表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねこの国の勇者様  作者: かなぎ
三章
40/46

第四話 勇者の剣の効果


 神楽さんの家を出てから1時間ぐらい経った頃、私たちはステラを先頭に、タマ、ミケ、私の順番で森の中の獣道を歩いていた。

 前が危険なのは勿論だが、後ろからも危険が来た時のため、私が殿(しんがり)をつとめている。


 とは言っても、さっきから何にも出てこないけどねぇ……


 心の中でそんな事を考えながら、私は一番先頭にいるステラの方に目をやった。


 ステラがいるから出てくる方がおかしいかも? あの蟻型とかステラの仲間だろうし……


 そんなステラは途中で「歩くの飽きた!」と言って羽を使ってパタパタ……じゃない、ブーンといった感じで飛んでいる。


 そっちの方が疲れるんじゃ……いや、ステラは蜂?だし歩くより飛ぶ方が疲れない……?


 黙々と歩くのは飽きて来ていた私は、そんな無駄な事を考えたりしていたが、それも飽きてきたのでミケに話しかけた。


「ねえ、ミケ?」


「みゃーこ様、どうしたんですか?」


 私の問いかけに、チラッと私の方を向いて返事をするミケ。


「今更だけど、これ私が持ってても良いのかな?」


 私はそう言いながら、下げていた勇者(かつおぶし)の剣を突き出すようにして、ミケの顔の横に持っていった。


「にゃっ?! これ、何ですか? 良い匂いがしますね……」


 ミケはフンフンと鼻を使ってその剣の匂いを嗅いだかと思うと……大きな口を開けてその剣にかぶりつ……


「ストップ!! 勇者の剣だよこれ! 齧っちゃダメでしょ!!」


 慌てて、勇者の剣を引いてミケを止めた私。ミケは少し残念な顔をしながら、小首を傾げている。


「……勇者の……剣? あっ!!」


 ミケはそう呟いたかと思うと……一瞬ハッとした顔をする。


「もしかして……忘れてた……?」


「え、えっと……」


 私の追求を聞いて、ミケの目は泳いでいたが……追求しても仕方ないし、まあいいか。


「で、持ってても良いの?」

「勇者の剣を勇者のみゃーこ様以外が持つ理由は有りませんが?」


 私が言った後、真顔でそう即答するミケ……


 “勇者と言う嘘”を意識して以降、初めて聞くミケからの“勇者”と言う言葉。その言葉に、私は少し罪悪感を感じているからだろうか、心が針で刺されたかの様にチクリと痛むのが分かった。


 ミケの中では私は紛れもなく私は勇者なんだ。この返事は私の中だけじゃなく、改めてミケに対して“嘘を突き通す”宣言に他ならない。

 私は一度目を瞑り、気合いを入れ直すと宣言する様に言葉を発し始めた。


「分かった。それなら私が「みゃーこはん! ミケはん!! 敵や!!」


 良いところだったのに……


 そんな事すら思ってしまうぐらい悪いタイミングで、タマの叫ぶ様な声があたりに響き渡る。

 

 私はその声に帯刀したままの剣の柄を握り周囲を見回すと、そこには……


「蟻……型?」


 そう、ちょっと久しぶりな感じすらする蟻型だった。


 その蟻型は私とミケが立ち止まった事で少し距離が開いていた私達とタマ、ステラの間に4匹……2匹はこちら側を向いて、こちらを見計らっている。


 え? なんで? ステラの味方が襲いかかってくるの……?


 そんな事を思いステラの方を見ると、少し面倒くさそうにしながらも、蟻型と戦う気満々なのか手を開いたり握ったりしている。


 よく分からないけど、ステラもやる気なら仕方ないかな……


 私はそう思い、私の前ーー私より蟻型に近い位置にいるミケの前に出ると、勇者の剣を構えながら、顔だけミケの方を向けてミケに言った。


「ここは私に任せ……」

 ガシャ! バキッ! グチャ!


 そう言いかけていた私だったが、突然蟻型の方から大きな、とても蟻型から発せられたとは思えない音が聞こえ、慌てて前を向いた。


「え……? あっ……」


 そこに立っていたのはステラと一匹の蟻型……そして、私でもスッポリ収まってしまいそうなぐらい大きい穴が3つ地面に開いていた。


 ステラの後ろ側にいるタマは呆然とした表情でステラを見ている。きっと私の後ろにいるミケも同じだろう。


 戦闘……というか虐殺? の瞬間は見ていないから断言は出来ないけど……あの穴はステラが開けたんだよね……


 そう考えながら私は、その元凶?のステラに視線を戻すとステラは赤い瞳のまま、私の事を見つめていた。


 その瞳に見つめられた私は少し恐怖心を感じていたが、ステラはそんな事を構うこともせず、私の顔を見つめたまま……瞳の色が元に戻り、満面の笑みになった。


「みゃーこお姉さん♪ もう飽きたから後よろしく♪」


 そういうと、ステラは蟻型に背を向け、ぽかーんとした表情のタマの方に戻っていった。


 呆気に取られる私達と残った一匹の蟻型……いや、蟻型はロボットだから呆気に取られる筈はないんだけど……そんな風に見えた。


 “ひゅーっ”と風が吹いて木の葉が舞った気がした……


 そんなステラの足音だけが響く静寂が訪れていたが、私はハッとなって意識を取り戻す。


 いけない! 戦闘中だった! 一応……


 そう考えながら、私は剣を両手で握り直して、残った蟻型を睨みつける。

 蟻型もやる気の様でこちらを向いて身構えていた。


 流石の私でも、蟻型一体なら余裕かな……この剣の試し切りの感覚でチャチャっと終わらせ……


 そこまで考えて私は忘れていた事を思い出した。


 そういえば、この剣の特殊効果聞くの忘れてる……

 良くある剣士がやるみたいに斬撃が飛んだりしないよね……

 下手に飛ばしたら、タマとステラに当たる可能性が……


 そう考えた私は、蟻型の動きを見つめていた。

 私が動かないからか、さっきのステラの戦闘(ぎゃくさつ)を見たからか……

 蟻型は攻撃するタイミングを伺っているだけで、すぐに攻撃を仕掛ける雰囲気はなかった。


 よし……今なら……


 そして私は、体の向きをちょうど蟻型に対して90度角度を変え、誰も居ない森の方を向いて、剣を振り下ろした。


 バッシュ!!


 そんな音を立て、森の木々をなぎ倒す斬撃が私の振り下ろした剣から……


 出ることはなかった。


 私はホッと胸を撫で下ろす。と同時に少し残念に感じた。


 ちょっと、やって見たかったんだけどなぁ……飛ぶ斬撃……


 そんな私を不思議そうな顔で見ていたミケ、タマ、ステラだったが、蟻型は違った。私が見せた大きな隙に、蟻型は好機と見たのか、私に向けて突進を開始した。


「まあ、そう来るよね。私でもそうするし」


 何処と無く余裕のある事を呟きながら私は、自分の正面ーー蟻型とは違う方向に剣を構えると、蟻型を横目に見る。


 ドドドという音を立てて、私のすぐ側に迫っていた蟻型。

 大きく振り上げた両前脚を振り上げ、突進した勢いのまま、その両前脚を私に向けて振り下ろそうとしていた。


 私に当たると思われたその直前……私は右足で地面を蹴り、後ろに軽くジャンプをする。


 すると、空を切る蟻型の両前脚……


 私はそれを見届け……蟻型の真横から首のあたりにめがけて、剣を思いっきり振り下ろした。


「残念でした!」


 バキバキッ!っと音をたてて外れる蟻型の頭とへし折れる両前脚。


「おぉ……この剣、硬いだけあって竹刀より威力高い……」


 その光景に思わずそんな言葉が私から漏れてしまう。


「みゃーこ様! お疲れ様でした!」


 そんな私に一番近寄ってきたのはミケ。

 尻尾をピンッと立ててぴょんぴょん飛び跳ねそうな勢い……というか飛び跳ねている。


「あんなアッサリ蟻型を倒してまうなんて、みゃーこはん、結構強いんやな!」


 少し遅れてタマも近寄ってきて、嬉しそうにそんな感想を述べている。


 そう言えば、タマが私の戦闘をちゃんと見るの初めてだっけ?


 そんな事を考えながら、私の近くで嬉しそうにしている二人の頭を撫でる。


 うん。至福のひと時……


 「みゃーこお姉さんなら、やると思ってたよ♪」


 そんな幸福を感じていた私の元にさらに遅れてやって来たステラ。

 胸を張ってそう言ったかと思うと……

 私に頭を突き出してきた。


 えっと……撫でろって事かな……?

 手はミケとタマで塞がってるけど……

 怒らせると怖いし……仕方ないか……


 そう考えた私は、ミケとタマを撫でるのをやめ、ステラの頭を撫で始めた。


 残念そうにするミケと、嬉しそうなステラ。

 そして、少し残念そうにした……タマ。


 タマがデレた!!


 っと言わないで、心の中で叫んぶにとどめた私。

 そんなタマを見て少しニヤニヤしてしまっていたのだろうか、私の表情を見たタマは恥ずかしそうに、そっぽを向いてしまった。


 やっぱり……タマはツンデレの気があるね!


 そんな事を考えていた私を不思議そうなに見ていたミケが、さっきの戦闘付いて質問をしてきた。


「なんでみゃーこ様は、途中で変な方向に剣を振ったんですか?」


「いや……斬撃が飛ばないかと思って……」


「斬撃……?」


「いや、なんでもないよ……」


 そんな私の返答に小首を傾げるミケ。

 私の妄想だからね……聞かないで……とはいえないけど。なんか恥ずかしいし……


 そう思い、話をそらすことにした私。


「そういえば、この剣に特殊効果とかないの?」

「美味しい出汁が取れます!」


 私の質問にそう即答で返して来るミケ。


 知ってる。神楽さんにきいた。

 っていうか、勇者の剣をなんだと思っているのか……


「それはいいや……他は?」


「えっと…………あっ! 掲げると猫が抱きついてきます!」


 その返答を聞いた私は、一瞬ガクッっとなってしまった。


 なにその意味のわからない特殊効果……

 いや、猫好きにとっては最高の特殊効果なのかも……?

 もしかして、ここでやると……タマが抱きついてくる?



「ふーん、じゃあ……やってみよ!」


「えっ?! ちょっと待って……」


 ミケが言い終わる前に、私は勇者の剣を天高く掲げた。


「にゃーーーーーー!!!」

「にゃーーーーーー!!!」

「みゃーこお姉さん!!!」

「クゥーーーーーン!!!」


 剣を天に掲げたまま、皆に抱きつかれる私。

 なんでステラにまで効いたかわからないけど、4人抱きつかれて満更でもない私。


 え……? 四人…………?


 私に抱きついてきているのは……

 ミケ、タマ、ステラと……


 私の足には、もう一人?一匹?

 茶色の小さくて丸っこい物が抱きついてきていた……?



日付変わる前に投稿したかった……


次回投稿は一週間以内の予定です。

出来れば今日中にもう一話……


2017/03/11 脱字修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ