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こっち向けの魔法だよ!-君を好きになる魔法-  作者: パーシバル田中
中学生編

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16/28

16.水星

白米は好きだ。

甘い匂いがするし、温かい。

牛乳は苦手。

変な匂いがするし、濁ってる。


この日は、喉が何も受け付けなかった。


暇だから、給食を頬張っている水瀬を眺めることにした。

楽しそうにもぐもぐと顎を動かしている。

ただ、食べているだけなのに、可愛いのが不思議だ。


そうだ。

話し合いの時に、頑張ってニコニコしてみるのはどうだろう。

少し考えたが、やめることにした。

私と水瀬では、あまりに違いすぎる。


水瀬と視線が合ってしまった。

もごもごと声を出そうとしていたが、何を言っているのかはわからなかった。



◇◇◇


給食の時間が終わり、私は俯きながら座っていた。

水瀬が真横で私を見つめている。


「な、なに?」


何かいい作戦でも思いついたのだろうか。


「さっき、私のこと見てたでしょ?お返し!」


特に、何も無いみたいだった。


「みんな呼んでくるね!ちょっと待ってて!」


水瀬が立ち上がり、ふわっと甘い香りを漂わせながら、歩いて行った。

さっきも見た風景だ。

鼓動が早くなり、呼吸が浅くなる。


『りり。落ち着いて。私もついているわ。』


あなたたちが、代わりに言ってくれたらどんなに楽だっただろうか。


「お待たせ!では、作戦会議を始めます!」


作戦会議……私が、怒られるだけの。


「議題はなに?」


背の高い、ロングヘアーの女の子が、水瀬に言う。

名前は……わからない。


「私たち、水星ペアが、一番速く走ります!」


それは、議題ではない。宣言だ。

そんなことより、早く私が言い出さなくちゃ。


「じゃなくて、昨日のこと。話したくて。」


昨日のこと……

一刻も早く忘れたいこと。


「色々考えたんだ。私も。だけど、これが一番いいのかがわかんな——」


——りりが……早く言わないと……!

『コミュニケーションで、一番大事なのは、勢いですわ!』

頭の中で、強いイメージが流れ込んできたような気がした。


「あ!あ……の。」


自分の声が遅れて耳に届いた。

水瀬が驚いたように私を見る。

他の6人も、目を丸くしている。


「き、昨日は……えと……」


次の言葉が出ていかない。

今まで、出てたのに……


水瀬が、ニコッと笑いかけてくれた。

そして、手の平に爪が食い込むほど強く握りしめた拳を、優しく包み込んでくれた。


水瀬が私に勇気を分けてくれた、そんな気がした。


「ご、ごめん……なさい。き、昨日。えと……あの、話すの……できな……くて。」


言えたのかは、わからない。

でも、私の口から音が出ていたのは、わかる。


『言えてたわ。りり。頑張ったわね。』


少しの沈黙、永遠のように感じられる。


「別に。謝ることではないと思うんだけど。」


怖い顔じゃない。

優しい顔だ。


「でも、話してくれて良かったよ。私こそ、感じ悪くてごめん。」


首を横に振る。それしかできなかった。


「えーと。他の皆さんは、何か言いたいことは、ありますか?」


他の女の子たちは、首を振っていた。


「じゃあ、仲直り、ってことでいいんだよね!?よかった!」


それから、走順は1番目になったと、黒髪ロングの子が教えてくれた。

明日からまた練習がんばろうね、とも。


やっぱり、水瀬がいると全て上手くいく。


みんなと別れ、私と水瀬だけが残る。


「水瀬ちゃんの、考えたこと……知りたい。」


たしか、水瀬は考えがあったはずだ。


「え!あー。なんだっけなー。忘れちゃった!」


忘れちゃったのなら、仕方ない。

水瀬のことだから、一番は譲ってあげるから、とかだろう。

……さすがに違うと信じている。


「……それより!今日、放課後に練習しようよ!昨日できなかったでしょ?一番にならないといけないし!」


一番にならないといけないのか。

でも、無理だと思うよ。


「だめ……ですか?」


水瀬はたまにずるい顔をする。

そんな顔をされたら、全人類が迷わず首を縦に振ることだろう。


「……いいよ。」


練習なんて、したくなかったのに。

水瀬があんな顔をするからだ。


「やった!がんばろーね!」


私は水瀬のお願いを断ることができないみたいだ。

でも、それでいい。


「が、がんば……ろうね。」


やっぱり、水瀬は太陽なんだ。

この太陽に触れられるようになりたいと、思った。


「楽しみになってきた!早く放課後にならないかな!」


そういえば、ずっと気になっていたことが、一つあるんだった。


「水瀬ちゃん……二人三脚、やったこと、あるの?」


「んー、ないかな!」


……え?あんなに、自信満々だったのに?


私は、途端に不安になる。

やっぱり、この太陽には触れたくないかもしれない。

そう思った。

16話も明日19時に投稿されます。

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