20.香水草
『りり……』
煩いな。あっち行ってよ。
『私は……』
もう、どうでもいい。
『ごめん……なさい』
煩いって、言ってるでしょ。
——もう、終わったんだから。
窓から入ってくる音が鬱陶しい。
入ってくる日差しも、煩わしい。
「窓、閉めるね。」
私は返事もせず、ただ天井を見つめていた。
この感情をどうしたらいいか、わからなかった。
口を開けば、水瀬を傷つけてしまうかもしれない。
私のせいで、何もかも台無しにしたのだから。
「りり。ごめんね。」
何故、謝るのかわからない。
水瀬は、私を助けてくれた。
謝る意味がわからない。
無視していると、水瀬があの後何があったかを話し始めた。
どうでもよかったから聞き流した。
ようやく話し終わると、沈黙が流れた。
空気が重く、息が詰まる。
いっそ、私を責めて欲しいと思った。
あなたのせいで、走れなかった。一番になれなかった。
あなたと組んだせいだ、と。
「りり。失望……した?」
あなたと出会わなければ、こんな感情、知らなかった。
「私、約束。した。りりと。」
したね。一方的に。
「あなたを、傷つけないって。」
それが、どうかした?
やめたいって、こと?
「守れなかった。」
やっぱり、嫌になったんだね。
「気付くのが、遅れたから……」
何が言いたいのか、わからない。
水瀬は、私と離れたいと言いたいはずなのに。
遠回しすぎて、難しい。
「私は、私が許せない……」
勘違いしていた。
水瀬は、私といてくれるんだ。
「な……なぎさ、ちゃん。」
水瀬が見たこともない顔で、私を見つめた。
「約束……破ってない。逆。わ、私が……やぶった。」
涙で視界が霞む。
私は、なんでこんなにも自分勝手なんだろう。
「ごめん……な、さい」
ベッドが、軋む音がした。
仰向けになっている私の横で、水瀬が横向きに寝転んでいる。
顔を水瀬の胸元に引き寄せられ、身体が横を向く。
私は、されるがまま動かなかった。
「りりは何も悪くない。私が、最初から遠ざけていれば……手をしっかり握っていれば。今頃は、りりと笑いあってた、一番じゃなくても、何でもよかったの。りりといれれば。」
「私が、あなたを守るよ。絶対に。いつまでも。」
気付いたら、私も腕を回していた。
自ら水瀬を求めるように。
そこからのことは、何も覚えていない。
21話は明日19時に投稿されます!




