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ねこの国の勇者様  作者: かなぎ
三章
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第三話 ミケの地図


 準備を終えた私たちーーいや私だけかーーは、階段を上がって、神楽さんの家の前に出ていた。


「神楽さん、ありがとうございました!」

「神楽様、ありがとうございした」

「神楽はん、色々おおきに! ほなまたな!」

「神楽おじいちゃん♪ ありがとう♪」


 皆それぞれの言葉で別れを告げる。


 さっき、神楽さんも誘っては見たのだが……


「老体に無茶をさせるんではないのぉ。

 それに………………ワシが居ない方が旅も順調に進むじゃろうて」


 神楽さんはそんな事を言い、断られてしまったのだった。


 しかし、私にはその時の神楽さんのその表情が、何処か寂しげで、過去を思い出しているかの様に見えた。


 ーー恐怖し、そして忌み嫌い……

 ーー鼠であるワシを受け入れてくれる所はなかった。


 そんな、神楽さんの言葉が頭をよぎる。


 余程の事があったんだろうな……

 こっちの世界も、本質の部分は“あの世界”と変わらない……のかな…………


 その時の私は、暗く沈んだ顔をしていたんだと思う。その証拠に神楽さんが私の事を気遣ってくれた。


「桜お嬢さんが落ち込む事はない。

 桜お嬢さんがそこまで考えてくれるだけでワシは十分じゃよ」


 そう言いながら、私に笑顔を作ってくれる神楽さん。


 私が余計な事考えたせいで、神楽さんに気を使わせてしまった。

 落ち込んでても仕方ないよね……今は……


「ごめんなさい。また、帰ってきますからね!

 修行も途中ですし!」


 そう言いながら、謝罪の意味も込めて、私は神楽さんに笑顔で返した。


「修行に関しては心配しなくてもで良い。

 タマお嬢さんに色々教えたからのぉ」


 そう言って今度はニヤリとした笑みを見せる神楽さん。


「あ……そ、そうなんですね……ハハハ……」


 私からは乾いた笑いしか出てこなかった。


 あの時、卓袱台の所で本を見ながら話してたのは、修行の事だったのか……

 あの修行(スパルタ)から逃げれると思ってたの……

「みゃーこ様!!」


「ふぁい!!」


 突然、前から大きな声が聞こえ、私は思わず変な声を上げてしまう。


 そして意識が現実に帰ってきた私の目の前には、頰を膨らめせて怒った顔をしているミケの姿が……


「また、自分の世界に入ってたんですか?

 もう行きますよ!!」


 私が回想をしている間に出発の時間になっていた様だ。既に、タマとステラは丘上に向けて歩き始めている。


「ごめんごめん。じゃあ、神楽さん!

 行ってきます!」


 “また帰ってくる”


 その意味を込めて、私は笑顔でそう神楽さんに告げる。


「気をつけてのぉ」


 言葉は少ないが、私の言葉を理解してくれたのか、嬉しそうに微笑んでくれる神楽さん。


「じゃあ、ミケ! 行くよ!!」


 そう言うと、私はタマとステラの方に走り始める。


「えっ!? みゃーこ様を待ってたのに!! 待ってくださいよ!!」


 私の突然の行動に、そう言いながら慌てて私を追いかけてくるミケ。


 その声を後ろに聴きながら、私は思わず顔を綻ばせた。


 こんな事ですら私には楽しく思える。

 本質がどうであれ、この世界は“あの世界”とは違う“鮮やかな色の付いた世界”


 神楽さんも……いつか…………


 いつの間にか二人を追い越した私。

 こうして……私を先頭に、私たちの旅は始まった。


 これからどんな事が待っているのだろうか。

 楽しい事も、そして辛い事も有るだろうけど、それはきっと自分の糧になる。

 そして、家族(ミケとタマ)を守るためにも、私は前を見続ける。


 そう、北にはきっと色んな事が……



 北……には……


 ……北?



 綺麗に締まりかかっている途中、私にはある素朴な(・・・)、本当に素朴な(・・・)疑問が湧いてきて……

 その場で足を止めた。


「みゃーこはん? 急に止まってどないしたんや?」


 そんな、いきなり立ち止まった私を見て、タマが不思議そうに聞いてきた。


「えっと……」


「なんや……?」


 私の言いにくそうな雰囲気に、タマの表情が少し真剣なものに変わったのがわかった。


 真剣な表情をされると、余計に言い出しにくいけど……

 でも聞かないと始まらない……か。


 そう心の中で意を決した私は、思い切って皆に質問を投げかけた。


「北ってどっち?」


「「「え?」」」


 真剣な表情をしていた3人の顔が驚きの表情に変わり……

 次の瞬間には呆れた表情で私を見ていた。


 皆の視線が痛い……


「いや、だって……地図見た事ないし……」


「じゃあ、なんで先頭に歩いてるんや……」


「ハハハ……」


 タマの正論に、私は乾いた笑いしか出ない……


 仕方ないじゃん……

 この世界に来て10日ぐらい? しか経ってないのに……

 感覚的にはもっと立ってそうな気もするけど……

 色々あったからかなぁ……


 そんな思考また脱線しかかったのを察してかは知らないが、ミケが少し嬉しそうにしながら、私の前に歩いてきた。


「ん? ミケ? どうしたの?」


「みゃーこ様のために地図を用意しましたよ!」


 ミケがそんな事を言いながら、私に一枚の紙を手渡してくれる。


「おぉ!! さすが私のミケ!

 私の事をちゃんと考えてくれてるね!

 ありが……とぅ?」


 途中までミケに感謝を述べていた私だったが、その“地図らしき紙”を見てつい変な声をになってしまった。


 その地図は手書き。さっきの言い方からしてミケの手書きだろう。

 そこまでは問題ないのだが……


 まず、中央に猫っぽい生き物と私っぽい人が手をつないで書かれている。


 その上側には「木がいっぱいあるよ!」とさらにその上には「純白の玉!」の文字。


 中央左側には「私の家!」、右側には「水がいっぱい!」、そして下側には、「行ったことない!」とそれぞれ文字で書かれていた。


 うーん……これは……地図というより……

 子供の落書きか何かかな……


 地図を見ながらそんな若干失礼な事を考えていた私。


「どうですか? 私頑張って書いたんですよ!」


 ミケはそう言うと、胸を張って久々のドヤ顔を見せてくれた。


 久々のドヤ顔ミケも可愛いんだけど……

 どう伝えたものか……


 そう思い、困った私はタマの方に視線を向けたが……


「あそこの饅頭は最高やで!」

「そうなんだ♪ 今度食べにいこ♪」


 そんな感じでタマはステラは、ガールズトークに花を咲かしていた。


 ステラ! お前もか!!


 とは命の危険を冒してまで言えるはずも無く、いつもの様にサラッと見捨てられてしまった私。

 なんで私の嫁たちは私が困るのを悪い意味で察知するのが上手いのか……

 それにいつの間に、そんなに仲良くなったんだ……


 タマとステラを見ながら、そんな事を考えていたが、自分でなんとかしないといけないのは変わらない。


 私はそう考えながら、ミケの方に視線を戻した。


 仕方ない……聞きたい事はいっぱい有るけど……最低限の分かればいいや……


「あ、ありがとうね! 北はこっちでいいのかな?」


 私はそう言いながら地図っぽい物をミケに見せながら、地図の上側、”純白の玉“のあたりを指で指し示す。


「? 違いますよ? こっちです」


 ミケは少しキョトンとした顔をしながら、地図の左側、「私の家!」のあたりを指で刺した。


 地図の上が北じゃない……だと?!

 なんと斬新な地図……

 もしかしてミケって……


「方向……音痴…………」


 私は思わず、そんな事を小声で呟いてしまう……


「え? 何か言いました?」


「いや、なんでもないよ」


 私はそう言いながら、感謝の(ごまかす)意味も込めて、ミケの頭を撫でてあげる。

 ミケは一瞬ビクっとなって驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうに……そして気持ちよさそうにしながら目を瞑っている。


 しかし……ミケ一人でお使いをお願いするのはやめよう。

 その内、”犬の警察官(おまわりさん)“に保護されかねないよね……


 そんなよく分からない事を考えていた私にステラが待ちくたびれたのか、私に催促をしてくる。


「みゃーこお姉さん、そろそろ行こうよ♪」


「う、うん! そうだね!」


 私はそうステラに返事を返して、歩き始める。


 さっきのミケの地図だと、ミケの住んでた町の近くを通るのか……

 あの時はちらっと見ただけだけど、気になった事があるんだよね。

 なんとかして確認に行けないかな……


 そんな考えながら、ようやく真面目に北への旅が始まったのだった。




次回更新は一週間以内の予定です。



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