも知っている。


そして、水瀬が迎えに来てくれたんだ。

教えて、あげたの。前の日に。


「どうしたの!?」


あれ、水瀬だ。


「明日香!?大丈夫?」


何してるの?

どうして、そっちにいるの?


「な、なぎちゃん……ごめん。ごめんね。」


ハンカチ、他の人にも使うんだね。


「何があったのか、教えてほしいな?」


頭だって、撫でてるし。

でも、知ってる?

それ、何も感じないんだよ。


「私、なぎちゃんが大変だと……思って。」


大変だよ。

よくわからない人と話さないといけないんだもん。


「それで、星月さんが——」


ねえ、聞こえないよ。

二人でこそこそ話さないでよ。

私に聞かれたくないこと、話してる顔してる。


◇◇◇


『——!』


声が、聞こえる。

いつもの、安心する。


『りり!』


何を、そんなに慌ててるの?


『心配しましたわ。本当に。』


心配……


『いいですか?目の前の光景は、見えますわね?』


目の前……

あぁ。あれは梅田さんだ。

たしか、入学したばっかりの時……


『そうです。よく覚えていました。えらいですわ。』


えへへ……

あれ、泣いてるね。

どうしたんだろう。


『それは……今は、考えなくてもいいですわ。』


そっか。


『これは、不本意なのですが。いいですわね?』


うん。わかった。



再確認するように目の前の光景に意識を向けた。


目の前には梅田が私を見て泣いている。

水瀬は梅田の話を聞いている。


「梅田……さん。ごめん、ね。」


梅田の震えが少し和らいだ気がした。


「わ、わた……えと、りり、緊張……しちゃって。」


真っ青だった梅田の顔も、少しずつ元に戻ってきている。


「りり、大丈夫!私が何とかするから。」


水瀬が言うなら、多分大丈夫だ。

声、出てよかった。


「明日香。私は、無理してないよ。やりたいから、やってるだけ。」


肩の力が抜けたような気がした。

もう、大丈夫。


「だから、私は大丈夫。心配しないで!好きでやってるだけなの。本当に。」


今まで気付かなかったが、いつも騒がしい教室が静まり返っていた。

水瀬と梅田の話し声だけが、静かに響いていた。


「ごめんなさい。なぎちゃん。余計なこと、しちゃった。」


最後に水瀬が何かを言って、梅田が窓際の席に歩いて行った。

小さい声だったから、聞こえなかった。


「りり、大丈夫?怖くなかった?」


怖くなかったよ。水瀬が来てくれたから。

少し驚いたけど。大丈夫。


私一人だったら、こうはならなかった。

水瀬が来ただけで、全て上手くいった。


私も水瀬のようになりたいって、そう思ったんだ。

お読みいただきありがとうございます。

中学編も残り少なくなってきました。

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