11.オモイグサ
幕間です。
りりのことを教えてくれと、この男は言いました。あなたは、りりのことをどこまで知ってるのですか?私の存在さえ……認知していないのに。
『意地悪です!その言い方は、いじわるだと思います!』
……そうね。少しだけ、意地悪だったかもしれないわ。でも、知り合ってまだ間もないことは事実だわ。興味本位でそう言っているだけかもしれませんわ。どこから、何を話すべきか……私にはまだ判断できません。
『エリート君、お水さん持ってくれた!りりだけじゃ、できなかった!』
確かに。あんなに重たいものを持ってくれるのは、たいした男ですわ。その思いも、お水さんくらい重ければ、私も安心できるのですが。
『うまいです!おもい、だけに!』
……あなたは黙っていなさい。私は、真剣に悩んでいます。こんなことになったのも、発端はあなたにあること、忘れてないでしょうね?あなたがエリート君、エリート君と、提案ばかりするから。りりが向かってしまうようになってしまったのよ?
……分かっているわ。
一番最初は、ただ資料が気になっただけ。そこにたまたま、あの男がいた。ただそれだけです。それは、わかっています。でも、2回目以降は、どうだったかしら?図書館を除けば、全てあなた発信です。
『ざわざわさん!だーめっ!』
あらあら。ごめんなさい。
私としたことが、つい頭に血が上ってしまいましたわ。私が気にしているのは、あの男の覚悟です。興味本位で教えてほしいと言ったのなら、反対します。話すべきではありません。
ですが、仮に本気でりりのことを知りたいと。理解したいというのなら、一考の余地は……あるかもしれません。
しかし、忘れてはいけませんわ。
あの男が、あの時——
そう、食堂の件です。他にもありますわ。図書館でも、そして、この部屋でも。
一歩間違えれば、どうなっていたことか。考えるだけで恐ろしいですわ。そして、あのころから、りりが少し不安定になったということも見逃せません。
壊れかけの橋をあの男は運良く渡っているだけです。
なぜあなたは、図書館で、私たちの提案を無視したのかが、わかりません。何が見えたというのです。何が、そうさせたのですか?あの子とは違うと、わかっていたのですか?
結果的には、謝罪し、あなたに向き合うとも言っていました。事実、それ以降、あなたを気遣っているところも、見られるようになりました。
……あなたは、どう思いますか?
『私は……いいと思う!きっと、あなたが思うようには、ならないよ!』
あなたは、どうなの?
『賛成です!エリート君、安全だと思います!』
これで、賛成が二人ですわね。りり、あなたはどうしたいのかしら?
『エリート君の手、大きかった!腕も、カチカチさんだった!』
それはそれは。頼りがいがある男だこと。
『りりのこと、知りたいって言ってたよ?なんのことかなー?教えてくれると思ったんだけど』
……そうね。なんのことかしら。りり、エリート君のこと、どう思っているの?
『...…』
分かったわ。折れましょう。思いは、伝わりました。
りり、伝えられるかしら。そこに座っている男に。そう、エリート君にです。
私たちは、話すことに……反対しません。あなたに、聞いてほしい。と、伝えられますか?
「……」
迷いがあるのなら、言わなくてもいいと思いますわ。最後に決めるのは、あなたです。
私は、あなた。あなたは、私。
あなたが言ってくれたのよ?
「エリート君!話すんだって!」
言い方が、他人事になっていますわ。
「話すって!言ってる!」
……まあ、構いませんわ。
あなたは、りりに友人だと思っていると、言いました。りりを心配しているとも。
その覚悟が本当だと、証明してくださいね。
もし、裏切ることがあれば、私がりりに代わって……必ず——
こんなこと、いけませんわね。愛しいりりを怖がらせてはいけません。
では、心して聞きなさい。
全てはあの女との出会いから、始まりました。
星月は、ゆっくり目を開き、白瀬の目を真っすぐ見つめた。
「聞いて。りりの、こと」
「女の子……えと、そこから、始まったんだって」
次回から、第二章:中学生編となります。
※星月りり一人称視点に代わります。




