表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こっち向けの魔法だよ!-君を好きになる魔法-  作者: パーシバル田中
中学生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/30

18.リズム

特訓を続けて、1時間くらい経っただろうか。

私たちは走ることはおろか、歩くことさえ満足にできなかった。

ただで転んでいたわけではない。走れるように、工夫はした。

例えば、水瀬がタイミングを取りやすいように、声を出してくれた。

それでも、うまくいかなかった。


私は、足が限界を迎えたため、ベンチで一人座っていた。

水の入ったペットボトルをふくらはぎに当てると、冷たくて気持ちいい。


水瀬は、あり余った元気を発散させるため、

公園にいた人たちと走り回って遊んでいる。


走れない原因は、私だ。

水瀬と合わせられていないから。

多分私以外の人だったら、今頃走って水瀬と笑いあっていることだろう。

想像すると、胸が苦しくなる。

でも止められない。


そもそも、運動は嫌いなんだ。

人間と関わることも。

それは、水瀬も知っているはず。

一番になりたいなら、他に相応しい人がいたはずだ。


公園にいた人たちと、走りまわっている水瀬を目で追う。

私は、水瀬の元気についていけない。

水瀬はもっと練習をしたがっていた。

でも、休むように勧めてくれた。


少し気が付いたことがある。

水瀬は足が速い。歩くときも、走るときも。

当然だけど、私より断然早い。



いつもは、私に合わせてくれている。

とん、とん、とん、

指でリズムを取った。

そういうことか。

二人三脚の神様が、降りてきた。

そんな気がした。


少し経ってから、水瀬が戻ってきた。


「たのし、かった?」


私は、立っている水瀬を見上げる。

汗だくになって、髪が乱れているのにもかかわらず、キラキラ輝いている。


「楽しかったよ!くたくたさんになっちゃったけど!あ、そうだ!」


噂に聞くスマホを、バッグから取り出し、カシャッという音がした。

初めて間近で聞いた。恥ずかしい。


「最後に、もう一回だけ、やろ!」


バッグにスマホをしまいながら、驚くべきことを口にした。

まだ、できるんだ。私はずっと休憩していたけど、水瀬は走り回っていたのに。

でも、試してみたいことがあったから丁度いい。


「あ、あのね。少しだけ……歩いてみて。いつも通りに。」


水瀬は、私の前を歩いたが、これは私のリズムだ。

水瀬はもっと速い。


「もうすこし……速く。」


多分、これが水瀬のリズム。


「これ、何か意味あるのー?ちょっとだけ、恥ずかしいんだけどー。」


……ちょっとだけなんだ。

やらせた私が言うのもなんだが、私はやりたくない。


「た、たぶん。リズムが、大事。」


トン、トン、と、リズムを合わせていると、突然水瀬が視界に現れた。

ビクンと肩を跳ね上げ、心臓の音が早くなる。


「じゃあ、りりが私に合わせてくれるの?なんか、うれしいなー!」


水瀬が、更に距離を潰し、視界が水瀬で埋め尽くされた。

咄嗟に目を瞑り、視界が消えた。


「ち、近い……」


薄目で水瀬を見たが、まだそこにいる。

なにが、起きてるの?


長いまつ毛、綺麗な瞳、絹のような肌。

どれをとっても理想的な女の子。


「りりって……とっても、可愛いよ。」


水瀬の吐息が、唇にかかる。

名前の知らない感情が、脳内を蝕んでいく。


「まつ毛が長いし、髪もサラサラで羨ましい。ほっぺも柔らかくてすべすべしてる。ここも——」


咄嗟に水瀬の肩を掴み、遠ざけた。

心臓が破裂しそうだ。

観察したかっただけ?

何を考えていたの?

水瀬は、何をしようとしたの?



そうだ!練習しなきゃ。

水瀬が変なことをしたから、忘れるところだった。


「あ、足。結ばないと。」


ごまかすように紐を探し、足を結ぶ。

今度は暴れなかった。


「まず、ゆっくり歩いてみよう。それから、できそうだったら少しずつ速くしてみよ!」


良かった。いつもの水瀬に戻ってる。

あとは、私が合わせられるかだ。


いつもの合図で、歩き出す。

1歩、2歩とイメージ通りに、足を出す。

10歩を超え、新記録を樹立した。


「すごい!できてるよ!私たち、一つになってる!」


水瀬が喜んでいる。大袈裟なくらいに。


「少しスピード上げてみても大丈夫?」


水瀬がやりたいなら、いいよ。


少しずつ、水瀬のリズムが速くなっていく。


「あ、あの……も……むり——」


苦し紛れの声を出した。

これ以上スピードは速くならなかった。

伝わってくれて嬉しい。


「あはは!すごい!すごいよ!走れてる!きもちー!」


こんなに辛いのに、何がそんなに楽しいんだろう。

そもそも二人三脚って何のために、するんだろう。


「ほんと、むり……」


体力の限界に達し、膝から崩れ落ちた。

当然、水瀬も倒れた。


「大丈夫!?無理させちゃってごめんね。」


私は急いで首を横に振った。


「怪我してない?見せて?」


膝を見ると、少し血が出ていた。

水瀬がハンカチを濡らして、ポンポンと、優しく拭いてくれた。

最後に、頭を撫でられた。


「いける……私たち、1番、狙えるよ!」


本当に、一番になりたいんだな。

水瀬のために、できることはしたい。

これ以上、足は速くなれないけど。


「がんば……ろうね。」


思いもしなかった。

誰かのためにこんなことを言う日が来るなんて。


その後、水瀬が、本番まで毎日練習しようね。

と、耳を疑いたくなる提案をしてきたが、例の表情をされて渋々了承した。


「帰ろっか!」


水瀬と遊んでいた人が、バイバイ!と、駆け寄ってきた。

大きい人と、手を繋いでいる。

空いた手で、小さい人の頭を撫でている。

水瀬も、私にやっていた。

小さい子は、満足そうに笑っている。


私は、何も感じなかったのに。

18話も明日19時投稿されます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ