第二話 私の責任
事情を説明するため、ミケを起こして、タマと神楽さんを探していた私とミケ。
タマと神楽さんは、ご飯を食べてた卓袱台に座って何か本の様な物を見ながら話し合っていたのですぐに見つけることが出来た。
そして、二人に北に私も行く事を説明した。
結果的に修行を投げ出す事になるので、タマに怒られるんじゃないかとヒヤヒヤしたが……
「なんや、みゃーこはん。付いて行かんで済むつもりやったんか? 逆にそっちの方が驚くわ」
そんな事を言ったタマは、既に出かける準備は終わっている様だ。
そして、神楽さんも……
「今更、何を言ってるのかのぉ。
桜お嬢さんも連れて行かれるものとばかり、思っておったんじゃが……?」
どうやら、あの発言を聞いて“自分に関係ない”と思っていたのは私だけだった様だ。
いや、すやすや寝てたミケもか……
そんな事を考えていた私だったが、隣に居るミケはそれを見透かした様に……
「さっきから、みゃーこ様は行くつもりじゃ無かった様に聞こえるんですが……?」
ミケによる突然の“お前だけだよ”発言。
まさかのミケからの発言に驚いた私は、ミケの方を向いた。
「えっ?! ミケも寝てたよね?!
準備してないよね?!
ミケはお留守番?!」
「何を言ってるんですか!!
私は常日頃から何時でも何処でも、みゃーこ様に付いて行けるように準備をしてるんですよ!!
ほら、あそこに!!」
少し怒った表情でそう言ったミケが指差した先には、ミケ愛用の唐草模様の風呂敷が物を包んだ状態で置かれていた。
本当だ……何が入っているかは分からないけど、綺麗に準備してある……
ミケは最近ダメ子ちゃんと化していたけど、基本的に(私の絡む事以外は)真面目なのは変わらない様だ。
少ししょんぼりとした顔をした私。
だが、ミケの怒りはまだ治っていなかった。
「それにですね!! みゃーこ様とステラ様は番いですよね?!
それなのにお嫁さんであるステラさんを一人で旅に出すって……みゃーこ様は何を考えて居るんですか!!
みゃーこ様は番いとしての自覚があるんですか?!
あ!! そうやって私も一人置いていくつもりだったんですか?!
ずっと一緒に居るって言ったのに! 言ったのに!!
うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」
なんだかよく分からない内に、ミケが思考の飛躍をさせて泣き出してしまう。
ずっと番いになる事を夢見て来た、恋に恋する乙女なミケは、番いに対してかなり理想が高い……
「あーあ、泣かしてもうたー」
そんな前にも聞いた事あるような事を言い出したタマ。
「タマはちょっと黙「どうしたの?」
タマへの抗議の声は、私の後ろからの声に遮られてしまう。そして、その場にいたみんなの視線が私の後ろ、声のする方に集中した。
「あ……ステラ……」
そこに居たのはステラだった。
用意もせずに、大騒ぎを起こしていたので少し焦った私。
しかし、ステラは少女モードのまま、不思議な顔をしてこちらを見ている。
よかった……
まだ怒ってはいないみたい……
私はそう感じ、ほっと胸を撫で下ろて安堵の表情を浮かべた。
「ステラ様! 聞いてくださいよ!!
みゃーこ様が私の事を置いて行こうとするんですよ!!
うぇぇぇぇぇぇん!!」
しかし、ミケはステラの存在に気が付くと
ステラに駆け寄り、目の前で泣き始めてしまった。
あれはいけない!!
ステラが怒っちゃう!!
そう考えて、私はミケに駆け寄ろうとした。
「よしよし♪ みゃーこお姉さんは酷いね〜
ミケちゃんも連れて行ってあげるよ〜♪」
そう言いながら、ミケの頭を優しく撫でて慰め始めるステラ。
「うぅ……ステラ様……ありがとうございます……」
ミケもステラに慰められて、泣き止んでしまった。
いや、泣き止む事は悪い事ではないけど……
私はその光景に呆気にとられてポカーンと見つめる事しか出来なかった。
あれ……? この二人、いつの間にこんなに仲良くなったんだろう……
ステラ的には、ミケも私と同じく”お気に入り“とか言ってたから……かな?
そんな事を考えていた私だったが、ミケの頭を撫でていたステラは撫でるのを辞めて、私の方に視線を向けてくる。
その向けられた視線ーーステラの目は、怒った時の様に……赤く真紅に染まっていた。
「私のお気に入りのミケちゃんを泣かせちゃうなんて、みゃーこお姉さんには少しお仕置きが必要かな?」
ステラはそういうと、私の方に向けて足を進め始める……
不思議と殺気は感じなかった。
でも、私は赤く染まった……吸い込まれてしまいそうな目で見つめられ、体を動かすことが出来なくなっていた。
「みゃーこお姉さん♪」
「ふぁ、ふぁいっ!!」
私が固まっているうちに、私の目の前まで来ていたステラ。
そんなステラに急に声をかけられ、私は背筋をピンッと張りながら変な声で返事をしてしまう。
「しゃがんでくれる?」
「えっ……? は、はい……」
ステラに逆らう事など出来るはずもなく、私はステラに言われたまま、以前と同じ様に、跪く形を取る。
そんな私を見たステラは、幼い顏でにっこりとした笑みを浮かべると、親指と中指で輪っかを作り、それを私のおデコの前に突き出した。
「じゃあ、行くよ♪」
「えっ……?」
ピンッ! ガスッッッッ!!
「アガッ…………?!!!」
バタンッ!!!
突然、ミシミシと言う音と主に、おデコに強い激痛を感じた私。
仰け反った状態で後ろに背中倒れ込んでしまう。
「みゃーこ様!!!」
「みゃーこはん!!」
地面に仰向けの状態で天井を見上げていた私に、ミケとタマが慌てて私に駆け寄ってくる。
な……なにが……起こって……
遠退く意識の中、私は右手で自分のおデコをさする様に触った。
「イツッ」
しかし、触れただけでおデコからは激痛が走り、思わず手を離してしまう。
あぁ……そうか……
私は……デコピン……されたのか……
そんな事を考えていた私だったが、周囲には既に無数の水色の光の玉が浮かんでいるのが見えた。
どうやら、ミケが精霊術を使おうとしている様だ。
美しい光景だったが、痛みで朦朧とし始めているのか、私の視界は、だんだんと目の前が暗く闇に包まれて行くのがわかった。
「極精霊術 水式 天照の水癒!!!」
その掛け声と共に、私に水色の光が集まって来る。
同時に、私のおデコの痛みは消え、意識がハッキリとしていくのがわかった。
「ミケ、ありがとう」
そう言いながら私は、立ち上がる。
そして、ミケの頭を撫でながら、ステラの方に体を向けた。
「みゃーこお姉さん♪ 反省した?
もうミケちゃんをいじめたらダメだからね♪」
そんな事を言うステラの目はもう赤くはなく、いつもの少女モード戻っていた。
「みゃーこ様に何をす……えっ?」
ステラに文句を言いかけたミケだったが、その言葉を制したのは、ミケの顔の前に出された手……そう私の手だった。
ミケが暴走したとはいえ、さっきのは私が悪いし……
それにミケを危険に晒すわけにはいかない。
命を狙われるのは……私だけでいい。
「ミケ、大丈夫だよ。さっきはごめんね。
それに、ステラも……ごめんね」
そう、ミケとステラに告げる。
「みゃーこ様……」
「分かってくれたら良いよ♪ じゃあ、私はあっちで待ってるからね♪」
そう言うと、ステラは踵を返し、元居た家の出口の方に戻っていった。
そして、私は何も言わずにステラを見送った。
その背中から感じる恐怖とは別に、ある疑問の様なものが浮かんで来ていた。
さっきのステラの行動って、ミケを思ってやった事だよね……
結果的に危なかったとは言え、ステラ的にはかなり手加減してくれていたし……
もしかしたら……もしかしたら……ステラって……
根は悪い子ではないんじゃないかな……
もし……ステラとも分かり合えれば……
「みゃーこ様……さっきはごめんなさい……私……私……」
そんな淡い期待を、胸の中で考えて居た私の思考を止めたのは、ミケだった。
ミケは、不本意とはいえ私に危害を加えてしまったからか、申し訳なさそうに俯いてしまっていた。
そんなミケを見て、私の頰が緩むのが分かった。
全く……この娘はトラブルばっかり起こして……
そんな事を考えながら、私は優しくミケを抱きしめる。ミケが少し驚いたのかピクッとなったのが分かった。
「私の方こそ、ごめんね。
さっきのは私が悪かったから……
ミケは気にしないでいいよ。
だから、ずっと元気なミケで居てね」
「みゃーこ様……ごめんなさい……ごめんなさい……ううぅっ……」
私の言葉を聞いたミケは、そう言うと顔を私の体に押し付ける様にして、泣き始めてしまった。
さっきのデコピンで改めてステラとの……
いや、私の命を狙う敵との力量差を改めて痛感した。
今の私に敵う相手では絶対にない。
無残に殺されるだけかも知れない。
でも、私の大切な家族は……
私が命に代えてでも、守らないと……
“勇者と言う嘘”をつく私には
その責任がある。
それに……それに……
もし可能なら……ステラも……
私はミケを抱きしめたまま、そんな事を考えて居た。
次回投稿は、一週間以内の予定です。
2018/03/04 誤字脱字修正
2018/03/05 誤字脱字修正と文章校正




