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ねこの国の勇者様  作者: かなぎ
三章
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第五話 ねこの国連続殺○事件


 私の足に抱きついている、茶色の小さくて丸っこい物。

 よく見ると毛がふさふさしていて、撫でたら気持ち良さそうな……ってそうじゃない!


「えっ?! 誰?!」


 知らない何かに抱きつかれた私は、剣を掲げたまま、思わずそんな声を上げてしまうが、そんな私の声には誰も反応せず、みんな必死に抱きついたままだった。


「ちょっと! みんな聞こえてる?!」


 そんな私の再度の呼びかけも……虚しく、その場に響くだけだった。


 それだけならまだ良かったのだが、ステラの抱きしめる力が徐々に強くなり……私の体がミシミシと悲鳴の様な物を上げ始め……


「痛い! 本当に痛い!! やめて!!!!」


 突然の思わぬ痛みに、私はそう叫び声を上げて、思わず掲げていた剣を地面に放り投げた。


 剣が地面いカランと言う音と共に落ちた瞬間……ステラの力が弱まるのを感じた。

 そして、ステラは不思議そうな顔で私を見上げたまま……ジッと私の目を見つめてくる。

 少しの間見つめ合う私とステラ。


「…………あれ? みゃーこお姉さん、どうして私に抱きついてるの? そんなに私のこと好きなんだ♪」


 誰がどう見てもステラが抱きついている状況で、そんな相変わらずな事を平気で言ってくるステラ。


「いや……私が抱きついてるわけじゃないんだけど……」


 そう私が言ったからかわからないが、私に抱きついていたミケ、タマ、ステラは私から離れてくれた。


 ステラは何があったか理解できない様で小首を傾げ、タマは抱きついていた事実が恥ずかしいのか、真っ白な顔を赤くしながら俯き、そしてミケは……


「待って下さいって言ったのに! それなのにみゃーこ様は!」


 そうプンプンと効果音が出てそうな感じで私に怒りを向けていた。


「ご、ごめん……面白いそうだったからつい……」


 そんな言い訳にもなっていない様な謝罪。

 当然の事ながらミケの怒りは治らなかった。


「ついじゃないですよ! 勇者のみゃーこ様が使ったら、誘引する効果が強すぎて、ああなるに決まってるじゃないですか!」


 ミケがいつもより怒ってる?!

 いつもなら「まったくもー」っで許してくれそうなのに?!


 ミケの予想以上の怒りに困惑しながらもそんな若干失礼な事を考えていた私だったが……


(…………私が抱きついた時は優しく抱きしめて欲しいのに……)


 ミケがそうボソッと呟いた言葉が私にも聞こえてしまい……

 一気に気が抜けてしまう私。


 なんだ、拗ねてるだけ……か……

 それなら、放っておいてもいいかなぁ……

 それにしても、最近のミケはヤンデレが入っている気も……

 でも、両親の事もあるし……強くは言えないんだよねぇ……

 取り敢えず、機嫌を直してもらうには……


 プンプンと迫力があるのか、ないのか分からない感じで怒っているミケを見てそんな事を考えていた私。

 ミケに機嫌を直してもらう方法……

 そう、ミケの頭を優しく撫でてあげる。


 ミケも、私に撫でてもらって気をよくしたのか顔が緩んで……


「なあ、みゃーこはん?」


「…………え? なに?」


 自分の世界、いや今回は“ミケと私の世界”に入り込んでいた私達だったが、タマの声で現実世界に戻されてしまう。


「また二人の世界に入って…………

 なに? やないで。これは何や?」


 少し呆れた様な……少しムッとした様な……表情でタマはそう言いながら、私の足元を指差した。


「ん……?」


 タマにそう言われ、私は視線を下に向ける。

 すると、タマの指の先ーー私の足元には、さっきの謎の生物がコロンっと横たわっていた。


「あっ!! すっかり忘れてた!! この謎の生物はなに?!」


 そう叫ぶ様に言いながら、横たわっているモフモフした謎の生物を凝視する私。


「忘れてたって、何やねん……」


 そんなタマのツッコミが聞こえてきたが、今はそれどころでは無い。


 茶色っぽいモフっとした毛に、首回りに白い毛……そして特徴的な目の周りにから下側が黒い毛に覆われている……

 あっ、もしかして……この動物……


「狸……?」


 そう、その動物はTVとかで見た事がある、狸にそっくりな生き物……しかもまだ幼い子狸の様だった。


 こんな近くで狸……しかも子狸を見たの初めてだ!

 動物園とかにも殆ど居ないもんなぁ……


 生の子狸を近くで見れた感動からか、そんな、いつも通り脱線した事を考えてしまう私。


「狸? みゃーこお姉さんの非常食?」


 そんな私に対してサラッと怖い事言い出すステラ。私はステラの方を向いて慌てて否定の音葉を述べる。


「非常食?! 狸は食べないよ?!」


「でも……死んじゃってますよ?」


 ミケがそう言いながら、その子狸(仮)を指差して言った。


「いや、何もしてないのに、そんなわけないよ?」


 ミケの言葉を否定しながら、私は狸の方に視線戻し、狸の方をジッと子狸の様子をみた。

 しかし、その狸は右半身を地面につけて横たわったまま、ピクリとも動かない……?

 っていうか……呼吸すらしてない?!


「あーあ。みゃーこはんがこーろしたー」


 そんな光景ーー私が少し焦った表情をしたのを横で見ていたタマが、そんな事を言い出した。


「いやいや! 私は何もしてないよ?!」


 私は慌ててタマの言葉を否定したが今度はミケはタマの言葉に乗ってきた。


「みゃーこ様は、私たちを抱きつく様に仕向けて……その間に犯行を……」


「してないって!! さっきのは好奇心だって!!」


 そして今度はステラまで……


「つまり……みゃーこお姉さんは……好奇心で犯行に及んだと……」


「そっちと違うからね?! 犯行に及んだ記憶なんてないからね?!」


「記憶にない……と……

 みゃーこはん、時々夜にフラフラしてることがあったけど……まさか今回も……」


 そのタマの言葉を聞いたミケは何かを思い出したかの様にハッとなり、口に手を当ててプルプルと震えたかと思うと、ボソボソと話し始めた。


「そ、そういえば……みゃーこ様……時々夜のにあった事を覚えてない気が……」


「違う! 私じゃ!私じゃ……な……い……?」


 反射的に否定しかけたが……ミケの言葉に、段々自信が無くなってきた私……


 そう言われると時々、記憶がない事が有った気が……

 それにタマの言う夜にフラフラって……夜はぐっすり寝ててフラフラした記憶なんて全くないんだけど……

 あれ…………? 記憶にない……?

 本当に……ない……の……?


 そう言えば……昔から…………


 私は……夜に…………私は…………


「みゃーこはん……ミケの為にも狸殺しの罪を認めたらどうや……?」


 何かを思い出しかけていた私だったが、そんな私の思考を中断させるかの様に……

 真剣な表情をしたタマからそんな言葉をかけられた。


「みゃーこ様……」


「みゃーこお姉さん……」


「本当ですーぅ!狸を殺すなんて酷いですーぅ!!」


 みんなから悲しみの篭った声や、怒りに満ちた声をかけられた私。


 兎に角、記憶がない内に私は罪を犯してしまった様だ……

 これ以上否定して……ミケ、タマ、ステラ、狸……そう、みんなを悲しませる訳にはいかな…………ん?!


「最後おかしいやん!!」


 私は思わず大きい声で自分にツッコミを入れてしまった。


 すると、ミケ、タマ、ステラ、子狸は一瞬ビクッとなり……ポテッっと音を立てて……子狸だけまた倒れた。


「「「「あ……」」」」


 その光景を見ていた4人は声を揃えてそう呟いた。


 もしかして……これは……


「みゃーこお姉さんがこーろしたー」


 タマがさっき言った事を今度はステラが私に言ってくる。


 真似するとか子供か!


 と言いたかったけどステラ言えるわけもない私。


「殺してないからね?! これ死んだふりだからね?!」


 私は、ステラ……いやみんなに訴える様にそう大きな声で主張した。


 そう、狸は驚くと狸寝入り語源となった、死んだふりをするんだった。漸く気がつけたよ……

 

「なんや……もう気付いてもうたんか……」


 そんな私に対して、タマはつまらなさそうな顔で石を蹴る真似をしてそんな事を言ってくる。


「って?! 気がついてたなら言ってよ?!」


「みゃーこはんがさっきウチの事ニヤニヤしてみた罰や!」

「さっき私の言葉無視して勇者の剣使ってましたし……」

「みゃーこお姉さん、面白かったよ♪」


「う…………」


 3人にそんな事を言われて、私は何も言えなくなってしまった。


 なんでこの3人はこんなに息がピッタリなの……

 それにステラは置いて置いても、タマもミケもさっきの事、根に持ってたんだね……

 それにしても、人を殺(たぬ)犯扱いするのはひどいけど……

 まあ、今回は私が悪いし……タマのデレも見れたしまあいいか……


 そう心の中で納得した私は、一度ため息をついてみんなに問いかけた。


「はぁ……まあいいや。で、この子どうしようか?」


「えっ? みゃーこお姉さん、お腹空いたの?」


 私の言葉にステラが驚いた様にそう言ってくる。


「食べないよ?!」


「じゃあ、起きるまで、待つしかあらへんやろ? まさか置いていくんか?」


「言う通りだね……待とうか……」


 タマの至極最もな答えに、私はそうとしか答えられなかった。


 そして、その子狸は私の顔を見るたび死んだふりを繰り返し……

 まともに会話が出来たのは5回程死んだふりをした後だった。


 そしてこの一連の騒動は、連続殺(たぬ)事件と呼ばれ、語り継がれるのであった。



次回更新は一週間以内予定です。

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