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こっち向けの魔法だよ!-君を好きになる魔法-  作者: パーシバル田中
中学生編

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14/28

14.勘違い

土の香り、太陽の容赦ない日差し。立っているだけで汗が出る。

加えて、体育祭。走りたくないのに、走らされて順位を付けられる。

最悪のイベントだ。


練習なんて、疲れるだけで何の意味もない。


「ねえねえ、走る順番どうしよっか?」


最初と最後でなければ、いつでもいい。

でも、水瀬は最後がいいとか言いそう。


「私、あんまり自信ないから、2番目とかがいいなっ!」


自信ある人なんて、水瀬くらいだろう。

種目決めの時なんて、一目散に名前を書きに行ってたし。

そのせいで、私も走ることになったんだけど。



二人三脚って、走れるものなの?


『答えははっきりしていますわ!走れるわけがないでしょう。』


そうだよね。

なんだか不安になってくる。

でも、水瀬と一緒なら、いいか。


「星月さんは——」


知らない声が、聞こえた。

私に、誰か話しかけた?

周りを見渡すと、複数の視線が、針のように突き刺さっている。


「…….え?」


「星月さんと水瀬さんのペアは、何番目に走りたい?って聞いたんだけど。」


私に聞かないで、水瀬に聞けばいいのに。

あぁ、そうか。水瀬に最初と最後は嫌だと伝えていなかった。


「星月さーん。聞こえてる?」


待って。

聞こえてるけど、先に水瀬に伝えなきゃいけないことがある。


「あ、えと……み、みなせ、ちゃん……」


……あれ?

私は周りを見渡した。

あるはずの姿が、ない。


——い、いない……?ど、どうし、たら。り…りりが、こたえる?


「水瀬さんは、早退したよ?聞いてたよね?」


嘘だ。聞いてない。

この人は、嘘を吐いている。

水瀬が、私に黙っていなくなるはずが——


先生が、何か言っていたような……

……なんて、いってたんだっけ。


『危険です!離れてください!!』


どうなんだっけ。

ねぇ、聞いてたんでしょ?


「んー。私たちで決めるよ?」


あ、そっか。水瀬がいないなら、私が言うのか。


……声って、どうやって出すんだっけ。


「水瀬さんが、いたらなー。」


「——してるの?」


出てよ……


「先に——よ。」


二番目か……三番目……


「——決め——」


もう、やめよう。


「——」


ザーッという風の音だけが聞こえる。

それすらも、邪魔だ。


水瀬以外の声……聞きたくない。


『りり。無理しなくても、大丈夫。私たちがいますわ。』


いつもの、安心できる声、どこ?


『りり。ここにいますわ。大丈夫。』



ひとりに……なっちゃった。



◇◇◇


家に帰ってから、ずっと床に寝転んでいた。

何もする気力が起きない。

頭の中がごちゃごちゃして、考えがまとまらない。


『りり。落ち着きましたか?』


全然、落ち着かない。


自分の身体じゃないみたい。

考えてみれば、この人生で言うことを聞いてくれた試しがない。



水瀬が早退していた。

なんで、わからなかった?

どうして、水瀬は言わなかった?

約束のこと、忘れちゃったの?


『きっと、心配かけたくなかったのよ。』


急にいなくなったら、どうなるかくらい……わかるよね?


『水瀬ちゃんだって、わからないことはありますわ。』


どうして?

私が苦手なこと、知ってるはずなのに。


『それはそうだと思いますが……わからないですわ。ごめんなさい。』


なんでわからないの?

不安になったこと、ないの?


あなたは、私でしょ?


『……きっと、疲れているのよ。最近、暑いから。』


話を……そらさないで。

どうして、水瀬は私を置いて、いなくなったの?


『ゆっくり休みましょう。そして、また明日、楽しいお話をしましょうね。』


ねえ、聞いてる?


——りりは、わからないの...いや。


『今は、あんまり考えない方がいいと思いますわ。』


……やだ。


『可愛いりり。今日はもう寝ましょう?明日はきっといい日になります。』


お願い。

絶対って……言って。



『……』


ねえ。言ってよ。

いつもは、すぐ言うくせに。


わかってるよ。

私、知ってる。


クラスの人も、水瀬も、周りの人も、全員……

そして、あなたたちも、私のこと——


『りり。そんなこと、ありません』


……欲しいのは、それじゃない。


それ以上は、いくら待っても何も聞こえなかった。

きっと、私に愛想を尽かしてどこかに行っちゃったんだ。


私が意地を張ったから。

なんにもうまくできないから。


中学生になってから、勘違いしていたのかもしれない。

あの子が話しかけてくれたから。

ずっと、一緒にいてくれたから。

約束、してくれたから。


私一人では、なんにもできない。

14話も明日19時に投稿されます。

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