表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こっち向けの魔法だよ!-君を好きになる魔法-  作者: パーシバル田中
中学生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/27

21嫉妬

水の粒が足元を容赦なく叩き続けている。

一歩足を進めると、私の全てを濡らした。

手を差し出すと、雫は塊となって手の平を駆けだした。

ゆっくりと傾けると、塊は抵抗することなく零れ落ちた。

私は、その様を夢中で眺めていた。


「それ、楽しいの?」


目の前には花柄の傘をさした水瀬が立っていた。

私は、咄嗟に手を隠した。


「私も、やろうかな?」


水瀬が手の平に水を溜め、流していた。

何が楽しくて手を濡らしているんだろう。


「んー、よくわかんないや!それより、風邪ひいちゃうよ?」


水瀬に引き寄せられ、タオルで頭を拭かれた。

なんで、水瀬がここにいるんだろう。


「一緒に行く約束してて、正解だったね!面白いりりも見れたし!」


約束……した覚えはないけど、楽しいんだったらいいや。

そんなことよりも、水瀬の記憶を消してやりたい。


「……おもしろく、ない。」


私が腕を掴むと、水瀬が一瞬固まった気がした。

人生初の相合傘をしながら、学校を目指して歩き出した。


◇◇◇


「みんな、怒ってる……よね。」


門をくぐると、急に不安になってきた。

きっと教室に入るなり囲まれて睨まれるに違いない。


「昨日も言ったけど、ありがとうって伝えておいてって言われたくらいだったよ!」


ありがとう?なんで?


「だから大丈夫!あと、あの二人もすっごい怒られてた!私はまだ許してないけど。」


それでも、謝ろう。

何故だか今は、何でも出来る気がする。


「何かあったら、私を頼ってよ!」


そうしよう。今までとあんまり変わらない気がするけど。


「水瀬ちゃん……あ、ありがとう。」


靴を脱ぎながら、少し早口で言った。

こんなことも、出来てしまう自分が恐ろしい。


「水瀬ちゃん!?昨日は凪沙ちゃんって呼んでくれたのに!?」


私はしらんぷりをして、水瀬を置いていくように教室に向かった。


◇◇◇


何故、こんな状況になっているのか。

水瀬は、大丈夫だと言っていた。

それなのに、どうして私はみんなに囲まれ、俯いているのか。


水瀬に助けを求めようにも、私の席を中心とした檻から追い出され、役に立ちそうにない。

私を頼ってよ!と、豪語していたにもかかわらず。

何よりも、なんでも出来そうな気がするというのは、文字通り気がしていただけだった。


「ちょっとー!なんでなのー!」


檻の外からキャンキャン騒いでいる水瀬が煩い。


「星月さん。」


机を挟んで向かい合っている、黒髪ロングの女の子が口を開いた。

多分、この女の子が親玉だ。


「大丈夫?殴られたって、聞いたけど。」


頭の中がはてなで埋まる。

聞き間違いだろうか。


「水瀬が教えてくれたよ。ひどい顔しながらね。」


どうやら、怒ってはいなさそうだ。

ひどい顔の水瀬、見たかったな。


「あ……あの……」


怒っていないのなら、目的を果たせそうだ。


「ご、ごめ——」

「ごめんね。保健室、いくべきだった。」


あれ?私の声、どこいった?


「気を失ったとも、聞いてたし、心配したんだけど。あのあとすぐ競技に出ないとだったし。」


確か、私は水瀬と……

来なくてよかったかもしれない。


「えと……水瀬ちゃん、が……いた。」


「うん。それで、大丈夫かなって思っちゃって。ごめんね。」


その考えに至ったことに感謝したいくらいだった。


「りりも、ごめん……なさい。」


黒髪ロングが水瀬に、言わなかったの?とため息交じりに聞いた。

言ったよ!と返していたが、身に覚えがない。


「あのね、あなたたちのペアが走れなかったから、私のペアが2回走ったの。それも、じゃんけんで勝ち取ってね。」


なんだかわからないが、楽しかったのならよかった。


「だー!!!もう!りりを囲まないでよ!」


一瞬の隙をついて、檻に侵入した水瀬が手を広げて騒いでいる。

その光景が可笑しくて、肩を震わせた。


「初めて、見た。星月さんが、笑ってるところ……」


何を言っているんだろう。私だって、可笑しかったら笑うよ。


「えー!私でさえ見たことないのに!ずるい!」


水瀬の前でも、けっこう笑ってると思うけど。


「えへへ……みんな……ありが、とう。」


大袈裟なくらい水瀬が喜んでいた。

他の子たちも、優しい顔をしていた。

HRのチャイムと共に、それぞれ席に戻っていく。


「あなたたち、随分——だね。」


黒髪ロングの子が手を振って去っていった。

私は、その姿を微笑みながら見ていた。


◇◇◇


すっかり陽が落ち、暗くなった外を眺めていた。

特に理由はないし、余韻に浸っているわけでもない。

相変わらず雨は降っているし、面白いことなど、あるはずもない。

ただ、そこに水瀬が来るような気がして、目を離せなかった。


『初めてですわ。こんな、感情になるのは。』


なにが?


『わかりませんわ。なんなのでしょう。温かい……』


私も……同じ。


『当然ですわ。あなたは、私なのだから。』


私は、あなた……だね。


『夢みたいですわ。りりから、こんなにも……』


水瀬の、おかげだね。


『それは、わかりませんわ。人は変わるものです。』


なにそれ。水瀬は約束を守るよ。絶対。


『純粋なあなたは魅力的ですが……』


『嫉妬です!フローラから、嫉妬の匂いがします!』


嫉妬?なにそれ。


『ティンク。煩いですわ。私はりりが心配なだけです。』


ねえ、嫉妬ってなに?


『……わからない方が、いいですわ。』


りり、わからないの、いや。


『その時が来たら、わかりますわ。』


教えて、くれないんだね。


『りりが取られて嫌になってるみたいです!私には、わかります!』


変なの。あなたは私なのに。


『余計なことは、言わなくていいですわ!』


なんか、必死だね。


『バレバレです!全部、公開中です!』


私は、どこにも行かないよ。

あなたたちも、どこにも行かないでね。


『当り前ですわ!とられたなんて、微塵も思っていませんわ!』


もう、眠たいよ。

今日はずっといい気分だったんだ。

最初から、最後まで。


水瀬は、もう寝たのかな。

水瀬は温かいから、隣で寝てほしいんだ。

そうしたら、寒い日でも好きになれる。

いつか——きっと——いい……よね。

22話も明日19時に投稿されます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ