第六話 非常食?
漸く子狸とまともに会話が出来るようになった私たち……いや、私を除く私たち。
日本語変とか言ってる場合じゃない……
なんで私だけこんな離れた所に……
そう、何故か子狸は私が近くに居ると死んだふりをしてしまい……私だけみんなと10mぐらい離れた所に移動していた。
「もっと近くで見ていたいのに……なんで私だけ……
そもそも、この世界来てから怪我してるの私だけだよね……
なんで私ばっかり……」
そんな愚痴みたいな事をブツブツと呟いていた私。
「え? みゃーこはん? 何やって?! 全然聞こえへんで!」
そりゃ、これだけ離れていたら聞こえないって……
「独り言だから良いよ! もう!」
私は少し八つ当たり気味に返事してしまうが、そんな私を放っておいて私以外の4人は楽しそうに会話を始めた。
いや、実際どうかわからないけど。何せ私は輪の外にいるからね!
少なくとも私にはそう見えた。
「お嬢はん。で、ええんかな? 名前はなんて言うんや?」
「4つーぅ!」
タマの質問に胸を張って自信満々指を三本立てて答える子狸。
「なんでやねーーん!!!」
そんなタマのツッコミが周囲に響くと、子狸は近くにいたミケの後ろに隠れてしまう。
「タマさん! この子怖がってますよ!
ほら怖くないよ〜大丈夫ですからね〜」
ミケはタマにそういうと、子狸の方を向き、優しくあやす様な仕草をしている。
4つか3つか分からないけど、それだと、ミケ、タマより年上じゃん……
仲間外れな私は輪から離れてそんな事を考えていた。
「お嬢ちゃん、ごめんな? 4ヶ月か3カ月か知らんけど、名前はなんて言うんや?」
「?」
タマの質問に今度は無言で首を傾げてしまう子狸。
「じゃあ、お嬢さんは何処から来たの?」
「?」
ミケの質問にも無言で首を、今度は反対側に傾げてしまう子狸。
「お嬢ちゃん♪ お母さん何処かな?」
「?」
そしてステラの質問に今度は人差し指を顎に当てて考える仕草をする子狸。
それを聞いたミケは、ステラの方を向いて話しかけた。
「全然ダメですね……」
「言葉がわからないのかな?」
「なんでやねーん!!!」
そんな、ミケとステラが会話をしている最中にタマが突然ツッコミを入れる。
突然響いたタマのツッコミにミケとステラは驚いて、二人の視線がタマに集中した。
「タマちゃん? いきなりどうしたの?」
「タマさん? いきなり何ですか?」
「いや! 今のはウチや……ない……?」
そんな二人の疑問を、慌てて否定しかけたタマだったが……
タマの目には映ってしまった。
そう……ケラケラと笑う子狸の姿が…………
それを見たタマの目つきがいつもと違う真剣なものへと変わる。
「ほー。よし、わかったで……」
「タマさん? 何がわかったんですか?」
「この狸はここに置いてくで!」
「えっ?! そんな事したら、この子が!!」
そのミケの言葉にニヤリと悪い笑みを浮かべるタマ。
「ええんや、ええんや!
こんな聞き分けのない狸は、ウチにはいらんからな!
この森にでも置いていった方がええわ!
それに、この森は夜になるとお化けとか出てくる噂やからなぁ……
子供が一人でおったら……
お化けに何されるんやろうなぁ……?
あつーい、鍋に放り込まれて……
狸鍋にでもされるんちゃうかなぁ……?
な! みゃーこはん!」
突然、タマから話を振られた少し遠くにいる私。
なんでいきなり私に振ってくるかな……
まあ、タマが何も考えなくこんな事言い出すとは思えないし……
そう考えた私は、タマの話に乗ることにした。
「そうだね! 狸鍋、私も食べたいな!!
子狸とか柔らそうだ「うぇぇーーーん!! いや! 食べられるのいやですーーぅ!!」
私が話している最中に泣き始めてしまった子狸……
「タマさん?! みゃーこ様?! なんでそんな事を……」
泣き出してしまった子狸を見たミケは、私とタマに非難の声を上げた。
しかし、タマはそれを手で静止し、泣いている子狸に近付いて、今度は優しく話しかけた。
「置いて行かれるんいやか?」
「うぇぇーーん!! いやですーーーぅ!!」
「もうイタズラせんか?」
「しないですーーぅ!!」
「嘘付いたら……みゃーこはんが………!!」
そう言って、タマは私の方に視線を向けた。
「うぇーーん!!」
そして、私を見て大声で泣き出す子狸……
あれ? これ、タマ的には成功だけど……
私的には失敗してない……?
その後、子狸が泣き止むまでに10分を要した。
そして10分後……
私は、子狸の近くに……そう、みんなの輪に入る事を許された。
「お嬢ちゃんの、名前は、なんて、言うのかな?」
私は、怖がらせない様に、そう子狸に出来るだけ優しく、ゆっくりと話しかけた。
「はい……カヤ……ですぅ……」
子狸改め、カヤは、私と目を合わせずに下を向いたままそう答えてくれる。
「お父さんかお母さんは?」
「分からない……ですぅ……」
「食べたりしないから……怖がらなくていいんだよ……?」
「は……い……」
私の質問に答えてくれはするが、カヤは終始下を向いたままで、明らかに私を怖がっているのが見て取れた。
それを見た私は小さくため息をつくとタマに話しかける。
「タマ……流石にこれは酷くないかな……」
「みゃーこはんが、あそこまで乗るとは思わんかってん……」
私の言葉に少し申し訳なさそうにしながら、そう言うタマ。
悪ノリしすぎた……のかな……
仕方ない……のかな……?
まあ、タマのお陰で事態が収束したし……
タマに文句言っても仕方ないか……
あまり考えても悲しくなるので、私はそう思う事にした。
「しかし……タマは子供の扱いが上手いね」
「そら、ウチはやんちゃな妹が3人もおるからな。慣れもするで」
「なら、あとは任せるよ……
子供にずっと怖がられるとか、精神が耐えれそうにない……」
私はそう言うと、カヤの相手をタマにお願いして、カヤから少し離れた。
「お嬢はん、お家はどこや?」
「はい! あっちですーぅ!」
背筋をピンッと貼りながらそう言って、私達の進む方向を指差すカヤ。
明らかに私の時と態度が違うんですが……でも、タマはタマで、私と違う意味で怖がられてそうだけど……
「ステラはん、カヤは迷子みたいやし、連れて行ってええか?」
「みゃーこお姉さんがいいならいいよ♪」
その言葉を聞いたカヤは、絶望した表情をして……下を向いてカタカタ震えている。
「良いに決まってるから!! 置いて行くわけないから!! だから絶望しないで!!」
私がそう叫ぶ様に言うと、ホッと安心した表情を見せるカヤ……
よし! このまま行けば、私も怖がられなく……
「みゃーこお姉さんの非常食だしね♪」
私の思考止めるタイミングでステラがそんな余計な事を言い出した?!
それを聞いたカヤは再度、絶望した表情をしてカタカタと震え始める……
「違うからね?! 食べたりしないからね?!」
必死にそう言った私だったが、カヤは……ミケの後ろに隠れてしまう……
あっ……これ、もうダメなやつだ……
カヤの態度を見て、そう悟った私にタマが私に近づいてきて、慰めて……
「みゃーこはん。もう諦めて、先に進むで」
はくれずに、諦めろ宣言をされた私。
あぁ……私の子狸と戯れる夢が……希望が……
そんな事を考えながら、私は空を見上げる。
青く晴れ渡った空……
そんな中を進む1つの雲……
あの雲はどこに向かっているのだろうか……
太陽はとても眩しく……輝いて……
今の……淀んだ私には……
とても……眩しい……
「みゃーこ様、またあっちに行っちゃいましたね?」
「あの癖なんとかして欲しいんやけど……」
「そういえば、カヤちゃん? みゃーこお姉さんそんなに怖い?」
「あの人を化かすの楽しいですーぅ!」
次回更新も一週間以内の予定です。




